第20話 これからについての話し合い

 図書館で待ち合わせの日、うちはちょっと遅刻してもうた。あんな告白をされた後で、どんな顔して会えばいいのか。いままで通りカモフラージュでなら、付き合えるけれど、男子なんか好きになった事がないのに、異性として付き合うなんて無理やわ。キャンセルしようと思ったけれど、昨日のまとめをしないと、宿題が終わらない。それに、もう少し綾子を誤魔化さな絶対のりが呪われる。逃げたくても逃げられへん状況なんやから、正面からぶつかって、突破するしかないわな。うちはそう決心して、準備して家をでた。


 その日のりは、いつもと変わらない様子でうちを待っていた。少し遅れたうちに、「俺もいま来たところやで」と、言って笑った。

 春からカモフラージュやってるけれど、のりはほんまにあっさりしてて優しいええ人や。いつも気を使ってくれる。異性として好きになれたら幸せかもしれんけど、友達にしか思われへん。いままで、同性が好きな同志と思っていたのに、ほんまに付き合ってくれなんて言われても…。そんな事を考えながら、図書館に入った。

 図書館では、普通に宿題をしていて、それ以外の会話はしなかった。のりも昨日の話はしない。昨日の事は、夢やったんかなと思ったくらいや。あっという間に、時間は過ぎた。


 「なあ、のり、昨日の話、びっくりやねんけど。」

 図書館の帰り道、うちは思い切って話だした。後になるほど何も言われへんようになりそうやから。

 「そうやろ。俺かて、自分でびっくりしたんやから。」

 「のりは、男子が好きなはずやのに、なんでなん?」

 「なんでと言われても…。俺にもわからへんねん。ただ、お前とおると、ほっとするっていう感じがする事に気づいたから。同性やから、異性やから…とかじゃなくて、純子やから、いつの間にか好きになってたんやと思う。」

 「だけど、うちは…。」

 長い黒髪の綺麗な女の子の姿がよぎる。うちは大泉さんがやっぱり好きなままやし、ほんまの彼女なんかになられへん。

 「わかってる。大泉さんの事が、まだ好きなんやろ。」

 「それやったら…。」

 のりはうちの言葉を遮った。

 「それでも考えて欲しいんや。俺が女の子を好きになるなんて、一時の気の迷いやと思って、めちゃ悩んだ。だけど、俺は純子が好きな気持ちから、逃がれられへんと気づいたから、告白してん。返事は、綾子ちゃんを誤魔化す必要がなくなった時でええから。」

 のりはきっぱり言い切った。こんなに真っ直ぐに正面から言われたら、うちも逃げられへん。ここに来るまでは、うちも正面からぶつかるつもりやったはずや。ぶつかり合って傷つくかもしれんけど、逃げ出す事はできひん。

 「うん、わかったわ。うち、期限が来るまでに、考えてみる。」

 「じゃあ。当分いままでのままで。」

 のりはうちに手を差し出した。近所を歩く時は手を繋ぐ。いつもしている事やのに。告白されたせいか、すごく照れくさい。うちはなんにも言えないままで、のりの手を取った。

 夕焼けに染まった雲が綺麗に見えた。


 

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