第6話「巨神勇者」
「先生って何歳なんですか」
子どもが教師に聞きがちな質問。素直に答える先生もいれば、アイドルのように
「永遠の18歳」なんて答える先生もいる。
この教師は
「40だよ。もうすぐね」
と答えたのだ。だが見た目は十代後半から二十代前半程度。
若作りする人間だっているが若過ぎるように思えた。
「あれ?三つ編みにしないんですか?似合ってたのに」
セイマはレイチェルを見る。昨日は長い髪を一つの三つ編みで
まとめていたのに今日はポニーテールでまとめている。
それを聞くとレイチェルは気恥ずかしそうに
「一人で三つ編みするのって時間かかるし、難しいんだよ…私が
不器用過ぎて」
と答えた。
「なら僕が結びましょうか?僕、こう見えても器用なんですよ」
紐をほどくと長い髪がふわりと下に降りた。セイマは慣れた手つきで
髪を編み込んでいく。数分で結び終えてしまった。
それから下の階で朝食を取った。
「巨神ヘカトンケイルの討伐をすると言っていたね」
「はい」
「ヘカトンケイルが目覚める前日は魔獣が息をひそめ始める。魔素の流れも
上へ上へ流れていくという。明日だ…明日、ヘカトンケイルは目を覚ます」
クレアは目を細める。カップの中の水面が揺れた。
「私も協力しても良いかな」
勿論だ、協力してほしいとレイチェルは言った。巨大な魔獣との戦い。
こちらは小さい者が三人。油断することは全く出来ない。
古代魔法:星…それがジーザスが最も得意としていた古代魔法であったらしい。
だからレイチェルだって使えるはずだという。
「最近は多いな。封印されていた魔獣の封印が解けることが…勇者が
現れたことも大きく関係しているのかもしれない」
勇者が現れることは新たな魔王が誕生することと同様に数百年に一度であると
言われている。そして勇者が新たに現れると言う事は必然的に新たな魔王も
生まれることを意味する。
「随分と魔力が低いね君は…どうも極端に感じるのだが」
クレアはセイマのほうを見た。
「僕もユウキもこんな感じですよ。身体能力ばかり発達してしまったらしくて」
「ふむ。そうだったのか。魔力が増えない代わりにドラゴンを素手で倒せるだけの
身体能力を得たと…」
「ドラゴンを素手で!!?」
レイチェルは目を丸くした。割と最近の話だ。ドラゴン退治に乗り出た
聖騎士団とギルド。二つは共同で退治した。そこでドラゴンにとどめを刺したのは
セイマの双子の兄ユウキ。
「あの兄にこの弟あり…か」
クレアは小声で呟いた。
翌日、早朝に彼らはヘカトンケイルに勝負を仕掛ける。
その巨体を見て改めて大きいと実感する。
「これが…古の巨神ヘカトンケイル。討伐に成功した者はたった一人…」
クレアは誰にも聞こえないような小さな声で呟く。
「ヘカトンケイルの弱点は胸に埋まっている魔鉱石だ」
「それは分かったけど、ちょっと…高過ぎじゃない!?」
セイマは軽くストレッチした後、両膝を曲げる。そして―
地面が砕ける。魔力を利用した技術ではない。闘気と呼ばれるものを
使っている。
―
その脚自体が刀であり、魔鉱石は容易く二つに割れた。確認してからセイマは
降りて来た。
「倒れてくる。離れましょう二人とも」
「え―」
レイチェルの右腕とクレアの左腕を掴み、セイマは全力疾走する。
女性二人を両脇に抱えての全力疾走。彼の力がそれだけで分かる。
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