第17話 コーヒーを召し上がれ


本日は趣向を変えて、コーヒーなどはいかがでしょう?


はい。それでは、こちらの豆を挽きますので、少々お待ちを。


私は、この豆を挽く作業が大好きなのですよ。

ゴロゴロ心地好い音と共に、砕けるほどに豆の色味も散らばって、濃茶色の中に薄茶色がパラパラと煌めきます。

そして広がる、この香り……。



コーヒーも、チョコレートと同じようにポリフェノールを含むほか、リラックスや集中力を高める効果もあります。

お仕事の合間、ほっとひと息つきたいときに、適した飲み物ですよね。


ただし、カフェインの摂取量にはご注意ください。カフェインには中毒性もあり、摂りすぎると体に毒です。

コーヒーに含まれるカフェインは、種類にもよりますが1杯(150ml)あたり90㎎程度。カフェインの摂取量は健康な成人で一日あたり400㎎程度までとされていますので、多くても3~4杯にしておくのが良いでしょう。


ああ、もちろん、マグカップでお飲みになるなら、1杯量が多いのでもっと減らしてくださいね。

他にカフェインを含むもの、例えばエナジー・ドリンクや緑茶などを飲まれる場合も、合計量にお気をつけて。


しかしカフェインというのは、人によって耐性が異なります。

耐性が低い場合には少量でも摂り続けると、頭痛、倦怠感、不安や焦燥感などの症状が出てきます。

お心当たりがあれば、一週間ほどカフェインを断ってみてはいかがでしょう。


中毒の場合には離脱症状として、最初の数日間は症状が悪化することがあります。けれどその後、スッキリと体調が良くなってくるようなら、カフェインの摂り過ぎだったということ。普段お飲みになる量を調整してみてください。



さあ、できましたよ。コーヒーを召し上がれ。

貴女のお好みに合いそうな豆を選んでおりますが……。


そうですか。それは良かった。


美味しいコーヒーを自宅で淹れるのは、案外難しくはないのですよ。

ペーパードリップか、フレンチプレスを試してみられてはいかがでしょう?


ペーパードリップは、ペーパーフィルターがコーヒーの油分を吸着して雑味も取り除くので、スッキリとした味わいになります。

一人ぶんであれば、カップに直接ドリップすると簡単です。ドリッパーとフィルターがあれば始められますよ。

フィルターは消耗品になりますが、そのぶん、抽出後の豆をフィルターごと捨てられるので、片付けの手間は少なくて済みますね。


一方フレンチプレスは、細かな金網のフィルターですので、コーヒーの油分なども余すことなく抽出され、コーヒー豆本来の豊かな風味を楽しめます。

フィルター内蔵ですので、道具はプレス本体一つで完結です。

ドリップ式は、きちんとやろうと思うとお湯の注ぎ方が少々難しいものですが、こちらはテクニック不要。ポットに豆と熱湯を注いで蒸らすだけです。


夏には水出しのアイスコーヒーもオススメです。

必要なものは、ストレーナーのついた水出しコーヒー用のポットだけ。

コーヒー豆を入れて水を注ぎ、冷蔵庫で一晩寝かせれば、翌朝美味しいアイスコーヒーが出来上がっていますよ。

低温でじっくりと抽出されているので、まろやかな味わいになります。

同じ要領でアイスティーなどもできますが、コーヒー豆と茶葉では適したストレーナーの粗さが違うのでご注意ください。



抽出方法が決まったら、コーヒー豆を選びに行きましょう。

専門店なら、様々な種類の豆を、見た目や香りを比べながら選べます。


え、知識がないから、専門店に行くのが恥ずかしい?

いえいえ、そういう方こそ、プロの導きに身を委ねれば良いのですよ。

貴女の好みを伝えれば、たくさんの種類の中からピッタリのものを選んでくれるでしょう。


しっかりとした深煎りが良いか、さわやかな浅煎りが良いか。「酸味は苦手」「フルーティなものがいい」「チョコレートに合うもの」など、何でも良いのです。

好みもわからない、というのであれば、正直にそう話せば、お店のオススメをいくつか紹介してもらえるでしょう。

何種類ものコーヒー豆には、ひとつひとつにストーリーがあります。そのストーリーに耳を傾けながら、店員さんと一緒に選んでいく作業もまた、楽しいものですよ。


抽出方法や好みに合わせてその場で豆を挽いてもらえるのも、専門店で購入するメリットでしょう。

細挽きから粗挽きまで、それぞれに適した挽きかたがありますからね。

ただし、挽かずに豆のまま購入するほうが長持ちします。慣れてきたら、コーヒーミルを用意して、毎回ご自分で挽いてみるのも良いでしょう。

挽きたての豆で淹れたコーヒーは格別ですよ。


コーヒー豆は長持ちするものではありませんから、少量ずつ購入するのが良いでしょう。保存状態にもよりますが、豆のままでも長くて1か月、挽いたものなら2週間もすれば味が落ちていきます。

毎回ちょっとしか買わないというのは気が引けるかもしれませんが、店員さんもそのことはわかっていますので、怒ったりすることはありません。



日常の飲み物に少しだけこだわりを持って、専門店で選んで購入する――ちょっと素敵な、大人の嗜みだと思いませんか。


コーヒーが苦手なら、紅茶やハーブティー、お抹茶などはいかがでしょう?

個人で娯しむためならば、道具はそんなに必要ありません。お作法も気にする必要ありません。

正解や間違いなんて、考えなくて良いのです。

自分に合ったものを選んで、自分流にたのしむ。それが究極の奥義ですよ。



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