第3章 ライフル 第1話
キャンプから戻ると、松山のライフル銃の許可が出ており、早速ジムと銃を引き取りに行くことになった。簡単な手続きを銃砲店で済ませると、必要な装弾を一緒に購入して、銃砲店が所有する射撃場へと移動し、ゼロイン を行うことになった。
日本であれば、所持許可を得るまでに数か月、許可を受けたら終わりではなく、許可証と銃が合致しているかの確認を受け、さらに火薬類の譲受証を得るために申請手続きをしなければならないなど、手間のかかる作業が、ニュージーランドでは約3週間で終了し、ライセンス証を提示すれば装弾の購入は自由にできた。
というより、銃砲店でなくても、町のスポーツ用品店やスーパーマーケットでも銃や装弾を販売しているところがあり、日本とは大きく異なり、社会が銃を受け入れている感じがした。
射撃場は、クレー射撃場とライフル射撃場を併設した総合射撃場であり、クレー射撃場は、スキート射面とトラップ射面が併用される設計で、5射面あった。
ライフル射撃場は、射座数が50射座もあり、射距離も最長が500m、日本の射撃場のスケールとは大違いであった。毎週末には、大会も催されており、一般の狩猟者や射撃愛好家らが集うことで、どの射面も定員になるとのことだった。
射撃場に到着したジムと松山は、クラブハウスで簡単な手続きをすると、射程100mのライフル射場へと移動した。
そこには、ジムの会社のスタッフであるオリバーが先着しており、椅子付きのライフルレストに腰かけて、自身の銃のゼロインをしているところであった。
「お待たせ、オリバー、松山だ」
「こんにちは。マツ。オリバーよ」
「はじめまして。松山です」
簡単なあいさつを済ませると、ジムは松山をオリバーに任せて別の仕事があるため、射撃場を後にした。
オリバーがライフル射撃の名手であることは、トムたちから聞かされており、実際の現場で見たトムたちの射撃スキルから想像してもかなりの腕前であることは感じていた。
そのため、マッチョな女性スタッフを思い描いていたが、はじめてあったオリバーの印象は、Risaよりも小柄であり、身長は165cmくらい。日本人女性と比較しても大差はない感じであった。
「マツ、日本ではどんなライフル使っていたの」
「日本では、ライフルを所持するには、散弾銃のライセンスを取得してから、10年経たないとライフル銃は許可されないので、ライフル銃は持っていませんでした」
そう説明すると、オリバーは、びっくりして、
「何それ!日本人てバカなんじゃない」
と言葉にしてから
「いや、マツ以外ということよ」
とフォローにならない言葉を発してから、
「いや、マツの家族以外ね」
と言い直した。
そんなやり取りから、オリバーの性格を把握しつつ、どのような関係を構築すれば良いのかを松山は考えていた。
オリバーは、35歳であり、日本でいうところのバツイチのシングルマザーだった。
6歳になる娘がいて、ジムのところへは事務員として採用されたとのことだったが、スタッフの射撃練習に参加させたところ、抜群のセンスでジムやトムたちよりも良い成績を残したことから、今ではスタッフの銃器のメンテナンスの他、娘を母親に預けられるときには、彼らと一緒に現場でシカをバシバシ倒しているとのことだった。
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