第11話 スパイ、ダシコ作戦

 カケコやウケコについては写真でおおよそ解ったが、ダシコは何のためにやってたんだろう。

「これはよく覚えてる。ここの社長がいい人で、主に務所帰りで仕事の無い連中を雇ってたんだ。そういうやつって刺青入ってたりするから、銭湯にもいけないだろ。だから、風呂まであったんだぜ。でも匂いが取れないんだよな。俺は自転車で通ってたから、よく警察に職質されたな。」

 会社の住所からたどって状況がわかった。どうやら、裏で大麻などの薬物を栽培してらしい。

 木を隠すなら森の中というが、臭いをかくすならより強烈な臭いということなのだろうか。


 しかし、そういう環境なら薬中にされていてもおかしくはなかっただろう。

「タバコは決まった銘柄しか吸わないから。それが粋ってもんだ。下川さんの受け売りだけどな。」

 なるほど。下川さんが事前に予防線を張っていたわけだ。となると、やはり知っていて天使を送り込んだと考えるほうが自然だ。


 こいつはお人よしの能天気だから、何も知らされてなかったんだろう。だから、周りも気付かなかった。おそらく彼が行なっていたであろう情報収集活動は他にも何人かいたのかもしれないが、互いに面識もなかったので気付いてない。天使がどれほど役にたっていたのかはわからないが、目立つ奴だけにカモフラージュにはなっただろう。


 もし、そうなら犯罪者組織に消された可能性もありうる。怪しいのは福太だが、当初、同窓会に行くつもりのなかった天使が、わざわざ二次会にまで出て、あの接待事件を嗅ぎまわっていたとは思えない。


 僕は、下川さんに会いに例の喫茶店にいった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る