第5話 自己紹介

 ネフレンのオススメだという軽食屋にて昼食を取ろうとしているのだが…


「なぁ、ひとつ聞いてもいいか?」


「なんですか?」


「なんでこの店のメニューは『オムライス』と『レバニラ』しかないんだ?」


 店側にもなにか事情があるのだろう。だとするならば店の者に聞くのは少し気が引ける。


「店長の得意料理がそれだけだからです。以前聞いたことがあるのですが店長曰く

『他の物も出してもいいんだが他の店よりかは味が悪いものになると思う』

って言ってました。」


(なんだそりゃ)


 でも、日本で言うところの醤油ラーメン一筋でやってるのと同じようなことなのかもな。ここら辺はあまりこう言う店は多くない。そう考えるとこういう店の方が人気は少なからずあるのだろう。『オムライスと言えばこの店!』『レバニラといえばこの店!』みたいな感じで。


「そうか、じゃあ僕はオムライスだな。」


 日本にいた時からそうだったが僕の中ではレバニラに適う料理はないと思っている。そしてこの店のメニュー表のオムライスのところには『当店ナンバーワン』と書かれていた。

 そうなればどの程度の物なのか是非とも食べてみたいものだ。


(レバニラを超えることは無いだろうが)


「じゃあ、私もオムライスにしようかな。」


「すいませーん。オムライス2つお願いします。」


「あいよー。」


「んじゃ。僕から質問したいことがいくつかあるんだが…その前にお互いのことを知るためにも自己紹介をするか。」


(僕の場合はもう色々と知っているんだが)


「そうですね。私はネフレン・ルークエル。冒険者として働いています。でも、冒険者って言ってもドラゴンしか倒すことが出来ないんですけどね。」


 まぁそりゃ、あれだけドラゴンは絶対に殺すステータスの大剣持ってるもんな。


「そうか。僕は添田 愁。最近冒険者となったものでステータスは魔力だけが異常なほどまでに高いくせに魔法のひとつも使えないそんななんとも哀れな魔法使いさ。」


 うぅ。自分で言ってて泣きたくなってきた。


「そ、そうなんですね。だから攻撃力なんてさほどなさそうなのに木の棒で戦ってたんですね。」


 やめてくれ!そんな可哀想な者を見るような目で僕を見ないでくれ!

 ここで料理が気を使ってくれたらしい。僕とネフレンのオムライスが来た。


(ありがとう!オムライス!)


 一口食べると見るとやはりレバニラには届かなかったが美味しい。

 店No.1というだけはある。

 ネフレンが進めたい気持ちも十分に分かる。


「ついでに言うと僕は自分の故郷に戻る為に魔王を倒さないといけな…」


「…………」


 ここまで言ってネフレンが固まっていることに気がついた。


(え、俺なんか言っちゃいけない言葉言っちゃった!?もしかして『魔王』って禁句だった!?)


「な、なぁネフレンさん。」


「…………」


 とりあえず下手につくことにする。


「……本当。」


「え?」


「魔王を倒すって本当ですか!!」

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