第10話「半人魔王」

本軍、その拠点の上空に見られたのは人影。白髪にワインを沸騰させる

赤紫色の眼は遠くからでも確認できた。


「なんだ…人間か?」


下降してきた男は本軍、その拠点の上空に見られたのは人影。白髪にワインを

沸騰させる赤紫色の眼は遠くからでも確認できた。


「なんだ…人間か?」


下降してきた男が投げたものは血の入った玉。男の持っている剣が玉を貫き

破壊する。零れた液体は枝分かれして騎士たちの心臓を的確に貫いてしまった。

何処かに血がある限り、幾つにも枝分かれし続ける。


「こ、これは…貴様か!この儂を誰だと思っている!?ファムリス王だぞよ!?」

「あぁ、丁度良かった」


スカーレットは今までにないほど嬉しそうな顔をした。純真無垢、無邪気な笑顔。

だからこそファムリス王は身震いした。


「国王を探して居たんだ。こっちも死人が出ていたんだよ」


スカーレットがゆっくりと歩きだした。


「は、はは…!魔物が幾ら死んだところで構わぬ―ッグゲェ!!」


スカーレットは容赦なく殴り付けた。馬乗りになったスカーレットは上から

何度もパンチを落とす。


「こっちは勇者を守ってきたんだよ。聞いてみたら勇者を昏睡状態にしたんだって?

これ知ったら勇者様はアンタを守ってくれないかもなぁ?」


今まで溜まっていた鬱憤を彼は晴らそうとしているのだ。ファムリス王の眼に映る

男の笑みは邪悪な魔王の笑顔であった。

止めとして彼は剣を突き刺した。


「終わったか…」


誰かが魔王になると、その仲間として繋がりを持つ者たちにも力は与えられる。

スカーレットは意識を手放した。


『よく、頑張りましたね』


その声は母の声であった。死んだのではない、スカーレットの記憶に残っている

精神体であった。

風に吹かれてその姿は消えてしまった。



別の場所。ギルド本部が存在するイドラ王国。

そしてギルド本部。

ユウキとセイマは向かい合って座っていた。ユウキの隣には黒いドレスを着た

女性がいた。コリーという名前で副ギルドマスターである。


「え?別の国で生活するの?」

「はい。僕にはまだやるべきことがあると思ったので」


セイマとユウキの間を漂う空気は重い。とてもじゃないが双子の兄弟が

放つ空気ではない。


「うん分かった。でもたまにはこっちにも顔を出してよ。双子なんだからさ」

「分かってるよ。たまには顔を出すつもりだよ」



戦後処理に勤しむグランディア連邦国と同盟を結んでいる国々は

ボランティアとして幾人か人手を向かわせてくれていた。

そのため処理はすぐに終わった。スカーレットは目を覚まし、レイチェルの

目覚めを待つ。


「スカーレットさん、この方がどうしてもレイチェル様に御会いしたいと」


シュカが連れて来た男はレイチェルに似ていた。似ている男であった。

背が高い。男はジーザス・ハートと名乗った。


「ハート…」

「レイチェル様の…お兄様、ですか?」


シュカの質問に対してジーザスは首を横に振る。

弟?従兄?違う。彼はレイチェルの父親である。

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