　２０１４年の熱狂の宮城スタジアムでの野外クラシックフェス「Sanctus Festival」から、もう５年は経とうとしていた。

　東日本大震災の被災地は、当事者東北人以外は日々遠ざかって行き、時代の変遷は無情さを感じ得ない。いや、何が正解か分からないが、安易に東日本大震災に名を借りた、首都圏主導のイベントが多々となるよりはましだったとは思う。

　この年月の中で、被災地にピアノの音を響かせる倶楽部は、２年前の２０１７年に発展的に終幕した。寄贈ピアノの調律と納品。寄付金での電子ピアノ購入配布。津波を被ったピアノの大損は無理として、軽損中損迄は復旧に尽力し、持ち主に無事返却した。

　被災地にピアノの音を響かせる倶楽部関わった、経済同友会の篤志達で、仙台の老舗ホテル：ホテルモンタレー仙台の解散式を行った。立食で質素ながらも微笑みのままに終えた。つい不謹慎で言えないが、また会おうは通じ合った。自然災害の不幸が、俺達の絆とは思いたくない。それでも言えるのは、築いた絆はきっとまた結び合う。道半ばだが、俺達は皆が望む復興へと再び歩む。。

　そして、ここ最近の出来事は、まあ桃園の春しかあるまい。

　まず合コン好きで縁戚の久遠寺遥が、三十路に入る前の２９才で結婚する事になった。遥は千代子のコネで、元勤めていた老舗文具店室伏屋に、普通よりややの成績でも入社したものの、抜群の喋りでだけで総合職に適応し、社内の信頼はそれはもうの課長代理の役職に迄上がったらしい。

　遥のこれは、もう軽薄且つキャリアウーマンの道を邁進かと思いきや。いざ結婚相手を紹介された相手は、何の事は無い高校の同級生の南部拓馬さんであった。

　普通にハンサムで、大人になっては更に洗練されたところがツボになったかだ。いや、遥曰く大人になってから。よりオモロくなったから求婚したらしい。そこか、遥の方からか。うちの大江家界隈は、女子が重要選択権の伝家の宝刀を下すので、苦笑するしかない。ああここは、拓馬さんに幾分同情した上でだ。

　そして来たる２０１９年１１月１６日に、東雲カテドラル教会での結婚式に向けて、東陽町の大人の女子の賑わいが。大江珈琲館の予約席の一角で日々開花する。

　その何れものSomething Fourで盛り上がる面子はと言うと。

　Something Old担当は、妻の大江千代子。自らの挙式の時に丹念に編み上げたヴェールを持ち寄る。縁戚にして老舗文具店室伏屋斡旋者としては去来するものもあるだろう。でも俺は、そんな縁起ものかと千代子に聞くも、だからあの時の結婚式の感動は忘れてるのどうなの。２時間の説教コースに入っては、私は自ら何に憤ってるのかしらで就寝につく。目を瞑った千代子に、そういうさっぱりした所も好きだと呟くと、翌日には元通りに元気になる。

　Something Blue担当は、指宿建生の妻の指宿莉菜さん。挙式に為に伸ばしている、遥の黒髪を編み込む為のマリンブルーの髪飾りを持ち寄る。これは知っている。建生が、何か皆の気持ちを貰いたいからと、ギターピックからサングラス迄を集めてはマリンブルーの溶剤と溶かしては、馴染みの工房に頼んでマリンブルーの髪飾り：ホワッツマリッジを制作したものだ。建生にしては、何故容姿が普通よりややの莉菜さんを。遥の合コンを経て選んだかは、うちのデザートの旨味を調理しきれるのは莉菜だけとの事だ。ごもっともだ。大江珈琲店の、季節のスイーツ作りの際には、よく相談に乗って貰ってる。

　Something New担当は、岡崎丈紘の妻の岡崎倫子さん。昔バレエ用品を一手に扱うヨハンソン・スーツに務めていた経緯も有り。自らデザインしたバレエシューズに倣ったものを、今回内製化したシルバーのアクティブダンサーヒールを贈るという、実に才媛だ。その才媛が。やたら言葉の少ない丈紘に嫁いだのにはまあ切なるものがある。ここも同じくして遥の合コンを経て出会うも、感触はさっぱりなまま、半年後のニューヨークのソーホーで互いにばったり買い付けで鉢会う。丈紘は、ああじゃあ。倫子さんは、これは運命ですよねと両腕を引いて踏み留めては、やっとの恋のきっかけから、今日に無事に至ってる。倫子さんは今も、マスターこんな酷い話は無いですよね。お昼の個別休憩でくだを巻かれるも、至って微笑む。むっつりな丈紘との距離感分かってるなで、お幸せにしかない。

　Something Borrowed担当は、母大江彩子さん。左の銀腕輪になる。結婚指輪と久遠寺家由来の真珠のネックレス等のジュエリーが、既に多いのでは。ここが、東陽町の大人の女子のついの話題になるが、彩子さんは頑として譲らない。俺は法事の時にどうしても見掛けるので、左の銀腕輪は何かあるのかと、ついに聞かざるは得なかった。雅匠だけはよく聞いておきなさいになる。大江家直血はやたら引きが強いので縁も障りもまま有りますと、彩子さんは４年前に震災関連事故から完全治癒してサポーターグローブの外れた右手を見せた。本来ならば雅匠が肌身離さずでしょうけど、司祭様曰く、雅匠は霊的耐性が備わってるから、着けていてもうっかり無くすだけのアドバイスを受けての今日らしい。そう遥は今は完治したように見えるけど喘息持ちだから、何かの拍子で身持ちを崩してはいけないわで、何としても身につけさせるらしい。まあ、それも有り得るかで、左の銀腕輪の件では困り顔になる遥には、いいとこ全部盛りのSomething Fourを。受け止めてこその結婚式だろうとは諭している。去来物は知らぬ方が過不足が生まれないが、怪力乱神を語らずと言うものだ。

　毎度毎度の日々、この東陽町には幸福が幾重にも交錯して、俺もつい笑顔になる。そして、アフター東日本大震災が未だなのだけど、どう主に感謝を伝えようか。どこか居た堪れない気持ちになるのは、復興に寄り添い過ぎなのかと立ち止まってしまう。

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　次は、娘の桜子の事になろうか。過去泣き虫、現在牽引役。現役高校生でこの八面六臂は、まあ、ロックな人生も必要な経緯もある、

　文世さんの伝手のピアノ教室に通い、親の俺が言うのも非常あれだが、確かに筋は良かった。このまま順調に音大系統に入るかと思っていたが、九段下の一貫校東海林規律学院中等部に入学したあたりから、人の為すべきを日々模索しては勉学に勤しんでいる。

　転機としては、友人に恵まれた事だろうか。東海林規律学院中等部入学式後の合同オリエンテーションで、桜子がスピーチでミヒャエル・エンデの『Momo』の思い丈を募ったら、共感したのが、長らくも軽音楽部所属の、現荒くれバンドのMOMO sessionsの親しき友人達だ。

　桜子は当初サイドギターだったが、ピアノの方が引き倒せる事でキーピアノに戻ってきた。ボーカルとリードギターは、桜子の幼馴染、中等部と高等部で生徒会長を歴任した偉業５人目の見た目クールも人徳者真野麻美さん。ドラムは、中等部合流組の黒髪ロングで華奢も、的確なフラムを織り交ぜる孤高な直江飛鳥さん。ベースは、中等部合流組で、唯一男子もややハンサムから遠いも絶賛生育中の迫水遊馬さん。

　MOMO sessionsは、バンド史で時折サポートメンバーも入るも、基本は結束の固いフォーピースバンド。この四人の揺るぎないセンスから、どうしてもバンドで打つかってしまう事はあるようだ。

　桜子の天衣無縫、唯我独尊の麻美さん、高みをやたらと目指す飛鳥さんに囲まれた日には。唯一男子メンバーの遊馬さんが、皆の音圧から俺はいるのか、どうにもいる。遊馬さんが、脱退報告書を８度差し出すも悉く不受理で撃沈の憂き目に。

　多分ここ迄さらりと書くと青春バンドかと思われてしまうが、出張ライブに学園祭で見せるレパートリーの独自解釈から、若いながらの唯一無二のバンドに早くからも至っている。もっともメンバー達は現在どこの高みにいるかは、セッションが必死過ぎて、そう、まるで分かっていない。

　どうしても参観ライブで顔をあわせるのが、大物シンガーソングライターにしてダリヤミュージック社長の猿滑春近だ。お気に入りのチェックのハンチング帽を目深に被るも、上背でバレバレだ。文化系の東海林規律学院のＯＢ達は上品なので、猿滑さんと視線が合っても笑みで返すのみだ。

　猿滑さんはスカウトに余念が無い人材で、俺達のトリオ天元もライブ後には盛り上がって、スタジオセッションに来ませんかと促す。俺達は、限りなく趣味ですからといつも通りに答えるのみ。

　ただ、猿滑さんの熱い視線はどうしてもMOMO sessionsらしい。俺が桜子の父親と知ると、ヤングデビューどうにかなりませんかね。毎度、桜子の盛り上がり過ぎるピアノが調子っぱずれでは、バンドとしての安定した体裁は如何ですよ。真っ先に俺が丁重にお断りしている。当たり前だ。デビューするからには確実な成果物が求められる。その時々のニュアンスで変わる楽曲群では、観客に迷惑を掛けるばかりだ。どこかで観客の立場にならないと、アマチュアでさえもどうかだ

　まあ、桜子を掻い摘むと。がむしゃらだが、情熱で確実に成長はしている。そんな一年前のある日。高等部の文化祭後に、桜子が彼氏待遇を連れてきた。同級生の彼氏井口隆文さんは知っている、ライバルバンドOur Synchronicityで、桜子と双璧を成す同じくキーピアノ担当のフェミニンな彼氏だ。その面差しは、いや待て過去に確かに見た事あるなでやっと腑に落ちた。桜子とは、幼少の頃からピアノの合同発表会ですっかり馴染みだった。

　その二人が、東海林規律学院の文化祭では、毎度父兄泣かせに、桜子はMOMO sessionsでREBECCAを引き倒し。隆文君はOur SynchronicityでBOOWYワールドオールでバラードで魅了する。それは毎度、東海林規律学院のホールがオールスタンディングにもなりもしよう。

　そうなればか、自然と二人盛り上がれば付き合いもしようか。いや、悩みはそこでは無かった。やはり心の奥底にあるのは、アフター東日本大震災で、自分達東京の高校生が、何か被災地に為に出来ないかが尽きぬ様だった。

　俺は、そうだな、まず恋人になってから、も千代子に察せられて袖を引かれた。ここで気を取り直して、焦って結果を出すのも如何だから、２０１１年の区切り１０年目の２０２１年に向けて長期プランを検討してはどうかだ。桜子と隆文君は、今の青春の滾る時期にと力む。俺は、何を持って全方位の復興なのかとは諭す。復興に向けて、勇気、心のケア、義援金の何れもが伴わないと何処かでギスギスするものになるよと諭した。後に千代子からは、雅匠らしくないと凄まれるも。長期的に、あの猿滑さんも巻き込んでみせるさ。結局フェスが好きなのよねと、かなりの苦笑をされる。数あるフェスで学んだ事は、同志が多い方がより楽しいに決まってる。

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　そして、今や盟友の一人も語らずにはいられない。

　ヤンガー成宮巡は、伝説の野外クラシックフェス「Sanctus Festival」後、２０１６年にドイツのマインツのSt. Mainz芸術大学のピアノ学科の特待生として晴れやかに海を渡った。

　そこには、見た目チャラいピアニスト、リヒャルト・アレキサンダーのゴリ押しがあったとしても、マインツでの推薦入試試験では軒並みＡ＋を獲得した。巡さん曰く、仮設住宅はピアノと勉強位しか無いから学力は、どうしてもについてくるらしい。

　ただSt. Mainz芸術大学は、日本での姉妹校提携はしていないので、ドイツ語オンリーを事前に申し送りされる。そして「Sanctus Festival」直後に壮行会計画が発動した。ドイツ留学準備を察した、伊達記念交響楽団の双子の伊達姉弟が、お屋敷のメイド及び寮生として巡さんを招き寄せる。そこにハウスキーパーの伊達家所縁宇和島路子さんが７カ国に精通している為、日常会話がドイツ語漬けで、伊達家家中も倣っては日々ドイツ語で標準会話となり、巡さんは１年でネイティブスピーカーに至った。俺はそのマルチ振りに幾分訝しんだが、巡さんは幼い頃から、世界的動画サイトは見慣れていたので、自己流で学んだ英語の延長戦ですと、理路整然に返された。ここで学力がやや凡才な桜子がしゃちこばるのだが、それは大江家超えて日本の７割の家庭が同じ反応するだろう。

　画して巡さんは、歴史都市マインツのSt. Mainz芸術大学のピアノ学科の学生として謳歌して行く。それでも、世界は忘れていなかった。成宮巡さんのど根性ピアノを聞きたいと。

　俺も勿論聞いてみたい。しかしリヒャルト・アレキサンダーが、態々マインツのホームグランドに招くという事は、今は保護し何ら色着けしたくないが心情だったらしい。成宮巡のど根性に、リヒャルト・アレキサンダーの硬くも色彩のある音色が染まって行くのは、どえらい話だ。ただ、銘器Swan Larkで導かれたハイキーの打鍵センスも、矯正されず残っては欲しい。

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　巡さんの二十代の始まりとして、「Vienna World Jänger Competition 2017」がどうしてもトピックに成らざる得なかった。

　何れのピアニストのコンクールは、力量・技量・伸び代・ゆとり・歴史のバランスを求められる。

　この「Vienna World Jänger Competition 2017」も寸分違わずで、成宮巡は確かに招待客を魅了したが、世界的ピアニストとしての技量としては振るわず、男女混成総合３位で終わる。配信を見ていたが、格式の雰囲気に悪くも馴染んでしまったのかは見受けられた。

　その速報時の各国の紙面の文化面はこうだ。留学国ドイツ紙はふざけるなウイーン。現地オーストリア紙は歴史は積み重ねるもの。ロンドン紙は伸び代が計り知れない。ニューヨーク紙はエキサイトナウ。日本はよくやった成宮巡。ふっつ、世界は真っ二つどころか多種多様だ。俺はまず憤りしかなかったので、web記事のブックマークとプリントアウトだけはしておいた。コラムニスト全て、成宮巡を知らなさ過ぎるとの証拠集めだ。

　だがそれも、明けてたった１日で、ど根性ピアニスト成宮巡自らに何もかも覆される。想像以上に。それは「Vienna World Jänger Competition 2017」終わりのセレブレーションの一コマだ。だから俺は言ってるんだ。いやそれは成宮巡のをよく知る全員もか。

　成宮巡はピアノドレスをかなぐり捨て、いつものステージ衣装、細身の黒リボンタイに真っ白な開襟シャツに七部丈パンツの、ただ動き易い見姿で登壇し、未だ麗しい少年姿でまず魅了した。

　成宮巡は平常心。椅子に腰を掛けると、深い深呼吸からの笑み。グランドピアノに大きく振りかぶる姿は、来る、の得体の知れない畏怖を与える。成宮巡の黒のローファーは大きく折れ曲がり、そして鍵盤は深く押し込まれて、共鳴するピアノの最初の音で招待客全てを奮い立たせた。予期せぬ暴風雨にで観客は背もたれに張り付く。

　その激しく華麗な演目は「Paganini - Caprice No.24」。元はヴァイオリン独奏曲も、成宮巡がセレクトした和音の重ねで、ただ前のめりに進み、観客が足が堪らず足でリズムで取るうちに、そうじゃないとばかりに、測らずもオールスタンディング。そして堪らず歓声を上げ、ホールは高熱に浮かされる。それはそうだろう。名だたるヴァイオリニストでもここ迄湧くか甚だしかない。配信で見切れたリヒャルト・アレキサンダーがまた、信じられないのUnglaublich! （ウングラォプリヒ）の口の動きから察すると、リハーサルから、きっと３００倍の出来には違いなかった。

　画して、成宮巡の「Paganini - Caprice No.24」のセレブレーションは「Vienna World Jänger Competition 」の歴史の中で一番の万雷の拍手を得ると、アナウンサーが何度も繰り返す。Historic Moments.の字幕がただ羅列する。歴史的瞬間は分かるが、それは度を超えている。ウィーン現地の観客は、何故自然に乗ってしまったかの悲喜交々。ドイツからの観客は、どうだどうだ、流石は我らの成宮巡だとばかりに意気揚々に拍手を送る。

　ちょっと一息ついた成宮巡は、グランドピアノに置かれたマインツのサッカークラブ：ＳＦＣマインツの白のスポーツマフラータオルで熱演の汗を拭う。そして立ち上がり、オベーションの数々に笑顔で挨拶をする。そして口角が上がる。成宮巡は、パッと白のスポーツマフラータオル見開いては、掲げた。そこに書かれた文字とは。

【きみの物語になりたい。】【I want to be your story. 】【Ich möchte deine Geschichte sein.】

　日本語、英語、ドイツ語の３ヶ国語が、縦に読み易く並ぶ。

　そして、マイクを通さずとも大きな声で叫ぶ。

「きみの物語になりたい。I want to be your story. Ich möchte deine Geschichte sein.皆さん、日本国の東日本大震災への御支援ありがとうございます。私達はまだまだ歩み続けます。どうか温かい目で見守って下さい」

　成宮巡の深い一礼から、後に歓喜の７分間と呼ばれる。

　そのスピーチは、コンクール司会者がドイツ語で訳すも。その前に、もはや言葉の壁を超えていた。

　皆の心情は概ねこうだ。東日本大震災の被災は、何故こうも、無常に今も胸に残るか。それでも前に、何歩でも歩もうとする被災者は巡礼者のそれであると。

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　それからの成宮巡は武者修行に羽ばたく。師匠のリヒャルト・アレキサンダーのヨーロッパツアー「We are the prayers.2018」の前座として、ヨーロッパ各地をアレキサンダーのお気に入りサイドカーに乗り、演奏しては、全３２公演隈なくかなりの爪痕を残す。

　どれも高評価とは、成宮巡を巡ってm批評が真っ二つになる筈なのにどういう事だ。それは、ネット翻訳記事を読み漁るとこうだ。前座成宮巡が闊達に前説しながら、その日のフィーリング２曲とホールのリクエスト１曲として、まずそこで観客を鷲掴みにする。普通なら、ここで単なるメインアクトならば、想定外を絶対嫌がる筈なのだが、リヒャルト・アレキサンダーは器がどうかしてるのか、その温まった座を、残らず芯の強い演奏へと導き、大成功に導く。

　特に最終日の７月７日のベルリン公演は、前売りチケットが１０分で完売しては世論が沸騰し、ホールから２万人収容のスタジアムへと会場変更を余儀なくされる。ドイツ公共放送での生中継もされるが、リヒャルト・アレキサンダーと成宮巡は、そんなプレッシャーはどこへやらで、熱狂ステージで見事に千秋楽を終える。

　その評判から、最終公演は緊急Blu-ray化の発売もされ、ここで成宮巡のど根性ピアノの片鱗を、より多くの方々が垣間見る事になる。当然Blu-ray「We are the prayers.2018 Tour Final」は、我が家の家宝になっては、居間のBlu-rayスタンドに飾られている。毎日見ないのかは、見慣れてこれが当たり前にのピアニストだろうと錯覚するので、毎土曜日の団欒でプレーンな状態で、見る程に力を頂く。