第7話 サクラチル

 

(やっぱ、散ってきちゃったなあ)

とぼとぼと肩を落としながら歩く桜並木のなか、地面に落ちた花びらを拾いながらルビはぼんやりしながら歩いていた。しかし森キャストまで戻るとまた元気な様子に戻って言った。


「ただいま!」

「どうだった?」

「へへ!また、これからもよろしくお願いします!さあ、今日も張り切って仕事、仕事!」

 顔を見合わせる社長とオバちゃん。

「そうだ、仕事、仕事!」

しかし、なんだか二人は嬉しそうだ。

(これでまた、一緒に仕事できるもんね!)


一方、ルビが帰った後のチリエージャでは、意外な事件が起こっていた。

「櫻子先生、困ったことが」

「え?」

デスクでひそひそと話す櫻子とさゆり。

「そう、それは困ったわね・・」


エイタの働くバイク屋は東麻布にあった。永坂のそばやの近くで近くに美味しいパン屋があり、そこでいつもメロンパンを買って自宅に帰る途中、上野の森キャストに寄り、ルビやみんなとおやつや食事をするのが日課になっていいた。エイタは母を早くになくし兄弟もいなかったからパートのおばちゃんは家族のような存在だった。とくに3年前から働いているルビは妹のようで、可愛くてしょうがない。東麻布で今日も早く修理を終えて帰ろうとしていたエイタのところに、女性の訪問者があった。


「エイちゃん」

パン屋のお姉さんだった。今日はやけにめかしこんでいる。

「ハイ、差し入れ!」

とさしだす袋を見るとメロンパンが入っている。

「わるいっすね。」

「好きなんでしょ、これ」

「ええ、っていうかこれ、ルビの好物・・」

「え?」

「いや、ありがとうっす」

「私、明日遅番だから、遅くまでいるわよ!」

「はあ?」

「いくら好きだからって、こんなに毎日、メロンパン買いに来る人ってないわよね。わかってるのよ、何で毎日来るか。」

ウインクして立ち去るオネエさん。怪訝な顔で見送るエイタ。

何か、勘違いしてるかも・・

だが、くれるものはありがたく頂くことにして急いで、森キャストに向かった。

 

 帰るとはルビが元気に仕事をしている。

「・・・駄目だったの?」

とこっそり聞くエイタ。

「だから、最初っから言ってるだろ。タガネの花だって。」

「落ち込んでるみたい?」

「ううん、全然。」

「そうか・・これでちょっと元気が出るかもな・・ルビ、差し入れ。今日のは特大メロンパンスーパー」

「すっごーい。有難う」


みんなのおやつタイムが盛り上がったころ、電話の音が鳴り、おばちゃんが出た。

「はい、森キャストです」

 ・・え?チリ?チリ?はあ、はい、ちょっと待って下さい。・・・・・・ルビちゃん、チリチリから電話なんだけど・・」

「え?」

慌てて電話に出るルビ。

「はい、本日はどうも有難うございました。・・・・・え?本当ですか?本当に?はい、明日からでもすぐいけます」

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