星売りの男

 おなゆめなんている。ぞらげるゆめだ。はじめてときはとてもれいで、おもわずばした。しかしほしにはとどかず、めてしまう。ばすのをあきらめて、わたしそうけいいちまんほどのよるえていた。

 ある、またそのゆめた。あいわらずうつくしいほしぞらだった。おもわずばすと、むかしとどかなかったはずの星々ほしぼしゆびれた。こんぺいとうのようなほしを、わたしった。

 めると、ひだりちいさなほうせきにぎられていた。れいみずいろの、かくほうせきこころたりのないそれをどうすればいいか分からず、なやんだあげけっきょくることにした。おどろいたことに、そのしょざいめいのエメラルドは、えらぶったかんていに40まんをつけられたのだ。


 こうしたことがつきさんつづいたので、わたしはついに、ネクタイをめるのをやめにしたのだ。


 トルコいし、ルブライト、ローズクォーツ――ほうせきればるほど、かねえた。とうぜんだ。かいとりかくがそのまますべじゅんえきなのだから。――しかし、何故なぜだろうか、なにかをうしなっていくかんかくつねのうないのこる。

 ほしおおきくかがやく。ほうせきたかがつく。そのけたがるたび、わたしからっぽになっていく。もうなにおぼえていない。

 きずだらけで、いびつで、たないいろの、ちいさなちいさなほうせきさいに、わたしすべてをわすれてしまった。


 ぞらほしかった。

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