第15話 コンテスト
「それでは審査に入ります。一次審査で選出するのは10点。応募者の名前、会社名は伏せてあります。」
真剣に選ぶ数人の審査員。ルビのデザインに目が留まる。
「え~、ダンボールちゃんが!!?」
デザイン室では大騒ぎしている。
「だって下条チーフのも落ちたのに?」
とみほ。
「あんただって落ちたじゃない!」
とテツ。
「私は、デートで忙しかったから、手を抜いただけよ」
なんとルビが翠ととも一次を通過。ありもひろやも入選している。
「ビギナーズラックね。」
少し皮肉っぽい様子で翠が言った。
「先生、私はイタリアのセルジョさんに制作を依頼したいんですが」
「そうね、うちが正式に応募のスポンサーになっているし、カラーストーンの使い方から言ってセルジョさんが最適ね」
「杉本さん、あなたは・・・困ったわね、うちの社判が押して無くて、個人応募になってるから。どうして先に見せなかったの・・」
正式にチリエージャがスポンサーについている翠はイタリアの職人に制作を依頼することになった。しかしルビはデザイン画が捨てられてしまったので、あらかじめ櫻子にスポンサーとしてサインをもらえなかったのだ。個人で応募する場合には材料費を自分で持たなければならない。制作できない場合は棄権することになる。
「先生、自分でワックスの型は作れます。でも材料費は・・・」
「先生、うちでスポンサーについてあげてください。うちから二人も最終審査に残ったとなったら、営業するのに凄い宣伝になります!。」
営業の山本さゆりが強い調子で言った。
「さゆり先輩・・」
「そうね、ワックスの型まで自分で作れるんだったら、あとは佐々木さんにお願いして、材料費だけはうちでスポンサーになってあげるわ。そうと決まったら良いもの作ってグランプリを目指すのよ!」
夜を徹して制作に打ち込む姿が森キャストにあった。疲れて寝てしまったルビにに優しく毛布をかけるエイタ。苦笑しながら眠っているルビに話しかける。
「ルビ。。。。夢、叶えろよ」
しかしルビはすでにぐっすり眠っていて聞こえない。
最終審査の当日。入選した10点を審査委員が検討している。ブラックダイヤとホワイトダイヤで構成した都会的なひろやのネックレス。正反対に、叙情的で心に響くルビのチョーカー。
「これは凄い完成度ですね。品質、デザインの洗練度、加工技術ともに申し分ない。」
「しかし、こちらのネックレスのオリジナリテイは凄い。手の加工部分には少し素人っぽいところもあるが、これは視覚ではなく心に訴えるものがある。新人を発掘する趣旨のコンテストですから、少々荒っぽいが、独創性を重視したほうが良いのでは?」
まったく異なった個性のふたつがグランプリ候補になっている。審査委員の意見は真ッ二つだ。
「少し、休憩をして頭を冷やしましょう」
司会の言葉に暫しのコーヒータイムがとられた。審査会場にあるトイレの前で、すれ違ったアリモトの社長を呼び止める女性がひとり。
「あの、ちょっと、お話したいことが」
「どなたですか、君は」
「アルテジョイエリにいたころに一度お目にかかった相馬翠といいます」
「ああ、相馬美術館のお嬢さんでしたね。」
「今、審査に残っている杉本さんなんですが、チリエージャの社員ではないことはご存知でしょうか。」
「え?」
「彼女は発送のアルバイトです。一次審査の時も個人応募です」
「ほお、そうですか」
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