第7話「太陽勇者」
倒れかけた巨神。
動きは止まったはずなのに、ヘカトンケイルの眼は赤く光っている。
二人を地面に下ろし上を見上げる。
「見境なく暴れてるよ…さっきまでとは全然違う!」
「自分で暴れてるんじゃない。暴れさせられているんだ」
第三者の介入。
飛び出そうとするセイマをレイチェルは引き留めた。
「あれ見て。胸の鉱石は完全に壊れてるんだ。だけど動いている。きっと
弱点が消えてるんだ!」
「じゃあどうやって倒すのですか?」
再び暴れる巨神に目を向ける。そのあとにクレアに目を向けるレイチェルとセイマ。
クレアはじっと巨神を見据え、やがて口を開いた。
「別の者の魔力を感じる。だが倒せないわけではない」
「倒す方法があるの?」
「あるさ。君にも協力してもらうよ、レイチェル」
レイチェルとクレア。巨神ヘカトンケイルを挟んで向かい合うように立つ。
ヘカトンケイルの意識は全てセイマに向けられている。
『聞こえるかい?これから使うのは古代魔法:星の太陽を使う』
クレアもうまく発動できるか分からない魔法。だからレイチェルと二人で
放つということになった。魔力量が少ないセイマは準備の時間稼ぎを
担当する。
『セイマ君も聞こえるかな。あと1分、稼げるかい?』
「大丈夫ですよ。余裕ありますからね」
1分は短いようで長く、長いようで短い。その時間を稼ぎ切らなければ
自分諸共、目の前の巨人に潰されて死ぬ。
―断割脚!
巨大で頑丈な拳と細くも強靭な脚がぶつかる。その競り合いに脚が勝ち、拳は
砕けた。だが次の拳が来た。それを跳躍して躱す。そろそろ1分。
セイマは空中で空気を蹴り、距離を取る。セイマにばかり集中していた
ヘカトンケイルもやっと気が付く。
異様な暑さを感じているセイマは額から流れる汗を拭う。
「古き時代より大地を照らす、原初の星々の力を此処に―!!」
―古代魔法:星 “
レイチェルは剣を振り下ろし、クレアは細い腕を力強く振り下ろす。
太陽のような熱を持つ球体はヘカトンケイルの体に向かって落下する。
太陽が落っこちて来た、そう言うに相応しい光景と熱。
「今回はありがとうございました。レイチェルさん、クレアさん」
セイマは深々と頭を下げた。
それぞれ別の道を進むことになる。帰る場所が違うからだ。
別れ際にセイマはレイチェルに声を掛けた。
「何かあれば、いつでも連絡をください。僕でよければ力になります」
「ありがとうセイマ。セイマもいつでもこっちに来てね」
セイマと改めて別れた。その去り際、どうにも彼が悲しそうに見えたのは
気のせいなのだろうか?
国に戻ってきたレイチェルは辺りを見回した。夕食、それなのに
スカーレットがいない。
「スカーレットさんは出かけているんです。友だちに呼ばれたから、と」
「そっか。じゃあしばらく戻ってこれないのかな…。まぁ仕方ないか」
その間に再び大きな事件は起こる。
そう予見していたのはクレア・シャーウッドである。
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