第14話 警告

 平日の寺の参拝者というのは、大抵普段着だ。うちの寺は、供養というより観光目的でくる人が多い。


 が、最近は観光客に混じり黒スーツ姿の男たちがうろうろし始めた。ガイドブックを持っているわけでもないが、写真を取りまくる。しかし、その構図は明らかに人物写真。周辺の寺にも出没しているようで、気味が悪い。


「何かあったのかい?お宅の寺のこと随分聞かれたよ。」

 周囲からはそういわれた。寺として何か事件があったわけでもない。

「刑事じゃなさそうだから、観光客として相手しているけど。」

「さあ、物騒な事件も多いし、不法就労者なんかもいるから。」

 そう答えているが、絶対僕のことを調査しているに違いない。


「ちょっといいかな。君、南田天使君って知ってるかな?」

 いよいよ直接聞きに来た。いよいよか。僕は覚悟を決め手振り向いた。それは、予想に反して、よれよれのジャンバーに一眼レフを首から下げた男だった。

「あ、はい。」

 度肝を抜かれた僕は、すっかり思考が停止してしまった。その男は週刊誌の記者だった。

「気になる奴がいるからと、仲間に頼まれてね。時間もないから単刀直入に聞くんだけど、何を調べてるんだい。」

 僕はどこまで話していいものだか迷いながら天使の死について疑問を持っていることを話した。

「そう、君も単なる自殺だとは思ってないんだね。」

 僕は『も』といった彼の言葉を聞き逃さなかった。

「あなたこそどうなんです?」

 彼はその問いには答えなかった。

「僕はジャーリストだ。真実を伝えるだけ。それをみて正義か悪かを判断するのは読者さ。まあ、だからといって僕なりの正義はあるけどね。」


 僕は、彼が色々なバイトする中で、勘違いされて殺されたんじゃないかと話した。そして、供養にと預かっていた天使の写真を見せた。

「最近、誰かに何か言われなかった?」

 下川さんのことはしゃべれない。

「これは、僕の勘だが、友達の自殺というのは覆せないぜ。それでもというなら止めないが。ジャーナリストの俺がいうのもなんだが、真実を知ることが必ずしも幸せとは限らないぜ。おっと、僧侶に説法だったな。」

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