第3話 任務

「………」

「………」

翌日の正午、寝不足気味の海夷に呆れながら羚は黙って歩いていた。

二人は任務の手紙を手に大広間にきていた。

海夷には緑、羚には赤の手紙が届いている。

「おはよう。羚、海夷。早速だけど任務、頼むよ。」

ルシファーはそれだけ言ってそれぞれに真っ白い紙を渡し出て行った。

「…何にも書いて無いぞ?」

紙の裏表を確認するが、何にも書かれていない。

「火で炙ると文字が出る。その紙はそのまま燃やせ。」

極秘に行うものが多いため、外部に情報が漏れないよう、このような手段をとっているようだ。

ライターを取りだし、火を付ける。

紙は次第に黒くなり、赤い炎と黒い煙を上げて燃えていった。

あっという間のことだった。

「…羚、読めた?」

あまりのスピードに驚き、もしかしたら読めなかったのではと心配する海夷を放って

「慣れればこれくらいで読めるようになる」

羚はたった一言言ってさっさと出て行こうとする。

「えっ?…同じ…任務…じゃぁ……ないよね…」

羚は振り返り呆れて言った。

「今まではお前の行動を見張るためについていたが、『サタン』の任務のほとんどは単独だ。大人数で行って失敗したら厄介だからな。」

要するに、邪魔者はいらない、と付け加えて部屋を出ていく。

羚が去った後、海夷はゆっくり紙を炙っていた。




その頃、仁国の国王が一人の兵士を呼んだ。

「およびでしょうか、国王陛下」

青の衣を纏う男は王の前に跪く。

腰に下げられた赤い飾りは軍での最高兵を示すものだ。

国中の兵士の頂点に立つ四人のみに与えられる称号で、国王の命を直接受けるのはこの四人だけだと言われている。

独裁的とも言われる仁の政治が成り立つのはこの制度にあるとも言われている。

「少し遠いが早急に頼みたい事がある。引き受けてくれるな?」

この問いに意味はない。

考える間もなく答えは返ってくるのだ。

「国王陛下の仰せのままに」

王は満足げな笑みを見せると奥の部屋へと戻る。

去り際に思い出したように振り返ると

「そうだ、峻路付近を『サタン』の連中が動いていると聞く。非常に目障りだ。接触したら消しておけ」

「承知いたしました」

王の姿が消えてから兵はゆっくりと立ち上がった。






峻路という仁国の町についた羚は町中を歩いていた。

今回羚に与えられた任務は、この峻路の政治をしている江河帝という人物の暗殺だ。

江河帝は元々軍人で、レビア戦後に地方を統治するようになった。

「江河帝暗殺…か…それも、他の者を巻き込むな…難しいこと言いやがって…」

峻路は国境の旅人の多い町でしばらくうろついても怪しまれないと思われる。

すぐに接近してもよいが、問題があった。

「情報が少なすぎる。少し聞き込みをするか」

繁華街へやって来た羚は何人かに「ここの君主はどうだ?」と尋ねた。すると、

「あぁ、江河帝様ね!いい人よ。潰れかけた私の店を助けてくれたわ。」

「あの人はここの君主にもかかわらず、私の野菜を買っていくよ」

「あの人のおかげでこの町もよくなったわ」

皆、口を揃えて絶賛するのだ。

あの紙には不正取引をしている悪人とあった。

「…ガセか?」

情報収集からやり直すべきかと次の人に話しかけた。

その人は町の外から来た商売人だった。

「あぁ、江河帝様ねぇ。町での噂はいいもんばかりだろう?」

その人は商品を片付けながら話した。

「…まだ昼間だぞ。もう店じまいか?」

羚の問いにその人はささやくように答えた。

「あの人はとんでもない税金を外の商品に付けるんだ。だから、私達の品物は売れやしない。町の中ではいいかもしれないが、これじゃぁ外から何も来なくなる。」

どうやら江河帝は独立を企んでいるらしい。

確かに峻路は広い町だった。

一つの国としても経済さえ上手く回れば十分やっていける可能性がある。

「なるほど。町内の評判はいいが、町外の評判は悪いのか」

おそらく、他国に影響が出るのだろう。芽は早めに摘んでおけということだろう。

殺しの理由は分かった。

羚には納得いかない部分もあるが、これは私情ではなく、任務だ。

簡単に断る訳にはいかない。

任務決行はこの日の夜と決め、羚はいつも通りの仕度を始めた。




(江河帝の部屋は…………っと、ここか…)

その夜、羚は天井裏に忍び込み江河帝の部屋の上に来た。

天井の隙間からは本人の姿を見ることはかなわないが、話は十分に聞ける。

ほこりの溜まる天井裏で息をひそめ、その時を待つ。

「おい、紫炎はまだ来ないのか?」

(紫炎?)

江河帝が兵と話している。苛立っているのか時折声を張り上げている。

「はい、紫炎殿はまだ到着しておられません」

「約束の時間はとうに過ぎておるではないか」

江河帝は苛立ちが隠せないようで、小刻みに足をならしていた。

(紫炎……炎神か……)

炎神とは紫炎の呼び名であり、仁国の最強兵の一人だ。

(江河帝の噂が国の兵を動かすまでになっているのか?独立くらい国にとってどちらでもいいだろう?)

確かに、現在すでに他の町との交流を遮断している峻路が独立したとしても、勢力は仁国が大幅に上回っていることに変わりはなく、それを阻止したとしてもこれからに繋がることはないだろう。

小国ならば危険だが、レビアを攻略した大国にとってはどうでもいいことだ。

「もうよい。お前は下がれ」

「失礼しました」

頭を下げて、兵は出ていった。

(…炎神が来る前に片付けるか…)

羚が銃を手にした時だった。

<コンコン>

(!!?)

「おぉ、紫炎。何故このようなところから?」

窓からあがって来たのは炎神・紫炎だ。

青の衣を身につけ、赤く光る玉の飾りを腰に下げている。

青紫の鋭い目は、兵士らしい殺気を含んでいる。

(…ッチ…しばらく様子見か…)

仕方なく構えた銃を下げる。

「江河帝殿、すみません。こちらにも事情がありまして…」

そういうと紫炎は腰の刀を抜いた。

「な、何を?」

<ガッ>

(!!)

紫炎が抜いた刀は天井に突き刺さり、何年とたっている屋敷の天井はその部分が崩れ落ちた。

「だ、誰だ、貴様!」

もちろん、その刀が狙っていたのは、天井裏の羚だ。

「おっと、その首飾りは、『サタン』ではないか。」

あの時、羚には声しか聞こえなかった。

それは、致命的なミスだ。

紫炎の刀は羚を確実に捕え、ギリギリでかわしたが、傷を避けることができなかった。

「ッチ…まさか、炎神が出てくるとはな。」

左腕に浅い傷が走る。

「本当は経済の話をしに来のだが、江河帝殿が何者かに狙われていると聞きましてね。その容姿は、噂の『サタンの羚』と見受ける」

どこから得た情報なのか分からないが、『サタン』の情報が漏れているようだ。

紫炎は低い声で話しながら二本目の刀を抜いた。

「分かっているだろう?私がここで敵であるお前を逃がす理由はない。何より、No.2のお前をたおすことで国が得る利益は大きい」

先程の刀より10㎝ほど長い刀を取り出し、羚をめがけ振り下ろした。

<キンッ>

「ほぅ、銃で、受けるか。」

右手に握りしめていた銃が盾になった。

「特注品らしいからな…ちょっとやそっとじゃ壊れねぇよ」

「しかし、この状態でどうする?」

羚の左腕はほとんど動かない。刀に麻痺毒でも塗ってあったのだろう。

「あいにく、あんた達と遊んでいる暇はないんでね」

羚がとった行動は


<ガウンッ>


一発の銃声が屋敷中に響いた。



「江河帝様、いったい、何…が……!!」

外を警備していた兵が見たのは眉間を撃ち抜かれた江河帝の死体だ。

だらだらと血と脳漿を流し、時々ビクンと動いた。

「え、炎神殿…いったい何が?」

紫炎は誰のものかわからない返り血を浴びて窓際に立ち、外を眺めていた。

「見た通りだ。私の失態だ。そう、町の者に伝えろ。私は国王に報告する。」

刀の血を拭い、静かに納めると、紫炎は部屋を後にした。


―数分前―


<ガウンッ>


「何!?」

羚は紫炎の刀を受けたまま、一瞬銃口の角度を変えて江河帝を撃ち抜いた。

いくら技量があるとはいえ賭けのようなものだったが、それでも選択肢は他になかった。

「貴様!」

不意の攻撃に動揺した紫炎が再び刀を振り下ろした。

<ザッ>

刀は羚の左腕を縦に斬った。

幸い腕は半分斬られたところで止まり、貫通は避けられた。

羚は左腕を犠牲にしたのだ。

麻痺毒のおかげで、大怪我のわりに痛みは少なくすんだ。

大量の血が飛び散った。

紫炎も羚も血塗れだった。

意外な行動に驚いた瞬間に羚は紫炎から離れ窓から去った。

「じゃぁな。今度は戦場で会おうぜ」

ただ、一言残して闇夜に消えていく羚を紫炎が追尾することはなかった。

(とっさに左腕を差し出すとは…並の精神じゃできない。何しろ、下手をすれば切り落とされる状況だ)

屋敷の廊下を歩く紫炎の思考は、あの時に集中していた。

(『サタンの羚』…侮れないな。………羚?確か…レビアの跡継ぎの名は……!レイ。レイ・クレイバー!まさか…レビア王家は皆殺しになったはず。それに、関係があれば政府が追うはずだ……『サタンの羚』いったい何者だ?)

紫炎は羚の事実に近づきつつある。



「ハァ、ハァ、ハァ…」

峻路から数十キロの深い森を歩く羚。左腕からは絶えず血液が流れている。

炎神から逃れることができたのは良かったがこの傷は良いとはいえない。

しかし、最小限の接触で逃げることができたのは、不幸中の幸いというものだ。

「……止血が……間に合わないか?……っ…」

布で縛っているが、なかなか血が止まらない。

紫炎の麻痺毒がきれてきて、痛みが増している。

「ハァ、ハァ、まったく…とんだ、大失態だ…」

海夷の事を言えないなと自嘲しながら笑う。

ついに木にもたれ、足がとまる。

「……血を……流し過ぎたか………」

傷はたった一ヶ所。しかし、その傷は深すぎた。目の前は霞み、立っているのも困難になってくる。

<カサカサカサ>

誰か前から歩いてくる。それが、敵か見方か判断がつく前に羚の意識は途切れた。

「………」



羚が目を覚ましたのは真っ白い部屋だった。まだ、頭はぼぅっとしている。

微かに感じる窓からの風が心地よかった。

「あ、目、覚ましたの。」

壁紙と同じ白いドアから入ってきたのは、右目の下にタトゥーを彫った女だった。

「!!!!?……っ…」

羚は驚いて起き上がろうとするが、左腕の痛みが邪魔をする。

「動かない方がいいよ。すごい出血だった。」

羚の左腕にはきれいに包帯が巻かれていた。

それを変えにきたのだろうか。女の手には新しい包帯があった

「……お前…俺が誰か分かってやっているのか?」

羚は殺し屋。つまり、この国の犯罪者だ。

「…さぁ?そんなこと関係ないじゃない。助けたいなって思ったから。」

そう言いながら、羚の左腕に手をのばす。

「…!!!」

<バシッ>

羚は女の手を払いのけていた。ほとんど無意識の行動だった。今まで左腕に触れさせたものはいない。

レビア王家の紋章をみられるのを避けるためにだ。

「……あぁ、あれか。なかなかいいタトゥーじゃない。今さら隠す必要ないでしょ?もう、見ちゃったし」

窓からの風が黒のショートカットを揺らす。

「レビアの人なんだ。」

包帯を外せば紋章が見えてくる。

「で、どうするんだ?国王につきだすか?」

羚は笑って見せた。

「別に?私、あの国王嫌いだし。」

当たり前のように話す女に羚は言葉を失った。

「しかし、上手く残ったね。ギリギリのところで止まってる。」

まるで紋章から雷が落ちたかのような傷だ。

「コイツだけは消す訳にいかないからな。」

実はあの時、羚はしっかり計算していた。紋章にあたる直前に身を引いた。

「へぇ。国が好きだったんだ。」

「あんたは違うのか?」

「ん~っと…国の為に一生懸命だった時もあったけどね」

くるくると包帯が巻かれる。

「あなた達と比べて国への信仰は薄いから。」

静かに風だけが抜ける。

「どうして…俺を?」

見ず知らずの男を助けるなど普通の奴ならしない。

「バカにしないでね?」

「?」

「天から降りてきた人かと思ったから」

「……は?」

とうてい羚には理解できない理由だった。

「だって、すごくきれいに輝いてた。太陽の光にあたって。本当、おとぎ話みたい。」

「「太陽みたい」」

羚はリリィの言葉を思いだし、目の前の女性が似たようなことを言うから、目を丸くして驚いた。

「いいよ。信じなくても…」

羚は何も言えなかった。鏡に映った自分を見て、彼女が何を見たのか、想像さえできずにいたのだった。

金糸の髪、これに光を浴びたところで何が変わるのか。

「…………っ!!!」

「…?どうしたの?」

突然うずくまった羚を心配する。

「いや…なんでもない」

その表情は何かに脅えているようで、顔を隠した指がたどった瞳は黒ではなく、薄い灰色だった。



昼の木漏れ日を見つめながら、羚の包帯を巻き終え、女は血で汚れた包帯をまとめる。

「……あなたを探して江河帝の部下が近づいてる。どうする?」

あれだけ大きい町の主君を殺したのだ。追っ手が来ないはずがない。

「…心配ない。今夜にはここを出る。」

もう二日も世話になっていた。

いつまでも同じ場所に留まる訳にはいかない。

サタンの本部に戻ればとりあえず安心できる。

「そ。じゃぁ、これ。」

差し出されたのは少し大きい布だ。

「これで吊るしてって」

布を首にかけて、左腕をつるしてもらう。

「……わるいな…」

半分強制的につけられ、戸惑う。

「あ、これ。」

渡されたのは羚の銃だ。

血は拭き取られ、細かな部分まできれいになっていた。

「ちゃんと手入れしないとダメだよ。珍しい型なんだから。」

「………」

白く光る銃は、羚の手によくなじんだ。

「世話になった。名前を…聞いてもいいか?」

ずっと気になっていたことがある。

世話をしてくれた女性はどことなく、『あの人』に雰囲気が似ていた。

「…羅楠[ラナン]。あなたは?」

あぁ、違っていたのか。と、落ち込む一方で、別人でよかったと安堵する。

「羚だ。ありがとう。羅楠」

サラサラと流れる風の中へ羚はゆっくり戻っていった。



暗い地下水路を通り『サタン』本部に羚が戻ってきた。

「ねぇ、ルシファー、羚、遅くない?」

談話室でくつろいでいるのはリリィとルシファーだ。

「任務後の寄り道はいつものことだろう?」

ルシファーはコーヒー片手に余裕の表情を浮かべている。

「意外と返り討ちになってたりして」

タオルを頭に巻いてやってきたのは整備士のグリフだ。

もちろん彼も『サタン』の一員である。

メガネをあげてコーヒーをすすっている。

「羚に限ってそれはないでしょ?返り討ちにあったって平気な顔して戻って来るって」

冗談混じりの会話に三人とも笑みをこぼしていた。


ちょうど笑い声が談話室を包んでいたその時、羚がサタンについた。

「ルシファー、話があるんだが…」

何を話しているかなど知る由もなく、いつも通りノックもせずに扉を開く。

「あ、お帰……」

羚の登場に硬直した三人は目を丸くした。

もちろん、その視線の先には布でつるした腕がある。

「ん?なんだ?」

平然としている羚だが、他の三人は見過ごすことはできない。

「何?怪我!」

大慌てで駆け寄るリリィにも、羚は大した動揺を見せない。

「あぁ、江河帝の時、紫炎にな。」

「紫炎って、国家直属の兵士じゃないか。」

始めは冗談で話していたグリフも本気で心配をしている。

「大したことないさ」

へらへらして見せるが、やはり左腕が痛むらしく、時々顔をしかめている。

「無理しないで下さい!あなたはすぐに無茶をするんですか…ら…」

誰よりも大きな声で羚を咎めたのはルシファーだった。

「………」

談話室を妙な沈黙が支配する。

「おい」

硬直した談話室に羚の低い一言が静かに響いた。

ルシファーは思わず敬語を使ってしまったのだ。

もちろん、ボスが今まで誰にも使わなかった敬語を格下の羚に使うのは不自然で、心配の仕方も尋常ではなく、二人が驚くのに無理はなかった。

「………え~っと…」

羚に睨まれ、リリィとグリフから妙な目でみられ、焦るルシファー。

苦笑いで羚を見る目は、ルシファーではなくディアンだった。

「ま、上下関係が反対ってのは知ってたけどね」

リリィがディアンをかばうようにきりだした。

どうやらとっさの嘘というわけでもなさそうだ。

彼女はディアンとの付き合いが長く、細かい彼の変化を察していたようだ。

「だって、目つきが違うもん。何年一緒にいると思ってるの?それくらい分かるよ。で?元々はどんな主従関係?」

詰め寄るリリィ。もう、隠すことなど無意味だった。

「レイ様は、レビア王家のご子息です。」

ディアンが部屋の外に声が漏れないよう、静かに答えた。

「えっ!?ってことは…クレイバー?でも、王家はみんな死んだって…」

王家クレイバーは大戦後に滅びたと広まっていた。

「いろいろあってな。結局生き延びたわけだ。」

羚の目は寂しそうだった。

「王家が殺し屋やってるなんて誰も考えないよね…」

「そうでもないですよ。クレイバーは元々軍人です。戦闘技術については飛び抜けたものがありました。」

自慢気に話すディアンは誇らしげで楽しそうだ。

「ルシファー、しゃべり過ぎだ」

羚の指摘にはっとしたルシファーは口を閉じた。

「でも、羚さんが深傷を負うなんて、仁国の兵士も侮れないな」

そんな羚とディアンをニコニコ見ていたグリフが突然話し始めた。

王家かどうかは別にして、羚の実力は『サタン』の誰もが認めている。

「確かに、レイ様に深傷を負わせるとは、かなりの腕前です」

ディアンが羚の怪我を心配しながら話す。

既に二人の前で素を隠す気はないらしい。

「おい、ルシファー、敬語はやめろ」

羚はその敬語が気に入らない。

「いいじゃない。羚様。」

わざとらしく様をつけるリリィ。これはこれで腹がたつようで、羚は舌打ちをしていた。

「こちらに対策が無いわけではありません。焦らずいきましょう。」

いつになく楽しそうなディアンを咎める者はいなかった。

むしろ、それが自然であるようだった。

「俺がクレイバーだと周りに知られたくない。このことは誰にも言うな。」

「分かってるって。誰にも言わない。

羚に答えるリリィは無邪気な笑みを浮かべている。

「当たり前だよ」

続けてグリフが言う。

クスクスと笑う声が聞こえる。

羚は誰とも目を合わせずに部屋を出た。


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