第7話 職安
僕には当時の芸能界のことはよくわからない。そこで、僧侶仲間でそっちに詳しいやつに写真を見せた。
「面白い。じつに面白い。」
そういって、彼は撮影日順に並べ始めた。
「よくある芸能人とのツーショットだが、問題は日付だ。」
そういって、彼は解説を始めた。
「このお笑い芸人。この数日後に大麻所持で捕まっている。こっちの歌手は数ヵ月後に脱税で告発された。この三角帽の芸人。こっちは不倫発覚で引退に追い込まれた。芸人じゃないが、この子の後ろ、こいつはこの撮影日より少し前にひき逃げ事件を起こしている。なんでも、ブレーキを踏んだが加速したとかふざけたことを言っていたな。ほかにも胡散臭いやつらばかりだ。偶然なのかな。」
そうそう事件のあるところにバイトが重なるものだろうか。僕は天使に写真を見せた。
「喫茶店のマスターだよね。」
「さあ、霊は昼間は明るすぎて周りが良く見えないから。」
天使は写真にかぶさるように覗き込んだ。
「これ、下川さん。出向で職安にきてた。高卒の留年だから、仕事が決まらなくて、よくバイトを世話してもらったよ。個人的に調べたので、他の人には内緒ってよく言ってた。毎週、バイト代を受け取りに行くついでに、色々話を聞いてくれて、よくアドバイスしてくれた。芸人さんの趣味とか、よく行く店とか、友達とかの話をしたっけ。」
「バイト代の受け取りって、職安へか?」
「うん。下川さんから渡してもらってた。俗にいうマネジャーってやつじゃない。」
おいおい、そんな話聞いたこともないぞ。
「ピンハネでもされてたんじゃないか?」
「そうかな?一日4,5千円だったから文句ないけど。」
下川さんって何者なんだ?とても普通の職員とは思えない。坊主も住職になるまではなかなか休みがない。労働ともみなされないから、指導を受けることもない。それでも、数少ない休みを使って、僕は下川という人のことを調べた。
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