文学ソテーを食べる者

 バイトもめて、かみとペンだけはって、たかさきせんまかせた。もうすぐさんじゅうになるにんげんが、只管ひたすらさないならべている。わたしは[???]である。

 くあてもなく、とある田舎いなかまちりた。らないまええきだった。

 すると、どういうわけか、せんきゃくがいたのだ。かれわたしっていたという。

いたかったよ。あんた、さっのなりそこないだろ?」

 をしてじんえきかいさつかうわたしかたを、やつたたいた。

「まぁてって。もっといいところまないか。」

 かねこまっていたわたしは、おもわずあしめてしまいそうになる。が、いそいでぜんしんする。

「なに、あやしいはなしじゃないさ、あんたはぶんく。かねはそのぶんはらう。かんたんだろう?」

 とうとうあしまってしまった。やつると、うつろなしたみをかべていた。

「あんた、まえは。」

「⋯⋯[???]⋯⋯。」

「なるほどね。ばくだ、よろしく。」

 ばくというまえかんおぼえるほど、わたししょうではなかっただろう。

 これは、わたしばくせいかつの、はじまりである。




 そのことみにするならば、やつことうのだそうだ。上手うまひょうげん美味うまい。まずひょうげん不味まずい。それで、さっこころざしたものってくらしているのだそう。やつてきてきかくで、じっさいやつはんせいともにしたにんげんはんぶんじょうは、めいはあれどみなおうねんぶんがくしゃだった。

ことべるとは、どういうことだ?」

「なに、かんたんなことだ。なにか“ぶんがくてきひょうげん”をかみいてくれ。」

 わたしは、わけもわからず、とあるさっことしるした。

「これをべるだけさ。」

 やつゆびをなぞると、インクはまたたえ、やつしょくえる。ゆびとともにくちはこばれるインクたち。

 ごんでインクをばく

「⋯⋯とうさくだな。じゃみたいなあじがする。」

 くちもとていねいぬぐい、あたまく。

「まずそこからか⋯⋯ぶんがくてきひょうげんというのは、ぶんことつづるんだ。とうさくは、どんな下手へたことよりも不味まずい。」

 やつがそううので、わたしなやんだすえ、[???]としるした。ぐにさきほどおなどうで、やつことべた。

「あぁ⋯⋯わるくないな。」

 すこしばかり、うれしさがあった。かつておやにもともにもこいびとにもゆめていされ、さいのうがないとわれ、わたしものがたりひょうふたなどじんにもなかったのだ。はじめてひょうされたいちぶんであるが――なにいたのか、おくにない。

べたことは、このからえる。もうだれも、おもいつくことはできないし、あんたもそれをおもすことはない。」

 そうなのか⋯⋯すこしばかりざんねんだ。

「あまりかなしそうでもないな。」

かなしい?」

 わたしくびかしげた。

いままでことべられたやつらは“ぶんひょうげんかえせ”となげいたものだ。あまりにたりがつよく、されたこともあった。」

「そりゃ、つくったことえてなくなるのにさみしさはあるが――かなしくはないな。」

何故なぜ?」

何故なぜって――ぶんがくげんだからさ。」




「えっと⋯⋯。」

 しゃことまらせた。もない。

 やつに“おまえそんざい他人ひとってもよいか”とうたことがある。そのへんとうは“かまいはしないが、だれしんじないのでこうだ”であった。まさにである。

かいさくはそういったコンセプトで――?」

「いや、すべじつです。」

 じゅうすうびょうわたちんもくつづき、しゃだいえる。

 やはり。やつはこのじゅうねんかんいちうそわなかったのだ。




 久々ひさびさやつもとおとずれた。よんじゅうねんぶりだろうか。ぜんちがって、やつ姿すがたわたしにはえなかった。

ばく。そこにいるんだろう。へんをしなさい。」

 やつこえはしない。

「あんたにたのみごとがあってたんだ。」

 そううと、つくえからまんねんひつちるおとわたしかくしんした。やつはまだこのいえにいると。

わたしらえ。あんたがつないだ、はちじゅうねんじゅくせいものだ。」

 まんねんひつき、つくえはしらせる。“ぬのか”

「あいにく、げんぶんがくのうは、ゆうげんなのでな。」

 また、まんねんひつうごく。“こうかいはないか”

「ないかな――らしいじんせいだった。あるとすれば、あんたのかおえないことだね。」

 まんねんひつが、ったりたりして、つくえやつかおえがく。

もくゆがんでいるじゃあないか。あんたは下手へただね。」

 たおれかけたまんねんひつり、かみに[???]としるす。わるくない。わるくないひびきだ。

 徐々じょじょえていく。わたしも、徐々じょじょじていく。しろになっためんに、かんだのは“さよなら”の

「さよなら、ばく⋯⋯。」

 わたしじた。

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