第8話

※この物語はフィクションです。実在する団体、人物とは関係ありません。







速すぎる。速すぎる。

俺は確かに第三次世界大戦が始まることを知っていた。けれど速すぎるのだ。予定では2040年頃。そう聞いていた。けれど20年もはやい開戦だ。

そうしてその世界は2つに別れた。自身達の名声が欲しい強国側、もう1つは自国の守りに徹する発展途上国側。

「いずれここも戦場と化す。」

俺はそう呟いて、あいつに連絡を入れる。数年前に最強のオペレーターと名を馳せた陸奥広無に。

あれから師匠のもとで少しづつ、戦闘を学ばせてもらった。最初の頃は師匠の能力の攻撃を受け止めるのがやっとだったが、今は能力を捌いて、師匠を見ることができるようになった。

「強くなったね。けど、まだまだ弱い。」

そういい師匠は俺との距離を縮めて、ナイフを突き立ててくる。目で追えなくはないスピードだが、気を抜けば見失うそんなスピードだ。確かに師匠を見ることは出来るのだが、防戦一方だ。そうして気づけば、師匠が投げていた短剣に刺さった。

「ハァハァ。」

息が荒い。師匠は強い。確かに能力が強いのだが、師匠の強さはそこでは無い。身体の使い方、立ち回り、スピード、筋力どれをとっても1級品だろう。そんなことを考えているうちに師匠が、いくつかの小さな箱を持ってくる。

「もうそろそろ、修行期間も終わるし、餞別の品をあげるよ。」

そう言いながら師匠は箱を開けていく。そこには色々な短剣が入っていた。

「ちょっと説明するね。」

師匠は短剣の詳細な説明をしてくれた。どの短剣も伝説というものを残している、伝説の遺物。けれど俺がその短剣を触ってみると、頭痛がする。伝説というのは、その遺物と伝説を残した本人が一致して初めて伝説になるのだ。誰かがそんなことを言っていた。その言葉を俺は始めて理解した。この伝説の遺物たちは、主である、伝説を残した英雄にしか使われる気がないのだ。意志を持った武器達。それはきっとこの先に多くの伝説を残せるだろう。けれど、授ける主を決めている。だからこそ伝説を築ける物となったのだろう。

「師匠。こいつらは俺に使われる気はありません。ですので、俺は何もいりません。」

「いやダメだ。なら、俺が以前まで使っていた、短剣をやろう。」

そうなるとわかっていたかのようにすんなりと師匠は話を進める。どうやら師匠も1度こいつらに拒絶されているようだ。師匠から授かったのは刀身が青色の短剣と白色の短剣。それを握るととてもしっくりと来た。

「ありがとうございます。師匠」

俺はニコッと笑った。

それから数日いつも通り、師匠に稽古をつけてもらう。そうしてその日は来た。

第三次世界大戦の開戦でニュースが持ち切りになるその日が。

「師匠これ?」

「第三次………世界大戦?」

ブルブルブルと自分の携帯がなる。それは陸奥広無からの着信だった。

「はいもしもし。」

「鎧亜くん。今坂田先生を向かわせたから、帰ってくるんだ。」

そういいブチッと電話が切れる。焦っていた。端的にそう感じた。そうして俺は師匠に事情を話して陸高に帰った。

陸高に帰ってそうそう、俺達は校長室に呼ばれていた。そこにいるのは、虎口先輩、白夜先輩、知らない俺よりは歳上であろう人が2人、

影狼くん、一、そうして以前影狼くんが兄妹と紹介した終界冥子。もう1人知らない人がいるが蛇古と一緒にいるで影狼くんの弟だろうと推測する。

「この戦争で必ず神は動く。だから神から人間を守るために、集まってもらった。」

「神ってのがなんなのか教えてくれよ。」

「神話の神を元に作られた能力者たちだよ。分かるようにいえば海高の皇帝とかもそのひとりだ。」

一が疑問をなげかけそれを、簡潔にまとめる。神の目的とはなんなのだろうか、そうしてこのメンツの意味がわからない。

「神の目的は?」

「人間の間引き。これだけだ。」

間引きて、いやでも神話とかだとよくある話だ。大洪水を起こすとかで人を選別するとか何とか。

「それがこの第三次世界大戦か?」

知らない先輩が口を開く。陸奥校長はその問いに口を開いた。

「いいや違う。これは、あくまで人間が起こしたものだよ。けどこの戦争の裏で神と悪魔の最終戦争が始まる。悪魔側に加勢する。」

「その戦場は?」

「日本だ。」

その場にいた白夜先輩以外の人間が驚く。白夜先輩はと言うと当然だとでも言いたげな顔をしていた。

「このメンツの意味は?」

俺が口を開く。ここまで静観していた俺だが誰もこの質問を投げないと思い、口を開いた。

「白夜くんは全校生徒をまとめるために、それ以外の神話系の子達は悪魔だったり、神に反逆した能力を元にしている。悪魔に加勢するのであれば、この話は本人たちにした方がいい。一くんには後処理を、鎧亜くんには加勢する戦力として呼ばせてもらった。」

「最近、ルシファーと記憶が混濁するんですが、あれは?」

「わからない。けれど、この最終戦争時は意識を君たちの能力に授けることになる。それでもいいという子だけここに残ってくれ。」

そう校長がいい、出ていくものはいなかった。神話系だけあって数々の修羅場をくぐりぬけてきたのだろう。

「最後になにか質問はあるかな。」

「敵の数は?」

白夜先輩がはじめて口を開く。

「最低でも10人。多くても20だね。」

そうして解散となった。神と対峙するからなのか、恐怖で手が震えてきた。

1日後

「さて、最終戦争はあちらからしかけてくる、だからいつ来るかはわからない。けれど作戦は立てられる。」

「オーディンがいるのだとしたら、反逆する神は、ロキじゃないのか」

「そうだね。けれどロキの能力者は見つけられなかった。何かあるのかもしれない。」

「能力も謎が多いだろ。」

そう言葉を発したのは青髪の知らない先輩、野々村和樹だった。確かに能力自体に謎が多いのだ。

「俺は文献を漁りに行ってきます。」

俺はそう発言して、あの部屋から出てきた。あの部屋はなんというか、威圧感がある。神話系が多くいるからなのか、それともあの部屋自体に何かあるのか。それはどうでもいいとして、図書館に走っていく。図書館で神話系の話を色々漁ってみるが、特に何も出てこなかった。

神話系を探すのを1度やめ、少し休憩する。ふと空を見る。その空には大きな、黄色の魔法陣が現れていた。その魔法陣は綺麗でいて、どこか絶望を感じさせた。俺走る。あの部屋に戻るべく。

「やべー。」

気付かないうちに俺はそう呟いていた。世界の終わりの1ページを見ている気分だ。けれど、俺達はあの魔法陣を作成した人物と戦闘をしなければならないのだ。

「さて、開戦の合図はあれから雷が落ちたらだ。」

そういう虎口先輩の声が聞こえた。そうして俺は扉を開く。

「なにか文献は?」

「すみません何も。」

俺はそう言った。白夜先輩はもう、全校生徒を、体育館に集めている。俺らも今からそこに合流するのだ。

「ねぇートールまだー。」

「うるさい。黙って。ヘズ。」

俺はヘズにそう言って雷の錬成にもう一度取り掛かる。オーディン様の命令も無茶苦茶でもう辞めたい。けれど、地獄のような生活から、俺たちを拾ってくれたのは、オーディン様である。だからこそ、あの日俺達は忠誠を誓った。

「おっ、ありゃトールのだな」

そうケラケラと楽しげに笑う兄様も見て私も笑いたくなったが、今から最終戦争をするというテンションではないだろうと思い、兄様を叱る

「兄様。今から私達は戦争をするんですよ。」

「わかっるわかってる。というか俺らなんで赤の他人の体使ってんの?普通俺らがトールとヘズの人間じゃね?」

「まぁたしかにそうですけど、どうやら私たちは顔で選ばれたようですよ。」

その言葉に兄様はケラケラと笑った。これでも兄様がやる気になればこの世界を滅ぼすのは簡単に出来るのだ。

「あれが開戦の合図だっけ?」

「そうですね。兄様」

「笛野郎はどこだ。合図が聞こえねぇーぞ」

「まぁあれを見ればわかるとは思うのですが?」

オーディン様の話を聞かなかったエーギルはそんなことを言っていた。神々に来ている通達はトールの最大火力の雷がギャラルホルンの代わりとなるとのこと。なんでトール様にそんなことをさせるんだろうと、私は疑問に思ったが、オーディン様の決定だから私が口出しできることでもないのだ。

「ヘイルダムさん、今回もしかして、出番ないのでは?」

「いやいやあるよォ。僕多分君よりは強いと思うんだけど。」

確かにロキに1度、勝っているため何も言い返せない女神さん。可哀想に。確かに運命を操るとかいう強い能力だけれども、それでも越えられない壁というものがいくつもあるわけで、そのひとつがロキや、オーディン様である。

「ねぇ父上なんでトールなの開戦の合図が」

そう問いかけてくる息子。それに俺はわかっていないと思いながら口を開く

「それはな人間に絶望感を与えるためだよ。」

そう言いながら俺は満面の笑みを息子に向ける。息子はヒェッと声を出して、驚いていた。

「父上それ辞めた方がいいと思う。」

そんなことを言っていた気がするが、スルーするとこにした。

「皆も見たかもしれない。突如として空に描かれた大きな、あの魔法陣を。あれは今から俺達が敵対する奴らのものだ。あれに恐れをなすならそれでもいい。けれど、もし、あれとやり合いたいそう思う者がいるなら、止めない。とも行こう!奴らを倒しに!」

そう白夜先輩が言うと大きな歓声が湧いた。けれどその歓声は直ぐにやんでしまう。いつもならもう少し長い歓声も、すぐにやんだ。それは、戦場に赴く決意を決めるためなのか、恐れを生して逃げる自分を責めるためなのか、それとも恐怖におびえるたためか。

「あの魔法陣に動きが会った瞬間が開戦の合図だ。皆が数年研いできた刃をぶつけよう。くれぐれもあの魔法陣には近づかないように!」

そう白夜先輩はにこりと笑った。

やはり白夜先輩のカリスマ性はすごいなと思った。

「なぁ影狼くん。能力を使っても大丈夫なの?」

「いや多分この戦争で理性は確実に無くなる。だからね鎧亜」

影狼はそう少し間を置いて、

「暴れるだけの化け物になったら僕を止めてね」

悲しみにまみれたそんな顔をしていた。けれど決意を決めた影狼くんを止めるそんな権利は多分俺には無いのだろう。ならば俺はこういうしかないのだろう。

「いいよ。借りもあるしね。」

多分俺の声は震えていた。確かに短い間だったけれど、友人が居なくなるそれでいて泣かなくい程俺は冷たくはない。

「ミョルニル!!!!!!!!!!!!!!!」

そうトールが言うと魔法陣から大きな雷が生まれる。その雷が落ちた周りの建物は全て吹き飛び、地面は半径80メートルほどのクレーターが形成された。そのひとつ落とした、雷だけでこの街は半壊した。

ピューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

どこからともなくそんな笛を吹くような音が聞こえてくる。どうやらヘイルダムがギャラルホルンを吹いたようだ。

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