第26話 三沢さんは天然小悪魔

 うちら3人は、とりあえず近所を散策して、買い物に行った。三沢さんは、学校の往復以外は、まだこのへんをうろうろした事がないから、嬉しいと言って、うちらふたりに笑いながら話している。ご両親が、忙しくてなかなか家にいないのと、人見知りで、友達がなかなかできひんのもあって、出かけられなかったんやって。

 「三沢さん、気付かんかって、ごめんな。これからは、行きたいとこがあったら、ゆーてや。うちらは友達やねんから。」

 三沢さんは、花が咲いたような笑顔を、うちに向けた。

 「中村さん、ありがとうございます。でも、松山君に、悪いですわ。」

 「そんなん、俺もついて行くから、かまへんで。純子は、ちょっと方向音痴やから、三沢さんを迷わせへんか心配やし。」

 「松山君、本当に優しいんですね。ありがとうございます。では、また甘えさせて下さいね。」

 天使の笑顔に、丁寧な言葉遣い。長い髪も女の子らしくて、完璧や。のりが別に同性でないとあかんのじゃなかったら、うちとはタイプが違うけれど、三沢さんを好きになる可能性あるかも。うちは女の子が好きやし、場合によっては、三角関係になってまうかも…なんて考えてしもうた。いや、その場合、三沢さんがのりを好きやったら、うちはただのお邪魔虫になるかな。三沢さんは、うちが好きやった大泉さんとは全然違うタイプやし。うちが三沢さんを好きになった場合なら、三角関係が成立するけれど。


 三沢さんは、百貨店のファンシーショップで、アクセサリーや、小物を見ていた。可愛いリボンや花の髪飾りを見て、付けたりしてる。可愛いからなんでも似合うなあ。

 「ねぇ、中村さん、どれがいいと思いますか?」

 いくつかのバレッタを並べて、うちに聞いてきた。

 「んー、全部三沢さんに似合ってたから選ぶの難しいなあ。」

 「ありがとうございます。」

 三沢さんは、少し恥ずかしそうに俯いて、上目遣いで、うちを見た。三沢さん、男性から見たら、小悪魔に見えるかも。しかも、天然みたいやから、そのへんの男は、虜になるやろうな。うちは、三沢さんが可愛らしすぎて、少しぼぉっとしてしまった。

 「えっと…三沢さん、白がええんやないかな。その服に、似合う思うで。」

 三沢さんは、鏡を見ながら、白いバラのバレッタを付けてみた。それから嬉しそうにうなづいて、うちに振り返る。そして、また、抱きついてきた。

 「ありがとうございます。中村さん。これにしますね。」

 「…うん。三沢さん、可愛いわ。」

 三沢さんの甘い香りに、少しだけ、頭がぼぉっとした。


 三沢さんが、会計に行ってる間、目の前のお店で、のりとCDを見た。のりはファンシーショップが苦手やからと言って、他の店に行っていたんやけど。うちらが買物が終わる頃を見計らって戻ってきてくれた。

 「ええ時間に戻れてよかったで。純子とふたりで話できるし。」

 うちは赤くなって、「そんなんたいがいふたりやんか。」と言ったら、「そうやな。」と笑った。

 それから10分後、三沢さんがファンシーショップからでてきたから、ご飯を食べにファミレスに行き、うちと三沢さんが窓側で、のりは通路側に座った。うちがハンバーグ定食三沢さんはスパゲティセット、のりは肉じゃが定食を頼んでから、他愛のない話をした。

 それからすぐに、カラオケに行って、3人で歌いまくった。

 「中村さん、一緒に歌ってください。」

 三沢さんのリクエストは、意外にもアニメソングで、題名を見た瞬間、しばらくブルーな気分になった。その曲は、大泉さんと仲がええ時、一緒によく歌ったから。

 「中村さん…?どうかしましたか?」

 「ううん、なんでもない。じゃあ、歌おうかな。」

 うちはセンチな気持ちになりながら、三沢さんと一緒に歌った。この歌について知ってるのりは、複雑そうな顔をしながら、うちらの歌に、手拍子を入れてくれた。

 

 



 

 

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