第9話 リアデートの当日
のりとリアデートした日は、朝早く起きてお弁当を作った。男の子を好きになった事もないうちは、当然、普通のデートってした事ないから、何したらええのか、さっぱりわからんかったから、家に帰った後、すぐに出かけて、そのたぐいの本をいろいろと立ち読みした。
何冊か読んだ後、【遊園地デートで、お弁当を作って、彼のハートを鷲掴み】と書いてるのを見つけた。別にそんな事は、どうでもええねんけど、周りから彼女らしく見てもらう必要がある。その他、服装とか、持ち物なんかも書いていたから、うちはその本を購入して帰った。
当日、待ち合わせの場所に早く着いていたのりは、うちを見てびっくりしていた。
本に書いていた通り、髪の毛を巻いてからセットした。服は持ち物で、写真と似たようなものを探して着てみた。フェミニンなピンクのリボンつきワンピース。
「なんか、いつもと雰囲気違うなあ。」
「なかなか可愛いやろ。」
「ああ、似合ってるで。」
のりは生地が水色の青いチェックのシャツと、ブルージーンズだった。やっぱり制服とは違う雰囲気やなあ。
のりはちょっと照れてたみたいや。こんな顔をしてるのを彼が見たら、妬くやろうな。でも、これは、あんたらの関係を守る為にしてる事やから。それだけやねんから、妬くのは勘弁してや。うちは心の中で、見た事もないのりの恋人に呟きながら、周りの人から仲良く見えるように、手を繋いで歩きだした。
遊園地に行ってから、メリーゴーランドに乗ったり、観覧車に乗って、ラブラブに見える写真をのりの携帯でいっぱい撮った。うちは携帯持ってへんから、後でのりがプリントアウトしてくれると言っていた。周りから見て完璧なカップルに見えたと思う。お弁当には、感動してくれた。おかずに何を入れてええのか迷ったうちは、作ったもんを全部お正月に使う重箱に入れたから豪華に見えたみたい。でも、結局食べきれず、「真夏じゃないから、大丈夫や」と言って、のりが全部持ち帰りしてくれる事になった。心の中で、《やばいで、本に書いてた通り心を鷲掴みしてしもうたかも…。》と思って、そんな訳ないやろっと笑いながら自分に突っ込んだ。
遊園地をでて、電車に乗り、いつもの帰り道を歩いた。今日は、遅くなったから、家まで送ってくれた。あちこちで街の灯りがちかちか輝いてる。
「純子、今日は弁当、ありがとうな。うまかったわ。」
「遊園地に招待してくれてんから、それくらいは、せんとな。送ってくれて、ありがとう。のり、明日は、彼とデートやろ。うちはここまで来たら、大丈夫やから、早よ帰って用意しいや。」
「ああ。」
のりは照れ臭そうに笑った。
「でも、ここまできてんから、ちゃんと送るわ。そうせんと、『僕達みたいに、女性に興味ない人ばかりじゃないんですよ。』なんて、あいつに、怒られるから。」
のりは、頭をかきながら、うちを最後まで送ってくれた。それからさっと走り去り、すぐに後姿が見えなくなった。
そのうち解消する関係やけど、いまはまだこのままでええかな…なんて、この時のうちは呑気にかまえていた。
星ひとつ見えない夜空に、グレーの雲が風に流されていった。
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