第3話 すがりつく

 結局、耕太郎が身体の変化に慣れることはなかった。夏が過ぎ、秋の新人戦では、耕太郎たちは引退したOBに代わって主力になった。結果は散々なものになった。明らかに耕太郎が足を引っ張っていた。

 顧問はそれ以来腫れ物に触るように表面では耕太郎を扱った。たまたま後輩と耕太郎の噂話をしながら舌打ちをしているのを見かけた。裏では自分が邪魔ものにされていると知ってしまった。

 いたたまれなくなり、中二の終わりにバレー部を退部した。引き留められたら体調を理由にしようと思っていた。しかし、理由を問うこともなく、顧問は退部届を受理した。

 「この経験は人生で役に立つ」的なことを言われた気もするが正確に覚えていない。

 ただ分かったのは、「スポーツという美名の下に暴君でいられる大人」が存在することだけだ。当然バスケ部の顧問も声をかけてはこなかった。

 十四歳にして大きな挫折をした。一年くらい憂鬱であった。そして高校に入るころから、「自分はスカウトされてバレーを始めたのであり、自分にとってのバレー部は夢でも目標でもない」と自分に言い聞かせた。

 スポーツを止めて身を持ち崩す生徒が何人かいた。ヤンキーになったり、不登校になる者もいた。暴君たちはそんな人間に手を差し伸べることはなかった。もちろん、そんな奴らは極端なのであるが、目的意識がもてず、ダラダラと日々と過ごす連中が大半だ。耕太郎はそんな同世代を見ていて、「自分もああなるのか」と恐怖を抱いた。

 なんとなく目的意識もないまま勉強に力を注ぎ始めた。そのおかげでまあまあの高校に入れた。

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