第22話 魔王襲来

「さっきからなんなんだお前は。勝手に人の家に上がったうえに汚しやがって、」


 汚したって…それよりも言うことあるだろ

 いや、ここがイナクらしいと言えばそうなんだが、


「うるさいなぁさっきから」


 イナクが自分の家を汚されたことに憤っていることを不快に思ったのか少女はそう言い放つ


「私は今お兄ちゃんと話してるの、それにあなたこそ誰よ。勝手に話に割り込まないでくれる」


 確かに今のイナクから見たらこいつはただの殺人鬼にしか見えないだろう


「あぁ、イナクこいつは俺の妹なんだ。だから…」


 ーそんなはずは無い!


 俺が言葉を続けるよりも前にイナクが言葉を封じた


「シュウがお前なんかの兄妹なはずがない!」


「さっきから言ってるでしょ、今は私とお兄ちゃんが話してるの!そんなに私のことが気になるなら自分から名乗りなさい!」


「僕の名はクロノス・イナク!帝都魔法使いクロノス・シャルムを姉に持つ、この館の主でもある者だ!」


 イナクがそう堂々たる自己紹介をすると少女はへぇ、と興味なさげに返した


「そっか、じゃあ貴方もそこそこ楽しめそうだね!」


 何を思ったのか少女は言う

 その少ない言葉だけで目の前の少女が、ぼくの妹が何を言っているのかは分かる


「私の名は添田 琥珀。最近有名になりつつある魔王、添田 琥珀そえだ こはくよ!」


 魔王という言葉を聞いてイナクは1歩後ずさる。いや、僕の苗字と魔王の苗字が同じだったからかもしれない

 1歩、歩み出て魔王は実に楽しげに笑う

 その顔はもはや僕の知っている添田 琥珀ではなかった


「あなたは何秒耐えれるかな」


 ーすぐ壊れちゃったらやだよ。


 そんな言葉と共にイナクが消えた

 いや、蹴り飛ばされたと言った方が正確だった


 この時館の入口にある何の変哲もない時間を示すだけの時計はだけはゆっくりと正確に時を刻んでいた


ーこのとき時計は10:48を指していたー


 飛ばされる瞬間受身を取ったのかそこまでダメージは入ってるようには見えない

 だが、イナクの得意とする戦法はどちらかというと体術よりも魔術だ、体格も小柄なイナクから出せる体術はある程度考えられる程のものだった

 琥珀がいまイナクに対して超接近戦をしている以上イナクに勝機はない

 鈍い音に立てながら腕が1つ飛んだそれに続いて後ろにある壁に穴が空いた


ーこのとき時計は10:53を示していたー


 それでも抗った。だが、次は足が片方機能しなくなった

 そして、その流れ弾が玄関にあるなんの罪もない時計に当たる

 時計が針を進めるのを辞める

 こうなってはなんの意味も持たないただのガラクタだ


ーこのとき時計は10:55を示していたー


 

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