ディオスの屈辱!
俺とアーニャはダンジョン攻略の一件もあってかギルド側から、ここアイギスから東にある森に凶悪なモンスターが出現したので一応駆けつけて欲しいと依頼された。
報酬は300万ゴールドに鋼の剣+と鋼の鎧+が提示された。
鋼の剣+と鋼の鎧+に関しては前払いである。
「誰も駆けつけてないのか?」
「いえ、それがホーリーナイトが駆けつけているんですが」
「ホーリーナイトが!? じゃあ何でEランクの俺達に?」
「国王は完全にホーリーナイトを信頼しているのですが、ホーリーナイトに新加入したリーファ様が一応増援をと」
リーファって誰だ?
どこかで聞いたことがあるような、あ、あの最年少最高成績で魔聖女になった人物か。
俺の代わりとは彼女だったのか。
「ライル行きましょう。愚かなホーリーナイトの連中にアクアラプラスの実力を見せつけてやりましょう」
「理由は兎も角、凶悪なモンスターは放っておけないしな。行くか」
「そうこなくっちゃ。装備も体調も万全よ。魔力も劇的に上昇したしね」
受付嬢は頭を下げてお願いする。
前払いで装備も貰ったし、何より報酬300万ゴールドは見過ごせない。
普通の冒険者じゃ一年掛かっても稼ぐことは到底かなわないだろうからな。
「任せておけ。全力で対処する」
「お願いします。お二人なら出来ると信じています」
受付嬢は元気な声で俺達を見送った。
◇
「はあ、はあ……少し休もうか」
「え!? もうですか!?」
リーファはディオスの思わぬ言葉に驚愕して開いた口が塞がらない。
他の【ホーリーナイト】のメンバーも全員ディオス同様息切れしていてへばっている。
ライルの《ラプラスの悪魔》の能力が無く、無駄な動きをしすぎたせいである。
「万全な体調で臨みたいからな。まあ俺達ホーリーナイトならどんなモンスターも余裕だがな」
ディオスは大きく高笑いして宣言する。
他のメンバーも調子に乗っており最早天狗になっている。
リーファは完全に失望して呆れていた。
「無駄な動きが多すぎる。所詮ラプラスの悪魔あってのホーリーナイト。いわばライルさんと有象無象」
リーファは厳しい言葉を誰にも聞かれない程度の声量で口に出した。
リーファは早くライルに会いたかった。
自分を高みへと導いてくれるのはライルだと確信していた。
「じゃあそろそろ行くか。リーファ俺達の実力証明してやるよ」
「魔聖女すら腰を抜かすわよ。ふふっ」
「俺の力を見せてやる」
「僕達は常に高貴で勝者でなければならない」
【ホーリーナイト】のメンバーが休憩を終えて余裕そうに立ち上がり歩き出す。
リーファは嫌々後方から付いていく。
アイギスの東にある森の名称は闇の森。
数多くの危険なモンスターが彷徨っている。
中にはSランクモンスターも存在するとか。
グルルルルルルルルルルルルル。
大きな叫び声がディオス達がいる森の中に木霊した。
思わず腰が抜けたのか、エルシーが床に座り込んだ。
「この鳴き声、魔獣ですね。Aランクモンスターのブラックウルフかと」
「そうか。余裕だな。エルシー何を座っている。俺達にとっては雑魚同然だ、行くぞ」
「え、ええ」
ディオス達は魔獣ブラックウルフと対峙する。
◇
俺達は一切の休憩なしに簡単に闇の森へと入っていく。
ディオス達と時同じくして魔獣ブラックウルフの鳴き声を聞いた。
「ラプラスの悪魔」
ここで右に進めば――
ここで左に進めば――
ここで正面に進めば――
「で、ディオス!?」
「どうしたの!? 突然」
「俺が元所属していたホーリーナイトのメンバーがいる」
「それで見えた未来はどう?」
アーニャは嬉々として聞いてくる。
結果を知っているかのような表情だ。
「苦戦している。腕を噛まれた未来が見えた」
「腕を……しかも相手はブラックウルフ……腕、使えなくなるんじゃないの?」
「そこまでの未来は見えなかったけど、まぁ放っておいたら死ぬかもな」
「ねえ」
「ん?」
「元パーティーってことは、別に見殺しにしても、むしろそうしたほうが、ライルにとって良かったりしないの?」
アーニャに言われてはっとする。
「その顔、そんなこと微塵も考えてなかったようね」
「そう、みたいだな」
俺を罵倒して追い出したパーティーだが、不思議と怒りや復讐したいという思いは沸き起こらないのだ。
「ふふ。いいじゃない。そのほうがライルらしくて、私は好きよ」
「……ありがと」
さらっと言い放つアーニャの言葉に少し動揺させられたが、もうここは戦場だ。頭を切り替えよう。
「眼の前で知り合いに死なれちゃ寝覚めが悪いからな」
「そうね。行きましょ」
アーニャとともに森を駆け抜ける。
「ああ、そうか」
「ん?」
「いや、アーニャと一緒だから、アイツラになんとも思わなかったのかな、って」
「えっ……?」
パーティーの補助としてやってきたときとは比べ物にならないほど、アーニャとの冒険者生活は楽しい。
あのままパーティーにいたんじゃ、こんなワクワクした冒険者生活はできなかったはずだ。
ここからどれだけいろんな未来を見られるのか、今から楽しみだ。
「それは嬉しい言葉。じゃあ行きましょうか」
「そうだな行くか」
俺達は苦戦しているディオス達の前に飛び出した。
「ら、ライル!? ど、どうしてここに!?」
「増援を頼まれてな」
「ふざけるな。いらん、帰れ大嘘つき野郎が!」
「お前これから数秒後に右腕噛まれるぞ」
俺の言葉にディオスは、「はっ、何を」と馬鹿にした口調で言う。
しかし数秒後魔獣ブラックウルフに腕を噛まれた。
「いってええええええええええええええ!!」
「ほら言っただろ」
ディオスは右腕を噛まれて悶え苦しんでいる。
俺はそれを他所に《ラプラスの悪魔》を使う。
「ラプラスの悪魔」
ここで剣を振り翳せば――
ここで魔法を使用すれば――
「アーニャ魔法だ。ライトニングウィクトリアを使用しろ」
「オッケー。ちゃっちゃと終わらせましょう」
アーニャが襲い掛かって来るAランクモンスター相手に魔法を使用する。
「ライトニングウィクトリア」
雷のような速さで剣が宙を舞う。
バチバチと光り輝いている。
相変わらず美しい。
「終わったわよ。弱すぎ」
「簡単だったな」
「ライルの言う通りにすれば最善なんだから楽できていいわ」
Aランクモンスターを討伐する冒険者のランクは基本Bランク以上。
それをEランクの俺達は一瞬で余裕で討伐して見せた。
「じゃあ帰るか」
「ま、待ちやがれライル!」
「右腕止血しろよ。ほら傷薬」
俺達は屈辱的行為を味わったディオス達を無視してその場を去る。
リーファが両目を見開いて俺達を見ていた。
◇
「見つけました。私の救世主」
リーファはその場を駆けてライルたちの下へと向かう。
「お、おい待ちやがれリーファ!」
動けないディオスはただ大きな声で名前を呼ぶことしか出来なかった。
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