第2話 国会中継
久々に国会中継を見た。例の写真が話題に上った。
「この写真の相手を利害関係者と知っていましたか。」
野党の追及だ。
「不徳の極みですが、当時は認識してませんでした。」
写真にいた役人の一人が答弁する。
「この時の支払いはどうされました。」
「えー、最初は割り勘という話でした。しかし、上の階からの飛び降り自殺があり、われわれは慌てて帰りました。その時は、まだ清算ができないということで、相手方が全額払ったと記憶しております。」
「後日請求がありましたか?」
「いえ、ありませんでした。」
「未払いのままですか?」
「先日、料金が確認できましたので、返却してございます。」
「この件が出なかったら払わずにいたということですね。」
「いえ、払う意思はあったのですが、当時は連絡も控えていまして、そうしているうちに失念してしまったということです。」
白いスーツを着た野党の女性議員が向きを変えた。
「大臣、こんな認識でいいんですか。」
年老いた議員がゆっくりと前に進む。
「当時の状況を鑑みれば、やむを得ないかなと思われますし、今回は払う意思があったということでおごりではなく借りていたということではないかという結論にいたったわけであります。それに、十年前のことでその間、請求もなかったことから、すでに時効という認識で今回は注意ということにいたしました。」
野党はなおも追及を続けた。
「それは、相手はおごったつもりですよ。だから請求なんかするわけないじゃないですか。その後、連絡はされたんですよね。」
「はい。翌日連絡したんですが、事故現場で会食していたことが知れるのはまずいということで、しばらく連絡を控えようとご提案されました。」
「みすみす、相手の戦略に乗ってるじゃないですか。ま、それはともかく自殺現場から逃げたんですよね。どうしてですか。」
「余計な詮索をされたくないという思いがありまして。」
「自殺現場にいたんですよ。捜査に協力するのがあたりまえじゃないんですか?それとも何か不都合があったんですか?認識としては、会食相手は利害関係になかったんですよね。」
「世間の方が、利害関係にあるかどうかということは知りませんので、その場は去ったほうがいいと判断したわけでございます。」
「世間の人が知らなくても、あなた方は知ってたんじゃないんですか?」
「なにせ古いことなので、認識があったかどうか思い出せんが、なかったから会食したんだろうと思います。」
「それなら、認識があったから逃げたんじゃないんですか?」
「そもそも、認識がないから会食に応じたのだろうと考えるわけでして。」
「始めは知らなくても、その場で解ったんじゃないんですか?」
「その場でのことは、記憶してございません。それに、必ずしも出席者全員の名前が伝えられるものでもありませんし。」
「利害関係が解ったら、中止しないんですか?」
「お店にも先方にもご迷惑をおかけしますから、いきなり中止はできまませんので、失礼にならないように割り勘にすると思います。」
「ろくに調べもせず、わかってもその場で断れない。しかも、後から追及されても、たまたま居た。だから、接待が無くならないんですよ。」
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