第6話 空の色は何色ですか?


今日はなんだか、浮かないお顔ですね。

「なんとなく疲れているだけ」?

ああ、ありますよね、そういうこと。


何があったわけでもないけれど、何かやるせない思いに駆られたり。

やる気がないわけじゃないのに、何故だか気分が乗らなかったり。

特に季節の変わり目なんかは、なんとなく憂鬱ゆううつになったりするものです。


でもね、それは貴女が悪いわけではありません。

誰にだって、波はあります。

上り調子の時もあれば、下り調子の時もある。

けれど必ず次の波はやって来ます。

だからそんなに、落ち込まないで。


波を下っているときは、下にばかり目が向いてしまいがちです。

それでは、新しい波を見逃してしまいますよ。

下を向いてばかりいると、気分も下がってしまいます。


そんな時こそ、顔を上げてみてください。

ほら、貴女の世界は、広いのですよ。


夕暮れの帰り道、足元に長い影が伸びる頃。

人々は電車やバスに揺られながら、手元の小さな世界しか見ていなくて。

あの美しい夕日に、いったいどれだけの人が気付いているのでしょう?


人間の視野は、他の動物に比べると狭いほうですが、そこまで狭くはないのです。

遠い空の広がりも、ちゃんと感じられるはずなのです。



顔を上げてごらんなさい。

今日の空は、何色でしたか?


空の色は、青に決まっているだろうって?

いいえ、そんなことはありません。

昨日の空と今日の空。

同じ空でも、少しずつ違っています。

深い青、淡い青、褪せた青、鮮やかな青……。薄雲たなびく空ならば、さらに味わい深いですね。

曇っているときは灰色がかって、日没が近づけば黄色味を帯びる。


それに、貴女の心のあり方次第で、空の色は違って見えるものです。

心が沈んでいるとき、晴れやかなとき。

空の青さが心に沁みる日もあれば、目を背けたくなる日もある。


澄みわたる青空だけが美しいのではありません。

曇り空の美しさに気づけたなら、それは貴女の心が美しい証かもしれませんね。



本日は「ブルーマロウ」のハーブティーなどいかがでしょう。

「ブルー」とその名に冠する通り、深く美しい青色が映えるよう、ガラスのティーカップにおぎいたしましょう。

さあ、どうぞ。


しかし、この青が続くのはほんの短い時間だけ。

見ていてください、だんだんと、夜のとばりが下りてきます。

ほら、落ち着いた紫に変わってきましたね。


ではもう一段階、色の変化をお楽しみください。

こちらのレモン果汁を、少しばかり加えていただけますか。

いかがです? 夕焼け空のような美しい鴇色ときいろでしょう。


ブルーマロウは、色が美しいだけでなく、のどにも優しいハーブですよ。

消炎効果や鎮静効果があり、のどの痛みやイガイガを抑えてくれます。

また気管支炎や、胃腸の調子を整えるのにも効果があるとされます。

季節の変わり目や風邪の初期症状など、不安定な体調を落ち着けてくれるでしょう。


目で楽しんで、飲んで体をいたわって。

明日は、綺麗な夕日が見られると良いですね。


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