第2章 ニュージーランドハンティング 第3話

 キャンプ地近くまでは、RV車で行くことが可能であったが、途中からはATV( All Terrain Vehicle、全地形対応車)、いわゆる四輪バギーでの移動となった。ここで使われていたのは、KAWASAKIのATVで、排気量250ccのものであった。


 日本で開発されたものが、南半球で活躍していることに驚いたが、日本ではあまり目にすることもなく、実際に使ってみた感想としては、


「ぜひ、日本でも使うべきだ」

というものだった。


 日本では、50ccタイプのものが、公道を走ることが可能となっているが、それ以上の排気量のものは公道上では使用できない。


 ニュージーランドの田舎では、作業車両として農家の人が公道上で使用している姿をみたが、市内で走っている姿を見たことがなかったことと、現地までRV車で牽引して運んでいたことやナンバープレートも付いていなかったことを考えると、日本と同様に公道では走らせることができないのかも知れなかったが、そこまで聞く機会が松山にはなかった。

 

 確かに、キャンプ地をみれば、ATVの機動力がなければ、これだけの資材を現場まで運び込むことは困難だろうと思えた。

 

 キャンプでは、犬の世話と水汲みと薪集めが松山の主な仕事となったが、ATVを使うことができたおかげで、思ったほどの重労働ではなかった。


 水汲みは、ドラム缶を横置きにして、車輪を付けた小型の給水車のような貯水タンクを、ATVでけん引して近くの川まで行く。


 水中ポンプの給水口を川に沈め、ポンプの電源をATVのバッテリーに接続すれば、約200リットルの水を数分でくみ上げることができる。


 帰りは、重くなった給水タンクをATVのエンジンを吹かしながらキャンプまで持ち帰ることになる。

 

 さらに、給水車から、飲料用とシャワー用に設置されたタンクに水を移し替えることになるが、ここでもATVのバッテリーとポンプが活躍してくれる。


 飲料用には、ボール状に加工された消毒用の塩素剤の薬品を1個投げ入れる。シャワー用には、消毒剤は入れないが、そのままだと冷水のシャワーとなってしまうので、適度の温水にするような装置が付いている。


 この装置は、ウィリアムが作ったとのことだったが、タンク内に水が入るとタンクの下のホースから水が装置に流れ込むようになっており、ホースは黒く塗られたいくつかのペットボトル内を通過して保温性のある別タンクへと流れるように作られている。


 2リットルのペットボトル8本を通り抜けるまでに、晴天時だと約70℃にまで水温が上昇する。


 曇天時でもシャワーには十分な水温となる太陽熱温水器であった。問題は、使用できる水の量に限りがあるため、5名のスタッフ全員がゆっくりシャワーを浴びるということができないというところだろう。


 そのため、2日に1回のローテーションが決められており、無駄な水を使わないようにしていた。


 シャワーが使えない日には、川の水で汗を流すこともあったが、別のキャンプ地では、サウナを設置しているところもあるとのことで、日本での作業とのスケール感の違いに戸惑った。


 ATVの他、このような環境整備と様々な省力化が図られていた。


 この点は、ワイルドライフマネージメント社で経験した自動通報システムによる省力化と共通する考え方であり、合理的な捕獲が実践されていることが伺えた。

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