第5話 純子、憲武の彼女として親友と会う

 次の日の朝、うちは松山君と昨日会った公園で待ち合わせした。野村君とお昼に会うから、ふたりの付き合うきっかけとか、ちょっとした事を決めとかなあかんから。

 「ほんまに切迫詰まってたんやな。まさか約束がこんなに早かったなんて、思わんかったわ。」

 あの後、夕暮れの公園で、野村君との約束が明日と聞いた時は、びっくりした。その事でどうしようか悩んでた時に、うちらの声が聞こえてきたんやと言ってた。

 「悪いな。今日、なんか用事あったんならそれ終わってからでもええで。」

 本当なら今日は、大泉さんと会っていたはずやけど、昨日の事でそれはなくなったから、うちの予定表は白紙や。

 「大丈夫やで。それに、遅い時間になったら、のりが彼に会いにいかれへんようになるやろ。」

 「ありがとう。あいつに純子に世話になった事、ちゃんと伝えるから。」

 とりあえず、お互いで決めた呼び名が、自然にでてくるようにする為に、誰もいない所でも、呼び合う事にした。

 付き合うきっかけは、のりがうちがみんなに親切なのを見て、好きになり、猛アタックを繰り返して、うちもだんだん好きになったという事になった。その他、いつから付き合いだしたか、休みの日の予定とか、デートで行った場所とか、必要な細かい事を話し合って、野村君との待ち合わせ場所に向かった。


 野村君との待ち合わせは、ファミリーレストランやった。ランチの時間だから、それなりに混んでいる。

 「野村は…。」

 のりが、奥の席に座る野村君の後姿を見つけた。窓際は、うちらの為に、開けといてくれてるみたいや。

 うちとのりは、お互いを見て、うなづいた。それから手を繋いでから、野村君に声をかけた。


 「ひろ、お待たせ。」

 のりの声に、野村君が振り返る。

 「おっ、のり、今日はデートの邪魔して、ごめんやで。彼女さんも初めまして…」

 野村君が、びっくりてうちを見る。

 「中村、お前がのりの彼女かっ!」

 野村君は、口をパクパクさせていた。

 「野村君、のりの彼女としては、初めましてやなあ。」

 まさか中学生の時から知ってたうちが、友達の彼女になってるなんて、思ってなかったやろう。しばらくは、そこに立っていた。

 「あっ、悪い。びっくりして、気付かんかったわ。立ったままやったら疲れるやろうし、奥の席に座って。」

 野村君がうちとのりを促す。

 「ふたりに聞きたい事は、山ほどあるけど、注文してからにするわ。」

 うちとのりは、メニューを見て、打ち合わせ通り、お互いの好きな物を頼んで、分け合う事にした。怪しまれへんように、仲がええとこ見せとかなあかんからな。

 「ドリンクバー、うち行くけど、のりはいつもと一緒のもんでええか?」

 「ありがとう。頼むわ。」

 「野村君は、何がええかな?」

 「じゃあ、オレは、アールグレイティお願いするわ。中村、使うて悪いな。」

 うちがドリンクバーに行く時に、のりは、野村君にからかわれて、しどろもどろになっていた。うちらの嘘に、騙されてくれたみたいや。でも、途中でへんやと思われたらあかんから、気をつけなあかんな。

 うちは、3人分のドリンクを持って、席に戻った。窓の外には、沢山の桜の花びらが、風に吹かれて、舞っていた。

 






 

 

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