第31話 今後の作戦
夕飯はクリームシチューだった。
自分の家に帰ったらあったかい食事が用意されてるってやっぱり不思議でこそばゆい。
おかえりなさいと飛びついてくるルドルフと、お疲れさまですと手荷物を受け取ってくれるキューピッドの存在に、胸の辺りがほわっとあったかくなった。
こたつに入り食事をすませ、ダッシャーが持ち帰ったカップケーキを食べながら今後について話しをする。
「ひとまずダンサーのことは俺がどうにかするとして、先に他のトナカイを探すべきだと思うんだが、どう思う?」
「賛成だ」と、ダッシャーがいの一番に同意した。
「大丈夫ですか?」
キューピッドは不安そうな顔をする。俺はここぞとばかりに胸を張って答えた。
「大丈夫。ダンサーだって話せば分かってくれるさ。キューピッドは心配しないで、俺に任せなさい」
「でも……」
「そうだよ、だいじょーぶ」
俺の隣に座ってカップケーキにがっついていたルドルフもなぜか胸を張る。
「サンタだもん! 絶対だんちゃんが帰りたくなるように、お話してくれるよ」
続けてダッシャーも口を開く。
「私は、ダンサーはほっといたって、勝手にくっついてくると思うんだけどな」
「そう、でしょうか?」
脳天気な二人の発言に、キューピッドはますます表情を曇らせた。
そんな表情を払拭させたくて、俺は言った。
「まあ、一筋縄ではいかないだろうけど、それでも俺がなんとかするよ。だから安心して他の姉妹を探そう。時間もあまりないし、みんなで帰らなきゃいけないんだろ」
まだ見つかってない姉妹は五人もいるのだ。
十二月が刻一刻と迫る中、のんびりしている暇はないはず。
キューピッドはしばらく黙っていたが、やがて顔をあげて微笑んだ。
「そうですね。みんなでサンタお父様の待つ家に帰らなきゃいけません」
「よし、決まりだな。それじゃあ、ルドルフ、また頼むぞ。次の姉妹の匂いを辿ってくれ」
「あいあいさー。えーっとねー」
「いや、さすがに今はいいから。もう遅いし寒いし疲れて眠いし。ゆっくりさせてくれ」
こたつに横になると満腹なせいもあって一気に眠気が押し寄せた。
「サンター? 寝ちゃうの? じゃあ、わたしも一緒に寝るー」
「おい、ルドルフ、寝るな。お前、口じゅうクリームだらけだし、歯磨きしないと虫歯になるぞ……」
とかなんとか、ふにゃふにゃ言いつつもだめだ。意識を保ってられん。
ダッシャーが「あーあー」だの「ルドー」だの言っているが、もはやうわごとにしか聞こえない。
でもこんな時、ルドルフを優しく起こして口を拭いてやり、小言を言いながら風呂へ導くはずの柔らかな声がしなかった。
声の主。
キューピッドはなぜか、ひどく思い詰めた顔をしていた。
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