第23話 一縷の望み

 歪な音を立てながら1人の少年が少女の前に倒れ落ちる


「ねぇ、お兄ちゃん久しぶりだね」


 少女は今のこの状況でありながらもそんな変哲もない日常的な言葉を口にした


「あぁ、ほんと久しぶりだな」


 イナクの脈を確かめながら言葉を交わす

 

(良かったまだ息はしている)


「お兄ちゃんはさこの世界欲しくない?」


「琥珀それはどういうことだ?」


 琥珀の質問の意図が全く分からない僕は思わずそう返した


「どういうことって言われてもそれはまちまちだよ。んーそうだな私の場合はこの世界が欲しいからこうやって征服しようとしてる」


 その言葉を聞き僕の中で何かが壊れた気がした

 いや、実際に壊れたのかもしれないだが、何となくそんな気がした


「琥珀、それはこうやってネフレンやシャムルを殺すことも必要だって言うのか?」


「ん、そうだね。実際私にとって邪魔だったから2人とも殺した。お兄ちゃんにとってこの人たちとどんな関係だったのかは知らないけど私にとってそれは関係ない」


 淡々としたやり取りの中に僅かに緊張が走る

 ピリピリとした雰囲気が流れ始める


「そうか、そうなんだな。そりゃ、残念な話だ」


 今思えばネフレンの持っている竜滅剣が近頃魔王の襲撃が来ると教えてくれていた

 なのに俺は毎日毎日イナクと外に出ていた

 こうなってしまっのも全て俺の不本意な行動の責任だ

 もう息をしていない冷たくなったネフレンが持っている竜滅剣を俺は手にする


「シュウ…?」


 後ろからイナクが半目を開きながら不思議そうに心配そうに見ている


(あぁ、イナクにも悪いなこんなことになってしまって)


「まさかお兄ちゃんまで私とやるって言うの、やだよだって私お兄ちゃんのこと傷つけたくないもん」


 あくまでも可愛らしくそんなことを言う琥珀


「大丈夫だ今はそんなつもりはないから」


 俺の能力は『死に戻り』その能力がどこまで応用が効くのかは分からないが少なくとも今日よりも前に戻らないといけない

 そして…


「琥珀。次会うときは僕はお前のことを殺す。」


「それはどうゆう…」


 琥珀は自分に向けて放たれた言葉の意味が分からないのか首をコテンと傾けていた


(分からないならそれでいい。そっちの方が僕も殺りやすい)


 イナクは僕の言葉の意味を理解出来たらしい。半目だった目を開いて残った左手を伸ばしているのが見える


(ほんとに羨ましいなその勘の良さは)


「やめろ!シュウ!」


 だけど僕はもう逃げれない

 大剣を振りかぶる。それだけの動作で風が起きるのだから使い勝手の悪さが滲み出る

 そしてその大剣を…

 …自分の体に差し込んだ

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