小話 もしも〇〇ならシリーズ⑦

もしも、カイルが学校の生徒なら その3


「貴様は馬鹿なのか?」


 と、いう夢を見たというオレの話に、やはり大河の奴は冷たかった。

 自分がバカだっつーことはまぁ、多少は認めてやらなくもねェが、呆れた口調で言わなくてもいいだろ。


「もう一度言う。貴様は馬鹿なのだろう?」


 目の前には二冊の本。

 著者は、言わずもがな大河の母親だ。


「つーかテメェの母親にオレの話売ってんのはテメェだろーが」

「母上がご機嫌で執筆をしていれば父上も安心して仕事が出来るからな。美味しいネタを俺に持ってくるネタほいほいで馬鹿な貴様が悪い」


 やたらピンクピンクとした本。

 中身を見る気にもならねェ。

 誰が悲しくて自分の、しかも相手は男、のくんずほぐれつあんなことやこんなことまでいたしている本を読みたいものか。

 中身を開かず廃品回収に出してやりたい。


「やめておけ」


 何やら呪でもかけて何が何でも手元に残るように細工をしているに違いないと大河は言う。

 ちなみに、と大河は自分の部屋にカイルを入れて押し入れを開き、その奥を見せた。

 ずらっと並んでいる手つかずの本の数々。

 印刷技術がなく和綴じ本から現代の印刷技術の粋を集めた最新の本まで。

 大河の性格らしく彼の母親が本を出しだした時から順番にきっちりと並んでいる。


「これを見ろ。貴様はまだマシだぞ。赤の他人だからな」


 血の繋がった母親にピンク色の本のネタにされる。

 その上、感謝の気持ちだとそのドピンクな本を贈られる。

 息子としてどう反応をすればいいのか。

 確かにこれは嫌だ。


「……同情するぜ」


 これからも増えるであろうドピンク色の本。

 それを思うとカイルはげんなりとするしかなかった。

 開けてはならない本。

 カイルの予想通り、時折、カイルと大河の元には時折、大河の母親著の本が届けられ、それは長い……それはもう長い年月続いたのであった。




《もしも、カイルが学校の生徒なら 了》

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