小話 大河の甘味な日常⑧
冬の季節。
このような寒い季節にはやはり甘味も温かいものが欲しくなる。
いつものように俺が甘味処に立ち寄ると、店主の代わりに若い男が出て来た。
弟子だ。
ついに代替わりと相成ったのだろうかと思っていると弟子と思われる男は俺を見るなり、個室へと案内した。
うむ、分かっているな……。
「主人は」
「主人は―――」
亡くなったのだろうか。
そう思っていると障子が開いた。
「いつもお越し頂きありがとうございます」
「店主か。しばらく顔を見ていなかったが……」
そう俺が言うと、ついに店主は口を開いた。
正式に弟子に店を譲ることになったという。
あれから時間をやりくりし様々なことを弟子には教え込み、今後は弟子が主に甘味を作り主人は動けなくなるその時までは横について支えていくことになったのだと。
「こちらを」
俺に差し出されたのは、花びら餅と、冬を表現した練り切りだ。
二種類ずつあるということは店主のものと弟子のものの食べ比べということであろうことは間違いがない。
「いただこう」
あまり言葉を費やすのは好きではない俺は、さっそく少しずつそれらの甘味を口に入れた。
―――なるほど。
いずれも食べて俺は思った。
店主、弟子共に不安そうな顔をしている。
感想を求めていることは十分に良く分かった。
そうして俺は、無言で全てを食べきってから静かに温かい茶を飲み干す。
さて、何と言うべきか。
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