第3話 参考人
どこかで見た顔が映っていると思ったら、福太だった。
「参考人は、当日一緒にいましたね。」
「伯父の秘書をしていたもので、運転手としていました。」
「自殺された方は、あなたの同級生だったとかで。」
「はい。」
「それは、残念でしたね。で、その彼は上の階で同窓会をされていた。まちがいありませんか。」
「はい。」
「あなたは、その場にいましたか?」
「少しだけ顔をだしただけです。」
「その時、彼とは何か話しましたか?」
「世間話し程度はしたかもしれませんが、内容までは覚えていません。」
僕は嘘だと知っていた。そりゃ、飛び降りどっきり計画の首謀者だとは言えない。
「何か思いつめたような感じはありましたか?」
「いえ、同窓会を楽しんでいましたよ。目立ちたがりなところがあったので、ノリで飛び降りたのかもしれません。」
僕は今すぐにでも証人喚問に行って、知ってることをぶちまけたかったが、証拠がない。
「まあ、あの騒ぎでは迷惑しています。」
「そうでしょうか。騒ぎのお陰で十年間この事実が世間に公表されることがなかった。すでに、大曽根議員はお亡くなりになっておりますが、この写真が公開されたら少なからずその後の選挙等に影響が出たんじゃありませんか?」
「仮定の話ですから、わかりませんが、特に問題はないんじゃないでしょうか。」
「この後、この会社は放送事業でチャンネル枠を増やしています。自殺と接待を隠した後ろめたさがあったんじゃないですか?」
総務大臣がゆっくり出てきて
「本件によって、行政がゆがめられたという事実は確認できませんでした。」
と、型通りの発言をした。
和尚が帰ってきたので、以降のやり取りはわからなかったが、たいした内容ではなかったようだ。
「本日は、友人の供養の会がありますので午後からお暇を取らせていただきます。帰りは、いつも通り明日になります。」
天使の奴が死んでちょうど十年。再び注目されたのも何かの縁かもしれない。さすがに、あの時の店でというわけにはいかないので、やつの墓のある寺へと向かった。さすがに、他の宗派の寺にいくんだ。パッと見、坊主とはわからないようにするが、それでも互いに振る舞いや剃髪の具合でわかるもんだ。
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