第3話
朝の5時50分。
この時間帯は外に人がほとんどいない。
通りは暗くて、静かだ。
美羽はコンビニのバックヤードに入った。
「おはようございます。」
「おはようございます。」
バックヤードにはオーナーと店長と大石さん(妹)がいた。
バイトの服に着替えて、仕事が始まるまで椅子に座って待機する。
美羽は、仕事に関しては不器用でよく失敗してしまう。しかし、根は「真面目」な性格なのだった。
その証拠に毎回きちんと出勤している。
気が付いたら、アルバイトを始めて三週間が経っていた。
オーナーは何かに対してイライラしているのか、貧乏ゆすりをしたり、小声で何か呟いたりしている。
目の前にオーナーがいるが、美羽は安心していた。
いまは業務時間外なので怒られる心配は無い。
「よろしくお願いします。」
時間になり、バイトが始まった。
美羽の仕事は、まずは外掃除をするところから始まる。そのあと、ゴミ捨て、トイレ掃除をする。
コートを羽織って、外に出た。
美羽はコンビニの仕事の中で外掃除は気に入っていた。
お客さんのことを気にする必要もないし、美羽ひとりでやるので誰かに怒られる心配もない。
美羽は外掃除で特に好きな作業があった。それは、花の水替えだ。花の入ったバケツを店の外までもっていく。水を捨てて、ホースで新しい水を入れる。美羽はお花を見ていると優しい気持ちになる。なるべく丁寧にやるようにしている。
水替えが終わると、バケツを店内に持って入る。この時も注意するようにしている。
バケツに入った花の見栄えが良くなるように、ああでもない、こうでもない、と花をきれいに並べる。花に混じった「380円」とかかれている札もきれいに見えるように。
そもそもコンビニで花を買うお客さんがいるのかは不明だが、どうせやるなら綺麗に飾り付けたいところだ。
美羽にはもうひとつ、好きな時間がある。
それは、使用したホースをホースリールの中に戻す時間だ。ホースリールについている取っ手を持って回すと、ホースがくるくると収まっていく。取っ手は硬くて回していると腕が疲れてしまうのだが、美羽はこの時間が好きだった。なぜなら、綺麗な景色が見えるからだ。
朝日が、家の向こう側から少しだけ顔を覗かせている。それを見ていると疲れ取れるのだ。小さく光っているかわいい朝日は、引っ込み思案な子のようにも見える。
窓拭きを終える頃には、朝日がほとんど姿を現していた。
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