第5話

※この物語はフィクションです。実在する団体、人物とは関係ありません








あの体育祭が終わってから数日が経ち、今俺達は教室にいる。

「さぁ。親善試合で選ばれた人間の発表だ。選ばれたものは今日の放課後、生徒会室へ。そこで説明を受けろ。」

たったの1枠。俺が入れるのだろうか。分からない。少しの沈黙の後、先生は口を開いた。

「影狼。お前だ。」

どうやら俺ではなかったようだ。悔しい。そんな単純な感情しか出てこない。もしあのタイマンで勝てていたら、なんていうもしもの世界戦を考えてしまう。しかし、そんなものは妄想でしかないのだ。

あれから数時間がすぎ、昼休みになった。一応購買にパンを買いに行き、適当なものを買って袋を開けた時

ピーンポーパーポーン

「1年A組風早鎧亜。職員室まで。」

校長のふざけた声で俺は呼び出しをくらった。そうしてすぐに職員室まで行ったが、校長は校長室にいるということを聞き、校長室に行った。2度ノックをして扉を開ける。そこには優雅にお茶を飲む校長がいた。とりあえず殴りたくなってきた。

「殴っていいですか?」

校長はこちらを向き、応戦体勢をとるが、本気で殴る気は無いので話を変える。

「なんで呼び出したんですか?」

校長は応戦体勢をやめ、口を開く。

「君に親善試合の補佐をやってもらいたい。」

あれから時間がたち、生徒会室にいた。生徒会室には1年生が太刀奪、影狼くん、俺、そして他には知らない人が3人、以前に顔合わせている白夜さんがいた。

「すいません。遅れました。」

少し遅くに来た、右腕に包帯が着いている人。知らない人3人は俺よりも身長が高く、ひとりが黒髪の男性。もう1人が青髪の女性だ。青髪の方は女性にしては結構背が高い方だと思う。最後は黒に白メッシュで顔の大半が隠れていて、見た目だけだと、男性か女性が区別できないような人だ。遅れてきた人は俺よりかは身長は低く、黒髪で、体格がとてもいい。

「集まったね。そこの無能くんと、包帯くんは今回のオペレーターだからよろしく。自己紹介して。」

俺以外にも、戦わない人がいたのか。

「俺は白鳥白夜。光能力。3年。」

白夜さんが手短に自己紹介をする。

「同じく3年。虎口夕闇。能力はルシファー。具体的には翼と闇の能力って感じ。」

黒髪の人が自己紹介をする。ルシファーといえば、堕天した天使だったはずだ。一応、神話級であったはずだ。

「2年。星見凛。能力は水。」

青髪の人は端的に自己紹介をする。

「同じく2年。東堂優。能力は身体強化。一応女。」

どうやら東堂先輩は女性のようだった。

「2年。佐藤影。影を消す能力。まぁ今回はオペレーターだからよろしく。」

包帯をつけている人が自己紹介をする。

「1年。太刀奪一。能力を奪う能力。」

少しざわついたが、影狼くんが自己紹介を始める。

「同じく1年。終界影狼。フェンリルです。」

影狼くんはさくっと自己紹介を終わらせた。

「同じく1年。風早鎧亜。無能力者です。まぁオペレーターなので能力は関係ないと思います。」

こうして、全員の自己紹介が終わった。

日本国立海風能力高等軍事学校。

私が通っている学校の名だ。長いと思う。そんなありきたりな言葉しか出てこない。そしてこの学校には特殊なルールがある。全校のたった6人に2つ名が着くことだ。そして私は今その2つ名のひとつ、兵士ジャックの称号を得た。1年にしてこの称号を持っていたものは一人もいなかったらしい。しかし何故私がこの称号を手に入れられたのか、以前聞いたことがある。

「我らが王よ。なぜ私に兵士の名をお与えになったのですか?」

皇帝キングは笑った。その笑みはとても無邪気で、それでいてとても残酷なそんな微笑みだった。

「あまりかしこまるな。兵士の名を与えたのは俺に似ていたからだ。」

王に似ていた?どこがだ。王と私は髪の色も違えば、身長も違う。何が似ていたというのだ。分からない。だけれどもう少し王のそばに居たいと思い始めた。

「なんだ。女帝クイーンいたのか。」

「その呼び方はやめてっていつも言ってるでしょ。貴方の妻みたいになるじゃない。」

女王は冗談交じりにそう言う。けれど彼女は心の底からそう呼ばれたくないと以前私に話してくれた。

「そういえば。切りジョーカーと、根元エースは?」

「彼らなら今校長と話をしてます。」

切り札とは3年序列1位2位が与えられる称号。その下に皇帝、女帝3年序列4位5位とくる。その後2年序列1位根元が来る。そうして少し特殊な兵士。これ称号だけは序列ではなく、皇帝からの指名。なぜ3年序列一位と2位が皇帝と女帝では無いのか。数ヶ月前まで私も不思議に思っていた。その時私はこの学校の歴史について調べた。それは皇帝が独裁を行った時、切り札や根元が止めるためだとか。

「じゃあ。兵士。ちょっとやり合わない?」

女帝からの誘いに私は乗る。私たちがいる皇室をお出てすぐのところにある運動部屋(?)に行く。ここの正式名称は別にあるのだがいかんせん長いためここを利用する人は運動部屋と呼んでいる。

女帝と数秒睨み合う。そうして女帝は大地を蹴り、走ってくる。女帝との稽古は基本、殴り合い。能力の行使は禁止。女帝が肉弾戦を得意とする能力のため、このようなルールになっている。

右からのジャブ、一旦下がり回避する。少しの距離を詰めてくる。顔を狙った本命の一撃。それを右腕で受け止める。衝撃を受け止められず、後ろに後退する。何とか体勢は保ったものの、右腕の痛みが引かない。相変わらず重いな。左腕を主軸に備えた攻撃を展開していく。非利き腕とは言っても、兵士になってから、彼女との稽古を何度もしていたため、左腕から出される攻撃の精度は高い。こちらが攻めているのを彼女が回避したり、受け流したりしている。少しずつ痛みが引いてきた。左で攻める。そうして回避した瞬間、右腕に全身全霊を込めて放つ。彼女は受け流そうとしていたが、無理だと判断し、受け止めた。

「やるじゃない。」

ムキになった女帝は先程の火力程度の勢いを何度も繰り出してくる。今はなんとかかわしているが当たった一溜りもない。

「やりすぎだ。」

ガシッと皇帝が女帝の腕を掴む。死ぬと思った。私は変な汗が体全体から流れていた。着替えあったかな。

「戻るぞ。」

皇帝が私と女帝を連れて、皇室へと行く。皇室には私より背の低い少年と少女が皇室のソファーに座っていた。その後ろの壁にもたれかかる高身長の少年がいた。

「親善試合。私たちでいいんだよね?」

少女の切りジョーカーが口を開く。少女は興味津々と言った顔だ。しかし対照的に少年は興味を示していない。

「ああ。ほかにいないしな。」

「じゃあ解散で。」

サクッと解散まで至っていた。解散すると帰る者と、皇室に残る者で別れていた。私は少し疲れていたので帰宅した。

「なあ皇帝よ。あの兵士強いのかよ。」

「少し昔話をしようか」

そうして私はゆっくりと口を開く。今からするのは兵士の昔のお話。彼がこの学校まで来る前の話。

1人の少年がいた。彼は親から捨てられ、1人でこの国を渡り歩いていた。時には盗みを働き、時には人をも殺した。少年は生きるために必死だったのだ。自らの身を守るため、今日を生き抜くためにただがむしゃらで過ごした。

そこから3年、少年はずっと同じ生活をした。ただ少年はその日ミスを犯した。今まで何度も行った盗み。走り去る時に足をくじいてしまったのだ。少年は精一杯を尽くした。けれど彼は捕まってしまった。捕まったと言っても警察ではない。私の家にだ。そうして家に兵士が養子としてきた。そうして彼は今に至る。

「待てじゃあ。皇帝と兵士に面識があったてことか?」

「いやない。俺はあいつにあったこともなかった。名家というのは少しややこしくてな。」

俺は自嘲気味に言う。名家が軽々と容姿を取ってしまうのはあまりよろしくないらしい。だから基本的に彼は日の目を見なかった。しかし、ここ数年で彼は別の家の養子になったという。

「彼の刃は護るためのものだ。」

「護ための刃か。」

そう彼は守るために刃を使ている。今も昔も。彼は変わらないのだ。今も昔も。彼はきっといい皇帝になるんだろうな。現皇帝は未来の皇帝に思いを馳せるのだった。

「おはよう兵士早いね。」

私が早めに皇室に行くと先に着いていた女帝がいた。

「お早うございます。女帝。」

「女帝はやめて。」

そう言われるけれども女帝の本名を知らずになんと呼ぼうか悩む。

「あーそういえば言ってなかったわね。七森明日香。それが私の名前よ。」

「では七森先輩。なぜこんな早くに?」

私は女帝に集合時間より早めにきている彼女に聞いてみる。女帝は私に七森と呼ばれたのか嬉しいのか少し頬が赤くなっていた。

「ゲフンゲフン。トレーニングと皇帝との対話よ。」

皇帝と話す機会は放課後と、ホームルーム前の集まりでしかない。女帝は皇帝と喋りたいのだろう。そのため皇室に彼女は早く来ていたのだろう

「じゃあ私でよければお話の相手しますよ?」

「じゃお願いね」

それから私は少し女帝との雑談を楽しんだ。そうこうしていると、根元が皇帝来ていた。

「やぁ女帝と兵士。おはようございます。」

その挨拶に私たちは「おはよう」と返し、根元も交えて雑談を再会した。

「学校には慣れたかい。」

根元は親戚の人のようなことを聞いてくる。それに私は「ぼちぼち」と返事をする。

「そういえば根元の能力はなんなんですか。」

「そうだね。少し手合わせしてみるかい。」

私は根元の提案に乗り、運動部屋へ移動する。

「武器を使っていいよ。」

そういい根元はゆみを構える。私も自身の武器である、3尺程度の西洋剣とも日本刀とも呼べない刃を取り出す。

「本気で生かしてもらいます。」

自身の体にある血を刃を持っている右手に集中させる。次第に左手が痺れてくるがお構い無しにワザを行使する。右手に血がある程度集まった瞬間、刃が姿を変える。太かった刀身は細く、刀身の先端は先程よりも鋭利尖っていく。

その先端を当てるように相手についていく。少しでも触れれば切り裂ける。シュッとした音がし、右手には手応えがある。しかし根元の肉体には攻撃が入っていない。しかし制服の袖が少し切り裂けていた。

「やっべ。ごめん。兵士くん。今日はここいらでやめていい?」

時計を確認すると集合時間ギリギリだったので、戦闘を切り上げて皇室に戻るのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る