第25話 三沢さんとの待ち合わせ

 日曜日。うちとのりは、駅前で三沢さんを待っていた。この間うちが保健室で寝ていた日に、様子を見に来てくれた三沢さん、のりと3人で、その後お昼のお弁当を食べに食堂に行って、いろいろ話した。うちの隣りに三沢さんが座って、のりはうちの目の前。その時三沢さんが、ここに来てもうすぐ2ヶ月になるのに、このへんの事がよくわからないと、淋しそうに言っていた。そういえば、まだ仲良しの子もおらんよな。うちはなるべくそばにいるけど彼氏という事になっているのりが優先になってしまうし。可愛らしすぎて妬みの対象になってる三沢さんと、友達にはなりにくいやろうなあ。なりたい子はおるやろうけど。…それを聞いたうちは、じゃあ、3人で今度会おうかと、思わずゆうてもいた。

 その時、三沢さんはめちゃ嬉しそうな顔をして、うちに抱きついてきた。

 「嬉しいですわ。ありがとうございます。」

 突然の出来事に、思わず赤くなる顔。なんて心臓に悪い攻撃や。三沢さんは、うちからなかなか離れない。まわりの男子達が、羨ましそうにうちを見てるみたいや。ただ、1人、三沢さんを睨んでる男子がいる。のり…。うちはふたりを見比べて、赤くなったり、青くなったり。そこに、野村君が来て、のりの横に座ってお弁当を広げる。

 「のり、今日はふたりだけやないみたいやから、邪魔すんで。」

 「あっ、ああ…。」

 のりの浮かない顔を見て、野村君はにんまり笑った。

 「のり、えらい可愛いライバルが現れたなあ。中村、とられるんやないか。…なんて、女の子同士やし、そんなわけないか。」

 のりの顔が引き攣る…。それから三沢さんを見たら…うちに抱きついたまま、その瞳は、のりを見ていた。


 放課後、うちとのりと三沢さんは、日曜日になにをするか話しをした。

 「道案内がてら買い物して、ご飯食べてから、カラオケなんかどうや。最後に、ゲーセンで、記念にプリクラ撮るとかもええなあ。」

 ふたりとも、それでいいと言ってくれた。

 嬉しそうな三沢さんと、複雑そうなのり。ちょっと困ったような気持ちになったけど、うちらは本当のカップルやないし、慣れへん転校生に親切なんは当たり前やから、のり、ごめんやで。

 

 三沢さんは、約束の時間の5分前に現れた。

 「遅くなって、ごめんなさい。」

 「ううん、まだ5分前やから余裕やで。」

 三沢さんは、フリルのついた白いワンピースを着て、まるでお人形さんみたいや。アイドルみたいで、めちゃ可愛い。通りかかる人のみんなの視線を感じる。

 のりは、うちと三沢さんを見て、ぽつりと言った。

 「こんなアイドルみたいな子を、ふたりも連れて歩いたら、野村にうらやましがられてしょうがないな。それぞれ似合うてるの着てるし。」

 うちもワンピースやねんけれど、三沢さんみたいなロングやない。赤いチェックのワンピースで、膝丈の裾に、フリルがついている。下には、白のペチコートを重ねて、スカートにボリュームをだしている。三沢さんがピンクハウス系で、うちは綾子が作ってくれたロリータ系の服や。ピンクハウス系は、これもまた、妹の綾子が時々ハンドメイドで作ってくるのを着たりする事はあるけどな。うちらのお小遣いで、買えるような服じゃないのに、三沢さんは、多分本物を着ている。もしかしてちょっとしたお嬢様なんかもしれんなあと思った。

 「そうやな。野村君も誘ったら、妬まれへんかったのにな。」

 うちはいつもの軽口で、笑いながら、のりに返事する。

 「松山君ったら、お上手ですのね。」

 三沢さんも笑っていた。

 この様子やと、今日の案内もスムーズにいきそうやな。うちはちょっとほっとして、改めてふたりを見た。

 今日はいい天気でよかった。空を見たら、秋晴れの雲がなんともいえず綺麗やった。

 

 

 

 


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る