第12話 障壁①

間に合わせ、寄せ集めの義勇軍には統率も何もないが、一応それぞれに割り振られた仕事はしっかりとこなしていた。


隊列などなく、パーティごとに集まっている。


割り振られた荷馬車の護衛や、偵察などをこなしながらも時間があればミレイナ、師匠との模擬戦をして連携を高めることに費やした。


もちろん、師匠から与えられた魔鉱石を斬るという課題にも挑みながら。


そして、一つの街と二つの村を超えて、草原での野営の最中のことだ。


荷馬車で方陣を組んだ野営地から少し離れた、森の入り口。


遠目に焚火の明かりが確認できる。


それを意識の片隅で認識しながら、左腰から剣を抜いてゆるりと構える。


左手で持っている魔鉱石は何度も繰り返し刃をあてられたのに、細かい傷がついている程度だ。


これまで模擬戦闘では魔法を斬ってきた。その感覚が日々磨かれていくと、そう感じている。現に今日の模擬戦闘では五連続で魔法を斬ることができた上に、師匠に剣を抜かせるほどに肉薄した。


魔鉱石を真上へと無造作に放った。


それは頂点まで達すると落下を始める。


剣を構え、魔法を斬った時の感触を思い返す。


集中しているからか、魔鉱石の落下がやけにゆっくりと感じる。


魔鉱石、その中心部に位置する魔力の核。その場所を認識した瞬間にほとんど反射で剣を振るった。


石に刃が触れた瞬間、わずかに火花が散った。そして、刃はわずかな抵抗を押しのけ反対側へと抜けていく。


草原に石が落ちた。それは二つに切り裂かれていた。


振るったままの姿勢を解いて石を拾う。


「うしっ!」


思わず拳を握ってしまった。


魔法斬りを習得できた喜びをかみしめる。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る