第6章 ニュージーランド四方山話 第3話
オークランドから南へ走ること3時間で、目指すタウポ湖に到着したのは昼少し前だった。午後からガイド付きのボートフィッシングの予約を入れてあるとのことで、ガイドの自宅兼オフィス前での合流となった。
午後からの予約ではあったが、以前からジョージの知り合いとのことで、昼食も船の上でということにして、早々に湖面へと出かけた。
船は、8人乗りで、ここではフライフィッシングでレインボートラウトとブラウントラウトを狙うとのことだった。
松山は、日本でもフライフィッシングの経験があったが、その時はドライフライでの釣りだった。ここでは、ウエットフライを使っていて、ラインもタイプⅣという沈む速度の速い重いラインを使っていた。
フライは、魚卵を模したもので、日本では見たことがないものだったが、イクラでの餌釣りを経験していた松山にとっては、イクラの毛鉤という印象で面白かった。
ポイントに到着するとアンカーを投入し、船を固定したが、水深は約30mであった。
一人一本の竿を借り受け、イクラの毛鉤をポイントに送り込めば、あとは魚任せだ。
投入後、最初に当たりがあったのは、松山の竿だった。ラインがわずかずつであるが出ていく。あわせのタイミングなど分かりもしないが、このあたりだろうと思ったところで、竿を立てると、一気にラインが引き出され、竿がしなった。
日本からのお客も多いことからか、ガイドは、盛んに「巻いて、巻いて」と日本語で指示を出してくる。
ジョージやニコルのラインに絡まないように竿をコントロールしながらリールを撒き続けたが、日本で経験した渓流釣りの引きとは大違いの迫力だった。
数分後、水面近くまで上がってきた魚影は、松山が知っているニジマスとは比べ物にならないビッグサイズだった。体長70cm。
日本なら、尺物と言って30cm越えならば超大物だろう。その倍以上のサイズの魚体を手にして、頭の中ではドーパミンが大量に分泌されている。
結局、夕方までに松山が3匹、ニコルとジョージが2匹ずつ釣り上げて終了となった。釣った魚は、ガイドのところで燻製にしてくれて、後日送ってくれるとのことだった。
また、剥製にすることもできるとのことだったが、さすがにお金もかかることから、燻製だけをお願いして帰宅した。
わずか二日間の中で、人生初めての経験が盛りだくさんに仕組まれており、ニコルの気持ちや行動には、感謝しかなかった。後日、届いた燻製は、松山の食卓をしばらくの間、占有していた。
日本とニュージーランドは、北半球と南半球の違いあれども、緯度も似通っており、四季もあることから日本人の松山にとっても、暮らしやすい国である。
道路も日本と同じ左側通行で、右ハンドル車が多い。交通事情で異なるとすれば、まずディーゼル車が多いことがあげられる。次いで、都市と都市の間の道路は、日本の一般道と変わらないが制限時速が100km/hであること。
市街地に入る手前で、道路には凹凸があり、そこからの制限速度が40km/hとなる。交差点は信号による直交式ではなく、ターンアラウンド方式が多いことなどだろう。
松山は、車を買わなかったが、ジムの会社の車を必要に応じて借りることで対応していた。まぁ、日本以上の車社会である印象があったが、山中での作業が多いことから、市街地で運転する機会はそれほど多くなかった。
松山がニュージーランドでジムの会社で働くようになって、一番驚いたのは、スタッフの作業時の服装だった。彼らは、半ズボン、Tシャツで作業をするのだ。
日本では、長袖、長ズボンというのが常識だったが、彼らはいつも半ズボンで歩き回っている。
虫刺されや刺のある植物などを考えれば長袖、長ズボンが当然と思うのだが、ここには大きな文化の違いが感じられた。さすがに、秋冬は長袖、長ズボンとなるが、春から夏にかけては、日本の小学生のように半ズボンなのだ。
虫に刺される心配がない訳ではない。松山も、虫刺されで、だいぶ痒い思いをした。
英語では、痒いは、「itchy;イチ」というが、最初「イチ、イチ」とスタッフの言葉を聞いた時には、数を数えているのかと思ったものだった。
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