小話 もしも〇〇ならシリーズ③

もしも、カイルが学校の先生なら その3


 生徒たちも下校して、後に残ったのはオレ達先生だけ。

 しかし、オレの戦いはまだ続く……。


「カイルくーん。この書類、お願いね!」

「ふざけんな。これお前じゃねーと処理できねェ書類じゃねーか」

「もう! パパの言うことは何でも聞くの!」


 そして押し付けられる……。

 オレには明日の授業の準備や試験問題を作らなきゃなんねーのに、何でクソ狐のやるべき書類をやらされなきゃなんねーんだ。

 いつもいつも学校だろうが家だろうが人の邪魔しやがって迷惑かけている自覚あんのか。


「まぁまぁ、クソ狐校長もカイルも落ち着いて」

「……晴明」

「誰がクソ狐だって? 晴明。校長の私に逆らうなら今すぐ辞めてもらっていいんだよ?」

「嫌ですねぇ。私を辞めさせるなんて不可能です。私には理事長の綺羅々さんに古典担当の紫月さんがついてますからね」


 爽やかな(アイツの自称)笑顔の男は安倍晴明。

 歴史を担当する教師だ。


「私が何だ。下僕共」


 そう立ち上がったのはこの学校の理事長である綺羅々。

 男子生徒や男性教師だけでなく校長ですら下僕扱いをする。

 特技は……


「おぐっ」

「貴様も脅されたぐらいで引き受けるな。阿呆」


 ピンヒールを突き立て、グリグリと踏みつけることだ。

 こんな暴力的で女尊男卑な彼女が理事長であっていいのか……。


「それと。これは貴様がやるべき仕事だ。下っ端下僕なんぞにやらせていいものではない」


 オレを踏みつけたまま彼女は書類の山をクソ狐に突っ返す。

 正直、助かったとは思うが下っ端と言われている上に下僕と思われているのは癪に障る。


「誰が下っ端で下僕っ……あだだだだ! すんませんごめんなさいっヒールが刺さってる!!」


 情けないオレ……。

 どこへ行ってもオレの上司ってのは変人が多い。

 上司にも職場にも恵まれないオレって可哀想かもしれねェ。


「えー。でも私も忙しい……いたーい!! 綺羅々ちゃん痛い痛い! 踏んでるっこれ以上力込められたら靴と私の足に穴が開いちゃう!!」


 オレから足をどけたかと思うと、綺羅々はヒールを鳴らしてクソ狐の足をピンヒールで踏みつけている。


「大丈夫ですか? カイル」


 その間に、晴明がボロボロのオレの腕を掴んで引き上げる。


「あ、ちなみに報酬は大河の隠し撮り写真五枚一セットでいいですから」


 んなもんあるか!

 しかも教師が何生徒の隠し撮り写真欲しがってんだよ。

 やっぱこの学校にはロクな教師がいねー。

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