小話 もしも〇〇ならシリーズ⑤

もしも、カイルが学校の生徒なら その1


「うぉぉおお! 遅刻した! クソっ大河の奴っ祭はちゃんと起こしてなんでオレは起こさなねーんだよ!」


 毎度おなじみ。

 オレはカイル・シュヴェリアだ。

 訳があってイギリスから日本の学校に転入してきた。

 さしあたっての今の問題は……遅刻しそうだということ。

 オレが世話になっている儀園荘には狐が人間に成りすましている親子と龍神という偉いらしい神様が同居している。

 その同居人の神様―――大河は、狐の息子―――祭だけを起こして先に学校に行きやがった。


「よし、ラストスパートっ」


 今ならギリギリ間に合うはずだ。

 門に滑り込む。

 よし、今日もギリギリ……


「アウトだ」


 そうオレに言ったのは……やはり大河だった。

 クソ。

 風紀委員だからってオレを目の仇に……つか何でオレばかりこーなるんだよ。


「門に入ったからまだだろ!?」

「カイル。ギリギリというのは、教室に入って着席してからのことを言う。だから貴様は遅刻だ」

「お前同居人だろ!? 少しは大目に見てくれよ」

「悪いが俺は、公私混同しない上に人間の面倒など見ない主義だ。今日で4回目。リーチがかかっているぞ」


 祭には甘々のクセに……。

 しかも何でこんなに楽しげに言うんだコイツは。


「何でそんなに楽しげに言うんだよ。お前は。オレが罰を受けて楽しいのか」


 と睨みながら言うと、大河は楽しそうに答えた。


「貴様が罰を受ける受けないは俺の知ったことではない」


 いやいや。

 これ絶対楽しんでるよな。

 オレが罰を受けている姿が楽しくて仕方ないって顔しているよな!?


「これくらい大目に見ろよ!」


 オレが何を叫んでも大河のヤローは何やら記録をつけている。

 クソ。

 内申に響くじゃねェか。

 オレが遅刻なら、風紀委員だからって門前に立って遅刻魔の記録をつけてるテメーだって遅刻扱いになったっておかしくねェだろ。

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