第12話「悪魔勇者」

スカーレットは地面に木の枝を使って魔法陣を描き出した。

それをレイチェルは首を傾げながらも眺めている。


エサなら山ほどある。出て来いよ悪魔共」


人を増やす。今はまだ人間達の魂が残っているとスカーレットは

告げた。人手をさらに増やし、この国を目の敵にするであろう者たちへの

牽制として竜だけでなく悪魔も数人揃える。

かなりの魂だ。数が多ければ多いほど、上等な悪魔が現れるだろう。


「こんな大量の料理を用意されては出ていくしかないでしょう」


三体の悪魔だった。そのうちの二体は明らかに格が違う。

赤、青、緑、白、黒…その色に準えて悪魔の中でも最も古く強い力を持つ

五体の悪魔を開闢の悪魔なんて呼ばれたりしている。


「やだなぁ、この二人と並んで立つの」


悪魔たちは名前が無い。というよりあるのだが発音が出来ない特殊な

言葉を使うのだ。だから名前は召喚した者が大抵は付ける。


「して、貴方が私たちを…えぇ、えぇ良いですとも。新たな魔王様に

仕えることは至上の喜びですので!」

「いや、仕えるべき相手は俺じゃない。魔王ではなく、お前たちは勇者に

仕えるんだ」


スカーレットはボーっとしていたレイチェルを指さす。ハッと我に返った

レイチェルは目を丸くしてフリーズしたという。

同じく悪魔たちもフリーズしていたらしい。数分もしてスカーレットが

その考えに至ったわけを悪魔たちに話した。

レイチェルはそれぞれジェラート、ガレット、スフレと名付けた。

ジェラートとガレットはそれぞれ黒と白の悪魔。

スフレは彼らより階級は一つ下だ。


「…何だか美味しそうな名前だな」

「同じ種族だし、関連性が欲しかった」


なんて会話をした。


「ちょっと、スカーレット!!!」


小さな少女、羽が生えている。妖精族だ。お転婆な印象を受ける彼女と

スカーレットは知り合いらしい。

名前はデルタという。


「約束事、忘れてたでしょ?忘れてたわよね!?」

「やくそく?」


デルタとスカーレットの間でスカーレットが魔王になったらデルタに

仕える悪魔を召喚してやると言うことになっていたらしい。

それを思い出したスカーレットは不本意ながらもう一度悪魔を召喚する。

今度は彼自身の魔力を使っての召喚だ。

長い緑色の髪をした女性悪魔にスカーレットは名前を付けた。


「じゃあラムダ、悪いがデルタに仕えてくれ。世話が焼けるだろうが」

「はい、承知いたしましたスカーレット様」

「やったァァ!!じゃあじゃあラムダ、これからお出かけね!」


という天真爛漫な言動にラムダは笑顔でこたえる。彼女は少し振り返り手を

振ってから再びデルタの隣に並んで歩く。


「さてと、こっちも動くとするかな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る