第4章 犬 第3話
ニュージーランドの犬の名前なんて皆目見当がつかず、いろいろと聞こうとしたが、ニコルからは、
「日本の呼び名を付けろ」
と指示された。
そのため、後日松山が日本犬に多い名前を参考にリストを作成して、ニコルとオリバーに見せて説明をすることとなった。
日本犬に多い呼び名を調べてみると、メス犬だと、1位がココ、2位がモモ、3位がハナ、4位がムギ、5位がモカであった。オス犬だと1位がソラ、2位がレオ、3位がコタロウ、4位がマル、5位がマロンだった。
モモは、すでにオリバーが飼育している犬の名前であり、メスの名前は、ココ、ハナ、ムギ、モカが候補となった。
ココは、ココナッツの意。ハナは、フラワー。ムギは、wheatのこと。
モカは、チョコレートの入ったドリンクであることを付け加えて説明したところ、ニコルもオリバーも、ムギ(wheat)が面白いということで、会社に残すメス犬は「mugi」と呼ばれることになった。
一方、松山が担当するオス犬については、ニコルもオリバーも「マツが飼うのだから、マツが決めろ」ということで、ここでも意見は一致していた。
ソラは、skyの意。レオは、lion。コタロウは、小さい長男。マルは、円。マロンは、栗だ。ニコルとオリバーは、「レオはない」ということでも意見が一致していた。
まぁ、小さいオスであったことから、「コタロウ」が一番無難なところだが、少々呼びにくさを松山は感じており、山中でも名前をしっかり呼べることを意識して、「マル」とすることに決めた。
日本語だと、二音の名前は呼びやすい。
その点を説明すると、ニコルもオリバーも納得してくれて、その日から子犬たちは、名前で呼ばれるようになった。
訓練方法は、ニコルが指導してくれた。ニコルが、ムギを躾ていくのを、松山が真似てマルを躾ていく方法で行われたが、トレーニングは、日に数分の日もあり、あとは繰り返せとだけ指示されるという具合であった。
最初のトレーニングは、餌の食べ方だった。地面に落ちているものは、食べてはいけないということを徹底させた。
同じジャーキーでも、手渡しやエサ入れの中にある場合は食べて良いが、地面にある状態では食べてはいけないということだ。安全な食べ物であることを判断させるということで、悪意のある第三者が毒餌を与えようとした際を想定しているとのことだった。
知っている人以外から与えられた餌は食べないというルールを教えることは、思いのほか根気のいる訓練であった。
何がいけないのかを理解させるには、鋭い威嚇とたっぷりのご褒美という飴と鞭作戦が有効だ。
これが一度で仕上がるようなら苦労はしない。何度も何度も繰り返すのだが、ダラダラと長時間やっても効果がないのは明らかであり、給餌のタイミング時のみで成立する訓練であった。
そのため、説明されたのは、最初の給餌の時のみ。あとは、できるようになるまで続けろということで、それ以上のニコルからの指導はない。
朝晩の給餌の際に、松山はニコルに教えられたように、まずは手で餌を与えることから始め、次いでエサ入れまでは円滑にいった。
これは餌が食べたいという欲求があるのだから、簡単といえば簡単だが、地面にある状態の餌を食べようとした際には、鋭く叱るという訓練では、ムギもマルも大いに戸惑った様子を示した。
先に、その意味に気づいたのはマルの方だった。なんとマルは、二度目から地面に置いた餌には、手を出さなかったのだ。
これには、ニコルも驚いていた。ムギは、その後数日を要したが、地面に置いた餌には、執着心はあるものの我慢するということができるようになっていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます