第6話 面接
面接会場の部屋の中では、水島櫻子と営業の大和さゆりが次々と志望者との質疑応答が繰り返されていた。
「資格と特技は?」
「はい、コンピューターを使った3Dキャドデザインとジュエリーコーデイネイター資格試験の2級を持っています。それとサンタモニカのGIAでデザインコースを卒業しています。」
「じゃあ、英語は得意ね』
「はい英語は話せます。フランス語は少しですけど」
いよいよルビの番が回ってきた。エイタの顔を思い出しあたって砕けろと深呼吸を大きくしてからルビは中に入った。おばちゃんが持たせてくれた、湯島天神のお守りを握り締めて。
入室すると、エンリコベーリのブルーグレイのスーツに、アールデコのモチーフのエメラルドのネックレスをつけた、まさに「ゴージャス」な櫻子先生が、まわりにオーラを放ちまくって座っている。緊張で体全身がこわばった。
「特技は」
「足が速いことと力があることです。背筋力100以上あります」
履歴書に目をやっていた櫻子と営業のさゆりが同時に目を丸くして、ルビの顔を見た。
「それは、確かにとても大事なことね(笑)」
と櫻子先生。
「ほかには?」
と山本さゆり
「ほかに、ですか・・あ、あります」
「なに?」
「視力2.2です」
「・・・・」
山本はペンを置いた。
「それでは、3面図を見せていただけますか?」
再び目を履歴書に落とすと大和さゆりが言った。
「あのう、私はデザイン学校に行っていないので、3面図は描けません。」
「は?」
目を吊り上げ急に怖い顔になったさゆりが強い口調で言った。
「応募の条件に3面図か業界経験が必須になってたはずだけど!」
「キャスト屋に勤めています」
「キャスト屋?加工屋さんだったらともかく、キャスト屋さんだったら鋳造だけでしょう。話にならないわね」
「あの、代わりに自分で作ったワックス原型を持ってきました。見てください」
ルビは急いで、バッグの中から出そうとするがさゆりの言葉にさえぎられる。
「悪いけど忙しいので。・・次の方」
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