The Number

「⋯⋯何故なぜだかからないんですけど、むかしから、ひとじょうに“0”というすうえるんです。しんじてもらえないかもしれませんがほんとうなんです――もっとも、それがいかずかべたひとたことがかったので、そもそもすうかどうかもかりませんでしたが。ようえんともだちがおいたとき所謂いわゆるてん使のようにまるかいいてしまい、せんせいに『すいちゃんはロマンチストね。』とわれたのをいまだにおぼえています。かのじょふくざつ表情かおをしていたのは、きているひとかおてん使えがくのはあまりえんがよいとはいえないということを、ようえんにはかいできないだろうと、それをだまっていたからなのでしょう。いまおもえばそうなんですが、おさなわたしなおよろこんでいました。⋯⋯わたしは、つうじゃないんです。そんなわたしつけたのが、“3”のあなたでした。いまやっと、そのすうがわかりました。」

 こうわたしは、すうについてもせいねんについても、わたしだれかにそれをはなすことはなかった。


 あるあさつうがくのためバスにると、いくつかの“0”がならなかに“3”のすうがあった。わたししんそこおどろいた。おもわずさけびそうになるのをぐっとこらえ、“3”のすうほうあるいていく。

 はなたばかかえたせいねんが、ただうつむいてすわっていた。

「あの――」

 しまった。しきのうちにわたしは、せいねんはなしかけていた。ただ、どんなひとりたかっただけなのだ。

「――てきなおはなですね。」

「⋯⋯ありがとう。」

 せいねんは、こちらをることなく、ただくちひらいた。

 よくると、かれふくそうはあまりせいけつともえず、りんとしたそのはなたばとはミスマッチとしかいようがなかった。

 わたしは、かぬうちに、かれきょういてきた。いったい、どこへくというのか。

となり、いいですか。」

 せいねんなにこたえなかった。


 がっこうもっとちかいバスていじゅうじょうとおぎて、まだりない、とすこあんになっていると、つぎほんちょう、というアナウンスのあと、ほそゆびこうしゃボタンにれる。

 バスはみょうおとててまったあと、わたしせいねんを、ほとんどれのされていないバスていのこして、ってしまった。

「⋯⋯い。」

「いいんですか?」

ざくがわせいだろう。がっこうはどうした?」

 ざくがわしょうぎょうこうこうは、わたしかよっているこうこうである。もちろん今日きょうじゅぎょうはあるが、それじょうに“3”というすうわたしにとってじゅうだいたいだったのだ。

「⋯⋯まぁいい。おれにはかんけいがないからな⋯⋯」

 そううと、せいねんこみちすすむ。わたしあとう。

「15ねんまえいっさつじんけんがあってな。」

 せいねんあるきながらはなす。

「そこにけるはなだ。これは、それじょうでも、それでもない。」

「15ねんまえけんって――」

 なにこたえず、ただあしすすめる。そのひょうじょうは、うしろをあるわたしうつることはなかった。


「1998ねん6がつ17にち日下部くさかべかつさいちょうじょゆいさつがいされた。きょうげんにあったほうちょうぼうすいていこくから、けんしん1から3はっせいしたとられる。とう6さいであったちょうなんたいげんからやく3kmはなれたすいしきうしなったじょうたいされた。きんりんじゅうみんしょうげんから夫婦ふうふちょうじょゆいちょうなんたいたいするぎゃくたいをしていたことがはんめいしており、しんにゅうけいせきもないことからけいさつ夫婦ふうふによるしんじゅうであるとし、しゃぼうかいけつとなっている。しかしじっさいはどうだったのか――。」

 わたしはそのことすべてをさっした。

あねころなんてじんもなかったはずだった。おそらくどうてんしていたんだろうが、なにせもうおくがないからな――。」

 ことまる。むねいたくなる。

 はなたばとなった日下部くさかべげんかんぐちくと、せいねんおもむろがった。

「さて、こんはおまえはなばんだ。」

わたし⋯⋯?」

おれについてきたのには理由わけがあるんだろう。」

 わたし躊躇ためらいながらも、すこいてはなはじめた。

「⋯⋯何故なぜだかからないんですけど、むかしから――」

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