第8話 リアデートに誘ってきた理由
明日からゴールデンウィークの後半。学校の帰り道、のりの隣に並んで歩いてる。デートのふりする日をつくらなあかんな、どこに行った事にしようかと考えてたら、のりが話しかけてきた。
「純子。明日はなんか用事あるか?」
「別にないけど。」
「そうか。それやったら一緒に遊園地に行かへんか?」
突然のリアの誘いにびっくりして、一瞬、答えに詰まった。
「うちは、大丈夫やけど、彼はどうするんや。ほっといたらあかんやろ。」
「それが明日、幼馴染みとの用事ができたってゆーてきたんや。むこうは、その幼馴染みがカモフラージュの恋人してくれてるんやって。明日はそこの家族に呼ばれたから、行かなあかんて。それで、『いい機会だから、君がいつも世話になってる女の子に予定なかったら、一緒に遊園地にでも行ってきて下さい』って言われたんや。券も用意してくれてた。」
のりの恋人は、ほんまにようできてる人やなあ。不安にならへんのかな。まあ、うちが男でないから、安心してるのもあるんやろうけど。
「…のりは、その幼馴染みに妬いたりせえへんのか?」
のりは少し考えてから、答えた。
「ちょっと妬けるかも。でも、あいつに純子の話しても、全然妬けへんから、そんな事は言われへんしな。」
「なんで?付き合うてるんやから、素直にゆーたらええやん。」
「俺ばかり妬いてるなんて、みっともないやんか。」
のりはすねたように呟いた。
「わかったわ。じゃあ、明日はあんたの恋人が、妬くようなデートせんとあかんな。写真いっぱい撮って、あんたの恋人に、見せつけたろな。」
うちはにやにやしながら、のりの腕をはたいた。のりは赤い顔して、俯いた。この顔を彼氏に見せたりたいなあ。のりは男子やのに可愛いと思った。のりはボーイズラブの漫画の役割りでいうと、攻めやなくて受けやろうな。妄想にふけて、黙り込むうちを見て、のりが慌てて話しかける。
「おい、純子。いまなんか変な事考えてへんかったか。」
当たり。毎日一緒にいるだけの事はあるみたいや。
「さすがやな。明日は、どんな写真を撮るか考えてたんや。」
本当は受けと攻めについて想像してたんやけど、それは言われへんから、誤魔化した。
「きっとあいつは、女の子には、妬かへんと思うけどな。」
「じゃあ、野村君に協力してもらって、ベタベタしてる写真撮ってみたらどうや。」
のりは顔をひきつらせた。
「そんなんしたら、あいつに何されるかわからんやろ。怖い事言わんといてくれ。」
野村君の事なら、怒るんか。めちゃ仲良しやもんな。もしも野村君と三角関係なら…。
「おいっ、純子。また変な事、考えてるやろう。」
うちはにっこり笑いながら、「なんでもないで」と答えた。それにしても、むこうにもカモフラージュの恋人がいるなんて、意外やったなあ。幼馴染みという女の子は、彼が同性を好きな事を知った時、どう思ったんかな。むこうのカモフラージュの理由が、うちらと同じやったりしたら、びっくりやけど。
空を見上げたら、紫がかったグラデーションが、美しかった。のりとうちは、それを一緒に見ながら、帰り道を歩いた。
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