第7話
※この物語はフィクションです。実在する団体、人物とは関係ありません。
「さてなんであのNO力者を使わなかったんだい?最強のオペレーターさん?」
懐かしい2つ名で呼ばれ少し、感傷に浸りたくなる。しかしそんな時間もないため、サクッと前の人間の問いに答える。
「ハハッ。君の所みたいに簡単に切り札はきらないんだよ。後あの子は切り札と言うよりスペードの3なんだよ。最強の能力者さん。」
昔、最強のオペレーター、最強の能力者として名の知れた2人なのである。
「スペードの3か。あれほどのジョーカーはないと思うのだけれどね。さすがはオペレーターだ。」
「あの大きな戦争の作戦会議をしようよ。」
※
あの海高との親善試合から時間は過ぎ去り、2020年の冬。それまでいつも通りに、生活をしてきた。夏から冬にかけては、特に何も無い学校生活が続いていた。
「鎧亜。お前、最近体術だけしか使ってないし、体術のキレも悪くなってるから、少し修行にでも行ってこい。」
「えっ?俺は別に…」
先生は俺の言葉を遮って、俺を引き摺って、車に放り込む。ここまでされたなら、決心をしなければならない。そうして俺が口を開く。
「先生。ちなみにどこに何ヶ月ほど?」
その質問を聞くと、先生は口を開く。
「海高に、1ヶ月ほど。」
1ヶ月、1ヶ月。この先2週間後には学校祭があるはずだ。そうなると俺は学校祭に出られないのでは?海高と陸高はそこそ遠く、車を走らせても、半日はかかるため、学祭には出れないということになる。
「ねぇ待って先生。俺学祭出れない?」
「いや出れるぞ。海高のだがな。」
運転席を見ると、とても悪い顔した先生がいた。
「やだァァァァ。陸高の出たい。」
元来、俺はこういうお祭りごとが大好きなのである。ここら辺で先生に睨まれたのでやめておく。あーあ出たかったな。
※
「さていらっしゃい。無能力者、いやNO力者さん。」
俺の事を出迎えたのは、確か根元の、富澤陽太であった。
「よろしくお願いします。富澤先輩?」
「陽太先輩でもいいし、師匠でもいいよ」
どうやら今日から俺はこの人に稽古をつけて貰えるようになった。
「じゃあ着いてそうそうだけど。ちょっとやろうか。」
そう言われて俺が案内されたのは大きな部屋。体育館にしては小さいが教室にしては大きすぎる部屋だ。
「ここは?」
「生徒会だけが使える運動部屋かな。一応空間系の能力で作られてるから、死なないよ。」
では俺は腰に携えている短剣を抜く。逆手で双剣を持ち、一気に距離を詰める。首辺りを狙いに行くが完全に流される。それを一気に後ろにさがられる。距離を取られる。俺は自身の腰に手を回す。けれどそこには数ヶ月前まであった、銃はなくなっており、少し悲しくなる。そんなことを考えているうちに、短剣が飛んでくる、それを短剣で受け止める。けれどその剣には意思があるかのように俺の体を狙ってくる。それを何とか剣でその剣を壊す。流石に壊されては動かないらしく、パタリと地面に落ちている。シュッと後ろから空を切る音が聞こえてきた。それを剣の刃で止めるがそれも先程の剣同様俺自身を狙ってくる。それをまた破壊させて、陽太の方をむく。しかし陽太はその場所にはいなく、俺の後ろにいた。そうして心臓を短剣で貫かれる。
「君は強い。けれど彼らほどでは無い。けど、」
彼の声は優しく、けれど力強く、色々な感情が込められていた。
「君は絶対に強くなる。俺が強くさせる。影があそこまで上り詰めたように。」
そこで俺の意識はとだえた。
※
「さてさて。1Aトップ3人がボロボロらしいな。」
声をかけてきたのは、太刀奪である。以前の俺であれば、俺も含めてTOP4だと啖呵を切っていただろうが、あいつらに勝てる自信がないためら押し黙った。
「影狼のは無理だが、剣を助けることは出来るぞ。どーする?」
「どーすればいい?」
俺は即答をする。そこから聞いたのは剣の以前までの状態と今の状態を聞いた。その話では剣には今9の人格が存在し、その8人の人格を消滅させようとしている。今の状態を助けるには、8人に手を貸すか、1人に手を貸すというふたつの方法があるらしい。
「さてお話はこれまでだ。やる気になった俺に教えてくれ、彼の心のゲートを開く。行くとしても4人だ。それ以上は無理だ。」
そうして太刀奪は去っていった。そうして俺は鎧亜に連絡を入れていた。仲間集めである。同居人である彼ならば、剣の知り合いもわかるだろうと踏んだのだ。少し彼に力を借りるのは癪だが。
そうして数分もしないうちに連絡が来る。そこには、
『あの死神の不死原さんとか、クラーレくんとか、雨竜とかも良さそうだな。あと1Aなら時くんとかかな?絡んでいるところ見かけないけど、流石に8人を相手するには初見はきついし、あまり使って欲しくはないけど能力で何とかなるから。』
なるほど神楽にクラーレに雨竜に時か。連れて行けるのは3人。誰を連れていくのか慎重に選ばなければならいな。とりあえず、クラーレは確定でいいか。毒は強いし、何より使いやすい。そうして俺はクラーレを説得しに行ったがクラーレはすんなりと受け入れてくれた。
「どうする?クラーレ。」
「うーん。殺すことが目的じゃないから、神楽さんは除外で、時くんの能力は使って欲しくないから、除外で、雨竜くんは確定かな。」
「まぁそれは賛成かな。けど誰だあと1人。」
これがもし影狼や鎧亜がいればいいのだが、影狼は能力を使うのが禁止されている。鎧亜はと言えば海高に修行に行っている。
「透明化とかどうだ?」
確かに透明化は色々と便利だと思いその提案にクラーレが乗る。ではまず、1Aに行って智樹に事情を話す。智樹は直ぐに承諾をした。次に雨竜のクラスに行き、雨竜をこの作戦に誘う。雨竜も直ぐに承諾して、メンバーが揃った。
「1人を助けるか、8人を助けるかだが。どうする」
俺は全員に意見を仰ぐ。少しの沈黙。その沈黙を破ったのは智樹だった。
「俺は多分8人を助ける。その8人が俺らと過ごした剣だから。」
「僕も智樹に賛成かな。」
「で、雨竜は?」
「うーん俺はどっちでもいいんだよ。剣との面識なんて顔見知り程度だから。」
そう呟いていた。確かにそうだ。同じクラスならば、一緒に暮らしていた8人を選ぶだろう。俺もそのうちの一人だ。
「じゃあ8人を選ぼう。さて作戦だが。」
その後ある程度の作戦を立てていく。俺の炎の舞と、雨竜の水、クラーレの毒が主軸になる大きな三パターン。そこから細かく別れるが、大方その三パターンで残りが智樹の能力で隠れるという作戦である。
「今日はここらで終わりにしよう。」
次の日
影狼から鍵を借りて、剣の前に、5人の男性がたっていた。もう大人と言っても差し支えない5人の男子たち。その4人は何かを決心したようなそんな面持ちだ。
「じゃあ開くよ。」
太刀奪がそう言うと大きらゲートが開いた。その先は暗闇だ。ただの黒。その先に剣の精神世界に繋がってるとは思えないほどの暗闇。少しの恐怖で体が震えている。俺の肩に太刀奪が手を置く。そうして太刀奪は語り掛けてくる。
「行ってらっしゃい。君達がどんな決断をしても、誰も憎まないさ。」
そういい太刀奪はふっと笑った。
ゲートの中に入るとそこには、4人の剣が戦っていた。
「なんで2対2なんだ?前情報じゃ1体8だろ。」
そう言いながら俺たちは、気づかれないように、後ろを横切る。どちらに着くのがいいのか分からなくなる。とりあえずは情報が必要なので歩いて回ることにした。歩いていくと、部屋が変わった。そこは子供部屋。そこには剣がいた。けれどそれとても幼い。俺らが知っている剣よりも10歳ほど幼い。
「君は剣?」
「そうだよ。お兄さん達だれ?」
そう問いかけられ、俺たちは一応自分の名前を名乗る。そうして少し幼い剣と話す。どうやらこの剣は俺らの知っている剣ではないということがわかった。剣の元の人格とでもいえばいいのか。
「さっきそこでお兄さんたち戦ってなかった?」
「あの人たちはみんな僕。けど僕じゃない僕なの。」
僕じゃない僕。人格のことを言っているのだろう。
「でもね僕が、炎、光、風、雷の僕を仲間にしたんだ!」
ということは水、氷、闇、土が敵対しているわけか。ならば俺たちは水陣営に着くのが1番いい気がするな。
「ありがとう。」
その礼だけ行って俺たちは元の場所に戻っていく。そこには戦い終わった剣が二人いた。2人とも傷ついている。片方が弓を持っているので水の剣で間違いないだろう。
「炎舞!?それにクラーレ、雨竜、智樹!」
互いに情報を報告している。敵対している剣は何故か倒しても倒しても出てくるということ。なにかコアとなるようなものがあってそれを壊さなければならないのだろうか。しかし人間の心のコアを壊してしまえば、どうなるかなんてわかったものじゃない。怖いな。そんな端的な言葉しか出てこない。俺たちは1度二手に別れることにした。智樹とクラーレが情報収集、俺と雨竜が剣を守るということにした。剣を倒すだけでいいのだろうか。他になにかないだろうか。しかし情報を待つしかないだろうな。
「ヒャッハー。ミズルギ。しねぇ。」
「うるさいのが来たな。」
大剣を持った炎の剣と、鞭を持った光剣がいる。
「ありゃ。同級生いるじゃんなんでぇ。」
雨竜に後衛を任せて俺は前に出る。刀と鞭のがぶつかり激しい火花を散らす。バチバチという雷特有の音が鳴る。
「雨竜合わせられるか?」
「お前が合わせるんだよ。炎舞」
くっと互いに口角が上がる、考えることは同じようだ。俺は距離をとる。あちらの鞭を伸ばしてもギリギリ届かない程度の距離。その距離をとった瞬間に雷剣は一気に濡れる。雷剣は届かない鞭を伸ばす。そこでバチバチという音がする。そうして雷剣は感電して気絶した
ハイタッチを交わす。
「凄いな。あまり関わりがないにもかかわらずあそこまで息を合わせるとわ。」
水の剣は笑っている。俺の出番は?とうしろで闇剣が呟いていたが無視することにした。
それから数時間たって、クラーレと智樹が戻ってくる。
「おかえり。どうだ?」
「一応。主剣は見つけたけど。4人を説得するのは大変そう。」
ならどうする。どうやって8人を助ける。1人を敵とする。
「とりあえず、クラーレの毒でしびれさせることって出来たよな。」
「一応な。」
ならばと4人が同じ思考に至っていた。
「なんでこいつらこんなに仲良いの?闇剣」
「知らん。氷剣知ってるか。」
「いや知らないね。土剣は」
「うーん知らないかな。」
ちなみにここは水剣の陣営の集会場所である。少し俺と雨竜は睡眠を撮る。その間にクラーレが毒を充満させてくれる。そうして目が覚めた時、5人は痺れていた。
「主剣よ。8人の属性剣を返してもらうために。」
そういうと水剣は俺らの前に立ちはだかる。
「ごめんねみんな。こいつがいなくなった後俺がまとめ役としてたから、こいつの苦労を1番知ってるんだ。だから俺は自分がいなくなっても主剣にこの体を返すよ。」
「確かにな誰が助けてなんて言った?俺らは一言言ってねぇよな。水剣。」
そう言い土剣も水側に着く。しかし闇と氷はこちらのままのようだ。
「少し力を解放しようか。」
「やばい。」
同じ水の能力者として、水剣がやばいということを雨竜は感じとったのだ。
「逃げるよ。」
そう言って俺らは走る。訓練を毎日行っている俺らでも息が上がるほどの全力疾走。何とか部屋から逃れられた。
奥の部屋では水剣が暴れ回っている。ドンドンと壁に矢が当たる音が無数にしている。矢がそんな音をしているっていことは馬鹿みたいに力を込めているのだろう。
「助けてくれ。」
そう言って来たのは主剣だ。その周りには6人の剣がいた。水剣は自我を失い、暴れ狂っているのだという。それをサポートするように土剣も暴れている。
「勝算は?」
「水剣なら雷で何とかなる。属性剣は体全体がその属性でできている。だから属性の弱点はそのまま弱点となる。」
「よし!決めた。俺は9人全員救う!」
今までの心の霧が晴れた。なるほど1を切って8を救うか、8を切って1を救うかのその二つに縛られすぎていた。第三の選択を見失っていた。いや見失っていたというよりは可能ではないと自分自身に言い聞かせて見て見ぬふりをしていたんだと思う。
「そりゃあいい。乗った。」
一番最初に乗ったのは、クラーレくんだった。
「俺はさ主剣も知ってるし、属性剣全員を知ってる。けど属性剣しか救えないと思ってた。けど、全員を救えるなら全員救う。」
「俺はハッピーエンドが好きだからな」
ボソリと雨竜が言う。そんな言葉に全員が笑う。まるで最後の晩餐かのように皆で笑い合う。
「じゃあ行こう!」
そうして決意を決めて俺たちは水剣を倒しに行く。俺、雷剣、闇剣、光剣は水剣を、雨竜、風剣、炎剣、氷剣は土剣をほか3人は透明化でこちらを見守っている。
俺が大剣で足を狙いに行く。炎の剣をぶん回して、何度も切り付ける。その間に光剣と雷剣が力を貯めている。
「力が溜まるまであと2分ほど耐えてね。あと弓は結構癖がないから直接飛んでくるよ。」
そうして少しづつ水剣の体力は削れていく。
「準備万端。行くよ離れて。」
そう言われて俺らは跳躍した。バチバチととても大きな音を鳴らしながら、水剣は感電した。
水剣ぼふーと言いながら倒れた口から煙を出していた。
「さて土剣どうだ?まだやるか?」
「いやいいよ。もう勝てる気は無いしね。」
そうして俺たちは1度水剣の集会場所に戻った。
「主剣よ。どうだ。表に出てこないか?8人の人格を残したまま。」
「そうだね。久々に指揮や作戦を立てるのは楽しかったし。」
そうやって主剣はニコッと笑っていた。うちのクラスの誰もが見た事がない本当の剣という少年の笑顔である。
※
そうしてあれから少し時間が経った。あれから変わったのはクラーレや雨竜と交流が生まれたこと。さらに剣が活発になった。そうして剣は初めて皆に挨拶をした。これでうちのクラスにもう1人のNo力者が生まれた瞬間だった。
そして今日は学校祭。軍事学校とは言え学校祭は普通に行うのだ。一般的な学校祭にあるであろう店が出ている。うちのクラスはお化け屋敷である。智樹がいるからみなが透明人間になれるというお化け屋敷向けの能力がある。そうしてお化け屋敷は大成功。全員が笑いながら過ごしていた。それはきっと戦闘に関係ない世界で暮らす一般の高校生のような笑顔だ。こんな笑顔が永遠に続いて欲しいと柄にもなく思ってしまった。ふふと誰にもみられずに笑う。つかの間の休息を皆が満喫している。
※
1週間後。
戦争というニュースで持ち切りになっていた。第三次世界大戦が始まるというニュースで………
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