第2話 最強の存在

ニーニャの家に、行く事になり2人並んで歩いている龍は、緊張から、喋れなかった。


 その、緊張を解すかのように、ニーニャが話かけた。


「龍君は、いまお幾つなのですか」


 龍は、ニーニャの言葉に、少しリラックスできた。


「俺は今、18才だぜ! 前世界での年齢だかな」


「ニーニャは、幾つなの」


「私は、16才人間族よ」


「人間族?」


 龍が、疑問系で返した。


「そうよ、人間族」


「その他にも、魔族やエルフ族、後ビースト族なんて言うのもいるよ」


 漫画やアニメでしか、聞いたことの無い世界観に、驚くと共に、ワクワク感で、いっぱいになった。


(ここで、補足だよ! 龍は、のそシャイな性格を治したくて、アニメや漫画や恋愛ゲームに、明け暮れてた隠れオタクでもあるんだよ!)


「凄いな、前の世界では、人間族しか居なかったから会ってみたいな」


 龍が、テンション高めに言った。


「じゃあ町に着いたら、私の友達紹介するね」


「ありがとう! 楽しみにしてるよ」


「話変わるけど、なんでニーニャちゃんは、あんな所に1人でいたの」


「私の家、宿屋だって言ったでしょ」


「宿屋に飾るための花を取りに来てたの」


 龍は、思わずニーニャを叱った。


「ダメだよ! そんな危険な事しちゃ」


「ドラゴンが飛んでる所に1人で行くなんて自殺行為だ」


 突然のお叱りにニーニャは、少ししょんぼりとした。


「ごめんなさい」


「でも、普段は、ドラゴンなんて居ないの」


「そもそもこの国でも、ドラゴンて珍しい生き物だからなんであんな所に居たのか……」


「そうなんだ」


「良く知らずに怒って悪かったな」


 その言葉に、ニーニャは、明るさを取り戻した。


「次行く時は、俺が着いてくよ」


「ドラゴン程度なら、倒せるから護衛役にな」


「ありがとう! 龍君」


「また、お花取りに行くときは、龍君に声掛けるね」


 そうこうしている内に、あっという間に町に着いた。


「着いたよ!」


 そこは、思っていたよりも賑やかで、綺麗な町並みだった。


「ここが、私の住んでる町――パープルだよ」


「素敵な町だね」 


「そうでしょ!」


 その笑顔に満ちた表情が、可愛すぎて龍は、どうにかなってしまいそうだった。


「とりあえず家に、案内するね」


 そう言うとニーニャは、龍を家に案内した。


「ここだよ!」


 家は、色とりどりの花で飾られていて、とてもメルヘンでそして、温かみを感じる雰囲気だった。


 家の前には看板が出ていた。


「「宿屋 ニーニャ」」


「恥ずかしいのですが、両親が、私の名前と同じ名前にしちゃったの」


 俯き、モジモジしながら、説明するニーニャは、可愛い過ぎて、この世の者とは、思えなかった。


「さぁ中へどうぞ」


 そう言って扉を開けると、中は、綺麗に整理整頓されており居心地の良さげな空間になっていた。


「ただいま」


 その声に奥から急いで誰かがでてきた。


「ニーニャ!!」


 その男性は、勢いよくニーニャに抱きつくと、安堵した表情で、落ち着きを取り戻した。


「お父様、どうしたのですか」


 ニーニャの言葉でその人がニーニャのお父さんだと理解した。


「どうしたのじゃ無いよ! 町の連中がさっきドラゴンを見たって言ってて、それが草原の方に飛んで行ったと聞いてお前の事が心配で心配でたまらなかったんだぞ」


「お父様……」


「ニーニャ、怪我は無いんだな!」


「大丈夫です――お父様」


 その会話に龍は、助けられて本当に良かったと心から思った。


「お父様この方、龍君が私を守って下さいましたの」


 ニーニャのお父さんは、それを聞くと、龍に向かってお礼を言った。


「龍君、ニーニャを守ってくれてありがとう」


「心から感謝するよ!」


 お父さんのその真剣な目に、ニーニャがどれだけ大切な娘なのか、直ぐにわかった。


「龍君は、とっても強いんですよ」


「空中に居たドラゴンを一撃で粉々にしてしまったのですから」


 それを、聞いたニーニャのお父さんは、目が点になった。


「ニーニャ何を、言っているんだ」


「ドラゴンがどんな生物かニーニャも知っているだろ」


「この世界で、最強の存在なんだぞ!」


「王宮騎士団の、戦士長ですらドラゴンなんて倒せないって言っているのにそれを一撃だと!」


「信じられないが、ニーニャが言うなら本当なんだろう」


「おっと、すまない立ち話もなんだから、座ってくれ」


 3人が椅子に、腰を掛ける。


「改めてお礼を、ニーニャを助けてくれてありがとう」


「俺は、ニーニャの父、マルネスだ――宜しく」


「龍です――大和田 龍と申します」


 今回は、ちゃんとした挨拶ができた。


「この宿は、妻と2人で始めた店なんだ」


「妻は、去年病気で亡くなってしまったが、ニーニャと2人でなんとか店を切り盛りしてるんだ」 


「妻が、花が好きで毎週、花を取りに草原の方まで行っていて、それを今はニーニャがやっているんだ」


「そうなんですね」


「とても綺麗だと思います」


「ありがとう」


「それで、話が戻るが龍君は、何故そんなに強いんだ」


 ニーニャにも話しているし、隠すのも面倒なので、異世界から来た事を喋った。


「異世界か……」


 マルネスは、意外にも、その話を直ぐに信じた。


「と言う事は、龍君は、この世界に来たばかりなんだな」


「そう言う事です」


 ニーニャが話を切り出す。


「ですのでお父様、龍君を宿に泊めてあげられないでしょうか」


「この世界の事もよくわかって無いようですし、それに恐らくお金も無いと思うのです」


 マルネスが、即答で返した。


「いいに、決まってるだろ」


「ニーニャの命の恩人だ――好きなだけ泊まっていくいい」


「マルネスさん、ニーニャちゃん、ありがとうございます」


「そうだ、ニーニャ明日、ギルドに案内してみては、どうだ」


「私も、そのつもりでした」


 隠れオタクの、龍には、直ぐにギルドがどんな場所か、理解できた。


「龍君、ギルドに登録して、冒険者になれば、報酬が貰えるので入ってみては、どうですか」


「それに、登録すればギルドカードが、発行されるので自分のステータスもわかるし、身分証代わりにもなるよ」


「そうだね、そうするよ!」


「でも、ギルド登録って無料でできるの」


 マルネスが言った。


「多少お金が掛かるが、心配しないでくれ、それくらいお礼代わりに出させて貰う」


「何から何まで申し訳ないです……」


「気にしないでくれ、龍君」


「じゃあ、明日ギルドに行くの決まりね」


「今日は、疲れたでしょ」


「お風呂入って、ご飯食べて、ゆっくり休んでね!」


「ありがとう! そうさせて貰うよ」


 お風呂に入り、ご飯を食べた後、ニーニャが部屋まで案内してくれた。


「龍君、今日は、本当にありがとう」


「あの時、龍君がいなかったらたぶん私死んでた」 


「だからね、龍君が何かあった時は、私が全力で助けるからその時は、言ってね」


「じゃあ、おやすみなさい」


「ああ、おやすみ」


 そう言いニーニャは、自分の部屋へ、戻った。


 お風呂上がりのニーニャのシャンプーの香りが龍には、とても心地よい香りでなんだか、落ち着いた。


 案内された部屋に入り、直ぐにベットに横になった。


(あれ、そう言えば、ニーニャちゃんと話すのあまり緊張しなくなってたなぁ――シャイな俺もこれで終わりかな)


 そんな事を考えてる内に、今日の疲れからか、直ぐに深い眠りに落ちた。


 夢の中で、神様こと、おっちゃんが出てきた。


「どうやら、上手く溶け込めたようじゃの」


「神界から見とったが、お主ちょっと気持ち悪いの」


「うるせぇジジイ、喧嘩売ってんのか!」


「冗談は、さておき」


「冗談キツイなおい!」


 どうやら、おっちゃんの前だと、龍は、ツッコミ癖があるようだ。


「とりあえず、生きとってよかたわい」


「ドラゴン出た時は、焦ったぞい」


「ああ、死ぬかと思ったよ」


「それにしても、おっちゃん――異世界転喚の時、異世界最強にしてくれって言ったけど強すぎんか」


「何、お主がそう言ったんだろ、何が不満なのじゃ」


「いや、不満は無いけど、なんで漫画やアニメの技出来るんだよ」


「だってお主、異世界で1番最強にしてくれって言ったじゃないか」


「つまり、全ての異世界だから、漫画やアニメの異世界も、もちろん含まれるから、その中の頂点なんじゃよ」


「だから、簡単に説明すると、何でもありなんじゃ」


「チートにも、程があるだろ……」


「あっ、そうだ異世界転喚した事、話しちゃったけど大丈夫かな」


「別に問題ない」


「お主の、新たな人生じゃ、好きにすると良い」


「でも、変な事は……」


「わかってるよ、始末書だろ!」


「わかってるなら良い」


「たまに、こうして夢に出て、近況を聞きに来るので宜しくの」


「おっちゃん、神界から見てるのになんで、近況報告するんだよ」


「馬鹿だな、お主」  


「ワシもそんな暇じゃ無いのじゃ」


「お主以外の、異世界転喚者も気にしなきゃ、いけないのじゃから」


「くたばれジジイ」


「何か、言ったかの」


「いや〜何も」


「あっと、大事な事言い忘れておった」


「ワシにどうしても用がある時は、ワシに逢いたいと、深く念じながら寝れば、会えるからな覚えておくとよい」


「なんかキモい……」


「なんか言ったかの」


「何も」


 そろそろ、この件にも飽きたので、おっちゃんに別れを告げ眠りから、目を覚ました。


 目を開けると、外は、まだ暗かったので、もう少し寝る事にした。


 明日の予定に備えて。

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