第12話 新しい生活

王都ニーニャ到着すると、龍達は、グランデ様に連れられ王宮に行く事になった。


「そうだ龍君、忘れない内に渡しとくよ!」


 グランデ様は、そう言うと一枚のギルドカードを取り出した。


「この、ギルドカードは、龍君のステータスがそのまま書かれているギルドカードだ」


「王宮入りするのだから、もうステータスは、偽造しなくて大丈夫だからな!」


「これから、依頼を受ける時は、そのギルドカードを包み隠さずに使いなさい」


 龍は、グランデ様に、お礼を言うと、カードを受け取った。


 その会話が、終わる頃には、丁度王宮の前に着いた。


 王宮は、王都の中心にあり、王宮の周りを、街が囲んでいる感じだ。


 王宮に入ると、その煌びやかな、内装に驚いた。


(流石、王宮だな)


 そんな事を思っていると、大きな扉の前で、グランデ様は止まると、龍以外は、この扉の部屋の中で待つ様に指示した。


「何か、あるのですか」


 龍の、質問に、グランデ様が答えた。


「龍君、これから、国王様に会ってもらう!」


 突然の、その言葉に、度肝を抜かれたが、冷静に考えると、王宮入りするだから、当たり前かと思った。


「龍君、くれぐれも失礼のない様に頼むぞ」


 グランデ様に、そう釘を刺されると、一際ゴージャスな扉の前で、足を止めた。


「そうだ、国王様の前で、あの挨拶は辞めてくれよ!」


 そう龍に、更に釘を刺すと、その扉を静かに開けた。


「失礼いたします――王宮騎士団長グランデ、龍殿を連れて参りました。」


 扉の先には、赤いカーペットが、敷かれていて、それが国王様の前まで、続いた。


 ゆっくりと、そのカーペットの上を歩き、国王様の前でグランデ様が跪くと、龍もそれに合わせた。


「ご苦労だったな、グランデ」


 国王様は、グランデ様に、そう言うと、話を続けた。


「初めてましてだな、龍君!」


 国王様は、思ってたよりもかなり若かった。


「私は、この国の国王、名をジルハートと申す」


 国王様の挨拶に、龍も言葉を返した。


「初めてまして、国王ジルハート様、今回王宮入りさせて頂きます、大和田 龍と申します!」


 しっかりとした挨拶に、グランデ様も安堵した。


「龍君、まずは、無理を言って王宮入りして貰うこと、深く感謝する」 


 そう言うと、なんと国王様は、頭を下げてのだった。


「頭を上げて下さい、国王様」


 龍は、慌ててそう言った。


 龍は、国王様と言うと、横暴で自己中心的なイメージがあったので、それとは違う対応に、良心感を持った。


 国王様には、パープルにいる時に、リファの通信魔法でグランデ様が、こちらの王宮入りの、条件を予め伝えていたので、話はスムーズに進んだ。


「話は、グランデから聞いている」


「こちらが、君の力を必要とする時以外は、好きにして大丈夫だ」


「無論、パーティーでの依頼も、受けて大丈夫だ」


「但し、その日の内に帰れない様な依頼の場合は、グランデに、了承を取ってからにしてくれ」


「後は、王都のギルド、ゴールドギルド会には、私から既に話をしているので近い内に顔を出して上げてくれ」


「最後に、理不尽な王宮入りを強制しながら、全ての条件を飲めなかった事、深く謝罪する」


 国王様は、再び頭を下げそうになった為、龍は、必死にそれを止めた。


 一通り、王宮入りの話が終わると、グランデ様は、道中の出来事に着いて報告した。


「そうか、エルフの村が変進物に潰されたのか……」


 国王様は少し考えると、グランデ様に、遺体は、研究班に渡して、他に変進物がいないかどうか、確村や町に確認する様指示をだした。


「ドラゴンと言い、変進物と言い、最近何がおかしいと思わないか」


 国王様のその意見に、グランデ様も同意する。


「グランデ、私は思うのだが、今回のドラゴン出現と変進物の連続出現は、人員的な仕業の気がする」


「恐らくは、何か知らの魔法によって進化物を変化させたりしていると思うんだ!」


 グランデ様は、この段階で話を読めたのか、国王様に確認をした。


「つまり、魔法を使える、魔族の中で怪しい者が居ないか、探せと言う事で間違い無いでしょうか」


 国王様は頷くと、次の話に移った。


「次に、ユニと言うエルフの子どもについてだが……」


 国王様がその話を始めた瞬間「お話したい事があります」と言い、グランデ様が国王様の話を止めた。


 グランデ様は、馬車で話した事を、国王様に伝えると、俺達が馬車で寝ている間に書いたであろう、推薦状を取り出し、国王様に渡した。


「なるほど、龍君が引き取りたいと……」


 国王様は、幾つかグランデ様に質問した。


「まず、龍君は、引き取り手の条件を満たしているのか」


「問題ございません」


「次に、もしも龍君が原因でユニと言う子どもに、何かあった場合、推薦状を出したグランデにも責任が来ると言う事は、理解しているのか」


「しております」


「では、ユニは、龍との養子縁組を了承しているのか」


「勿論です」


 質問が終わりと、国王様は、少し考え口を開いた。


「いいだろ、龍君とユニの養子縁組を認めよう!」


 その許しに、龍はひとまず安心した。


「最後に、1つだけ、聞かせてくれ」


「何故龍は、会ったばかりのユニを引き取りたいと思ったんだ」


 龍は、考える間も無く、その問いに答えた。


「無くした者の悲しみと、家族の温かさを、知っているからです」


 その言葉に、国王様は、「そうか」と呟くと、優しい笑顔を見せながら「優しいのだな」と言った。


「では、国王宣言でユニは、王宮保護無しで、龍との養子縁組を認める」


「ありがとうございます!」


 龍は、国王様に、お礼を言い頭を下げると、グランデ様と一緒に、部屋を出た。


「グランデ様もありがとうございました」


「俺1人では、恐らくユニは、引き取れなかったと思います」


 すると、グランデ様は、龍の頭をわしゃわしゃと撫で回して、笑顔で龍に、言った。


「頑張れよ、龍の行動次第では、俺の首が飛ぶからな!」


 励ましと、プレッシャーの入り混じった言葉に、龍は少しだけ、先行きが不安になった。


 皆んなの待つ部屋に入るなり、待ちくたびれたのか、リファが、文句を言った。


「遅〜い」 


「何してたんだよ!」


 文句を垂れるリファを宥めると、国王様に会っていたと説明した。


「なんだ、国王に会ってたのか」


 リファのその国王呼びに、グランデ様が注意をする


「こらリファ国王様だろ!」


 それに、リファも言い返す


「だって、私の方が年上だし〜」


 リファの屁理屈もここまで来ると感心する。


 それから、王宮入りの条件が交渉成立した事、ユニの養子縁組が上手くいった事を話した。


「良かった……」


 ニーニャは、その話を聞いて、そっと肩を撫で下ろした。


「ユニ、これから宜しくな!」


 ユニは、椅子から立ち上がると、龍に走りながら抱きついて「ありがとう、龍お兄ちゃん!」と満面の笑みでお礼を言うと、暫くそのままで居た。


 それから、グランデ様が、これから住む家に案内してくれる事になった。


 リファは、王宮魔族隊に、居た頃に住んでた、家にもう1度住む為、一緒には、住まないが場所の確認の為一緒に行く事になった。


 龍、ニーニャ、ユニの3人で住む家は、王宮から歩いて10分程のリッチのいいところだと、グランデ様は、言った。


 家は、王宮が用意してくれた物なので、家賃などは、掛からないと、教えてくれた。


 3人が住む、家の前に着くと、その見た目に驚愕した。


「なんだ、コレ……」


 それは、明らかに3人で住むには、広すぎる程大きな家で、庭にプールらしき物もあった。


 リファは、自分との扱いの違いに、文句を言った。


「おい、なんでこんなにも扱いが違うんだ!」


 グランデ様は、リファの顔を見るとニヤッと笑けた。


「リファ、お前が別の家が良いって言ったじゃないか」


 リファは、俺とニーニャに気を遣ってそう言ってくれたのだが、後悔してる様だった。


 グランデ様が、何故こんな豪華な家に住めるのか説明してくれた。


 その話によると


(無理を言って王宮入りしてくれた俺に、国王様がせめてもの配慮と言う事で、土地を王宮で買い取って、家を建ててくれたそうだ。 つまりは、新築一戸建てだ)


(これは、今度国王様にお礼言わないとな……)


そんな事を思いながら、家に入ると、更に仰天した。


「「「お帰りなさいませ、ご主人様」」」


 そこには、メイドさんに執事、更には、料理人までいたのだった。


 しかも、この人達は、王宮で雇っている一流の人達で、雇い料も王宮持ちらしい。


 ここまで良くされると、王都に来たのも、さほど悪くは無かったかなと少し思った。


「じゃあ、家も案内したし俺は帰るぞ、まだ仕事が残ってるからな!」


 そう言うと、グランデ様は、残りの仕事を終わらせに急いで王宮に帰っていった。


 とりあえず、リビングに向かい、ソファーに座ると1人1人自己紹介をする事になった。


「初めまして、龍様、ニーニャ様、ユニ様」


 (こう挨拶したのは、執事のハヤカワさん――人間族だ。王宮で執事長もしていた事もある、スーパーエリート執事だ)


「お会いできて光栄です!」


(この方は、メイドのメリッサさん――エルフ族。 

掃除や洗濯、家事全般をしてくるそうだ。 エルフ族だか年齢は、まだ20才で、ぴちぴちの若者だ)


「料理なら任せろ!」


(元気いっぱいなこの人は、ミラノさん――ビースト族。

王宮で15年働いている、ベテラン料理人だ。 得意料理は、全部だそうだ)


 一通り自己紹介が終わると、執事のハヤカワさんが各部屋に、案内してくれる事になった。


「ハヤカワさんは、いつから王宮に」


 その質問に、執事らしい丁寧な言葉で答えた。


「私が、王宮入りしたのは、23才の時でした」


「王宮で、執事の仕事を学び、40才の時に、執事長を任せられ、今年の60才の誕生日を持って、執事長を退任しました」


「国王様から、龍様の執事の、お話を頂きまして有り難くお受けさせて頂いた所存であります」


 流石は、スーパーエリート執事だ。


 喋り方の丁寧さなど、龍とは、比べられないものだった。


 3人の部屋は、階段を登った2階にあり、皆んな隣同士だが、部屋が広い為か、その距離は、かなりの長さだった。


 各部屋の、案内が終わり、リビングに戻るとミラノさんが作った夜ご飯が、テーブルに並んでいた。


「ユニ、こんなご飯見たことない!」


 ユニは、初めて見る豪華な料理に、興奮を抑えきれず「早く食べよう」と、いち速く、席についた。


 時間も時間なので、リファが「帰るね」と言うと、それをニーニャが引き止めた。


「リファ、やっぱり一緒に住まない」


 ニーニャは、リファの洋服の袖を掴みながら言った


「私は、いいよ」


 リファは、断ったがニーニャは、納得していない様だった。


「リファ、部屋も沢山余ってるんだし、一緒に住もうぜ!」


「それに、一緒に住んでた方が色々楽だろ!」


 リファは、少し考えるとにこやかな笑顔で「分かったよ」と同意した。


 リファも、一緒に住む事が決まると、メリッサさんは、直ぐに部屋の準備に向かい、料理人のミラノさんは、「腕が鳴るぜ」と厨房へと戻っていった。


 ご飯を食べようと、皆んな席に着くと王都到着と、これから始まる新しい生活を祝して、乾杯した。


 

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