第2章 ニュージーランドハンティング 第1話

 元々、ニュージーランドには、コウモリとネズミ、先住民のマオリが飼育していた犬しか動物はいなかった。


 現在、ニュージーランドに生息する動物たちは、1969年イギリスの海洋探検家キャプテン・クックがニュージーランドを発見してから以降、持ち込まれたものばかりである。開拓時代のイギリス人たちは、様々な動物を野山に放し、狩猟を楽しむようになった。


 必ずしも計画的に導入された訳ではなかったが、人間に危害を加えるような動物が導入されることがなかったことも影響して、ニュージーランドの自然にうまく適応した種は、天敵もおらず、人口も少ないために、アカシカのように爆発的に増えた種もいた。


 このような増えすぎた個体数を調整するために、政府がハンターを雇い、個体調整を専門にするハンターが誕生したという経緯は、現在の日本のシカ問題にも通ずるものであり、その対策は日本よりも先行していることから、今後の日本における対策で参考となることも多い。

 

 ニュージーランドのハンティングは、一般的なスポーツとして親しまれている。10歳頃から銃器の取り扱いを教えられ、親のハンティングに同行し、ハンティングの方法から獲物の捕り方、そしてハンティングのマナーなどを学んでいる。


 16歳でエアーガンのライセンスが取得でき、18歳以上であればライセンスなしでもエアーガンを持つことができる。装薬銃のライセンスは18歳から取得することができる。


 獲物は、ウサギやオポッサムなどの小型哺乳類から、レッド・スタッグ、フェロー・ディアー、ワピティなどの大型哺乳類まで多様である。


 狩猟鳥もカモ、カナダグース、キジ、ウズラ、七面鳥、鳩、黒鳥や孔雀など盛んに行われている。


 ハンターは、日本の一般狩猟者に該当するレクレーショナルハンターの他、ワイルドライフマネージメント社の山里らのようなプロハンターと日本では珍しいコマーシャルハンター(商業ハンター)の三種類が存在している。


 コマーシャルハンターは、野生のシカを生体捕獲して、シカ牧場内で養鹿して、漢方薬として袋角をアジアに輸出したり、シカ肉としてドイツを中心としたヨーロッパへ輸出したりしている。


 さらに、シカ牧場内に建てたコテージに、海外からの狩猟者を宿泊させて、シカ猟を楽しませることで収益を得ている。


 ハンティング先進国のニュージーランドならではの存在ともいえるだろう。ハンティングガイドが同行すれば誰でも銃を撃つことができ、獲物を捕獲する事も可能なのだ。


 ニュージーランドはその国土全てがハンティングエリアといっても過言でない。ニュージーランドの国土面積は、日本の約70%である。


 一方で、人口は約410万人であり、松山が暮らすことになったオークランドは、人口約115万人であり、首都のウエリントンでさえも、車で30分も走るとそこには田園地帯が広がり、1~2時間走らせれば、原生林の山が広がる。


 山に入れば、レッド・スタッグ、ター、フェロー、シャモア、ワピティ、大型のイノシシなどに出合うことができる。


 植林地帯や田園の木々には、オポッサムが生息しており、松山のニュージーランドでの最初の獲物はこのオポッサム であった。


 オポッサムは、カンガルーやコアラなどと同様じ有袋類であり、ネズミに似た外見をしていることから、フクロネズミとも呼ばれる。

 

 ジムの会社のスタッフであるトムが、松山の指導役となってくれていたが、語学研修も一区切りしたある日の夕方、


「マツ、今晩オポッサム撃ちに行くぞ」

と声を掛けた。


 まだ、松山の手元には銃はなかったが、ジムのところにある.22口径のライフルを使え とのことだった。

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