第11話 反省会の後に

今日の模擬戦闘も終わった。前日に引き続き圧倒的な師匠に吹き飛ばされたり、転ばされたり、地面に埋められたり。


それでも成長はあった。ミレイナと息が合うようになってきているし、魔法を斬る技も二連続で成功した。


成功した瞬間に少しだけ気が緩んで三発目は見事に顔面にもらいはしたが、それでも確実に昨日までの自分とは違うと断言できる。


そうして夕食兼反省会が終わった帰り道、港を通るのだが、いつもよりも人が多く活気があった。


「交易船が来たようですね」


ミレイナが港に停泊する船を見て言う。


この港ではあまり見ることがない大きな船だ。


船体にはフォークと剣を交差したマークがある。この船を所有している商会のマークだろう。


船からはいくつもの木箱が運び出されている。


「この町が討伐軍の集合場所になったのはあの物資を待つためだとか」


「じゃあ、あの箱の中身は武器や薬ってことか」


「ええ、国内で生産できる量は限られていますし、薬が必要なのは前線以外にも街の治療院などもありますから」


船から降ろされた木箱は次々と待機してある馬車に積み込まれていった。


それを横目に港を突っ切り、途中の道でミレイナと別れる。


「いよいよ、明日だね。どうだい、初めての遠出は」


「この町には何度か来ているので特には……」


そうじゃない、と師匠が首を横に振る。


「僕らは、もうあの村には帰れないかもしれないんだよ。ここよりもずっと遠い土地で終わるかもしれない。君が戻るというのなら、今からでも引き返せる」


思わず師匠の顔をじっと見てしまった。


俺のわずかに前を歩いてるので表情は見えない。


引き返していいと、死ぬかもしれないと師匠がそんな風に言うことは今まで一度たりともなかった。


いつも飄々としていて、盗賊団を壊滅させた時も森の主と戦った時も、常に自分が勝つと絶対的な自信を持っていた。


だから、これは試しているんだ。俺が本当に戦いに行くのか。その覚悟があるのかを。


「嫌です、戻りたくありません。それに終わりにもしません。なんたって俺は最強の師匠の弟子なんですから。魔王が相手だって、師匠を倒せる奴はいません!師匠を倒せないやつにやられはしません!」


最強の師匠の弟子であるという誇りにかけて、師匠に並ぶまでは死ねない。


師匠はわずかに息を吐いてから、からかうように痛いところをついてきた。


「そうか。それだけ自信を持っているならいいか。それよりも僕の弟子なら当然、魔鉱石は斬れるんだよね?」


「も、もちろんです。今日完全に魔法を斬るコツをつかみましたから!」


魔法を斬れるようになった時点で石の斬り方は分かったがうまくいかないだけ。それは偏に俺の技術不足だ。


その技術を得るには何度もやってみるしかない。つまり斬れるまで斬りまくる。何度も何度も。


———明日、出発だが今夜は眠れないかもしれない。

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