第一話 ~不確かな行方~ (前編)
男が私の
広い通りに出て、そこから少し細い
「なんか思ってたよりすごいところにあるのね。」
「…………」
必死に
さらに気まずい。
「ここです。」
ようやく男が口をひらいた。
どうやら着いたらしい。
男の案内でついたのは、お
英語をそのまま読むと’’あなたと
違和感はあったが特に気にはしなかった。
「ただいま戻りました。」
男はドアを開けてそう言いながら中に入っていく。私も男に続けて中に入る。外からではわからなかったが、中はすごくきれいに
すこし奥のほうで、
男が帰ってきたのに気づくと、灰色髪の
「おかえり、思ったより
「ええ。
「そう。」
それについては悪かったわね。私はまた心の中で申し訳なく思った。でも、もうそんなことはどうでもよかった。だって……
そして男の少し後ろにいる私に気が付くと
「あなたが高見雪さんね。今日はご依頼があってここに来てくれたのでしょう。
私は今日ここに ’’依頼者’’ としてきたのだから。
私と灰色髪の女性は
「どうぞ。」
「ありがとう。」
「ありがとうございます。」
男はお茶を二人に差し出すと、
灰色髪の女性は、お茶一口飲んで
「名前を言うのが遅くなって申し訳ありません。私はここで所長をしている
「わ、私は高見雪って言います。よろしくお願いします。」
楓さんは、身長があまり高くなく、そのせいで多少子供っぽい
そして何より澄んだ
「それでご依頼の
「これなんだけど……。」
私は首にかけているペンダントを外し、中の写真を見せた。
「これはあなたのお父さんですか?」
その写真は、私が父と数年前に最後に撮った写真。写真の中に母は写ってない。体があまり
それからは、
「はい。それでここに写っている父を
「名前を伺ってもよろしいかしら。」
「父は……
「高見……湊……」
少し
「……楓さんどうかしたの?」
「ああぁ……いえ、すいません。少し考えこんでしまって。……ごめんなさい。」
楓さんは申し訳なさそうにそう言った。そして。
「いいわ。その依頼お引き受けいたしましょう。次、いつならこれる?」
「
「なら明日の朝十時もう一度ここにきて、そこから行動を始めましょう。だから今日のところは帰っていいわ。」
「わかりました。明日もう一度ここに来るわ。」
そして私は、ペンダントを首にかけ直しソファーから立ち上がってドアに向かう。
ガチャ……ギィィ…………バタン。
そして私が出て行った後、楓さんは体をソファーに預け、
「湊さん…………あなたは生きてるの?……。」
朝は少し冷え込んでいた。まだ白い息が出るくらい。カレンダーでは、そろそろ春だというのに。そういえば白い息ってどれくらいの気温ででるのかな?なんてどうでもいいことを思いながら、昨日のビルへ向かった。広い通りにでて、細い道路地裏に入り、いりくんだ道の先にあるあの場所に。
ガチャ……。
わたしはドアを開けて、少し身をのりだし
「失礼します。楓さんはいますか。」
「お待ちしておりました。」
楓さんは、黒いパーカーを着て下にはスカートを
「では、行きましょうか。」
そう言われて楓さんと最初に来た場所は、ビルの場所から4㎞ほど離れたところにある、周りをフェンスに囲まれた
「雪さん、ここに来たことは?」
「子供のときに父に連れられて何度か……。」
「そう。」
そう言って楓さんは何かを確認しながら公園の中を歩き始めた。そして中を一周して……。
「次に行きましょう。」
私たちは公園から少し歩き、そして次に来た場所は。
「
「雪さん、ここに来たことは?」
「父がよく来ていた喫茶店だわ。私自身あまり来たことはないわね。」
「そう。」
そう言って楓さんは喫茶店の中に入っていく。
「何してるの?早く入ってきて?」
楓さんは私を喫茶店の中に
「いらしゃいませ。」
私と楓さんはテーブルに座る。中はカウンターとテーブル席が2つある
「マスター。コーヒー二つとチーズケーキ二つお願い。」
「かしこまりました。」
楓さんがコーヒーとチーズケーキを注文する。
「なんで喫茶店なの?」
「私が少し
そしてコーヒーとチーズケーキがテーブルに運ばれてきた。チーズケーキは下がタルト
「なにこれ!?すごくおいしい!!!」
「そうでしょ!私、ここのチーズケーキ大好きなの!」
楓さんもおいしそうにチーズケーキを食べていた。そして私と楓さんがチーズケーキを食べ終え、コーヒーを飲み終えると……。
「じゃあ私、お会計してくるからすこし待ってて。」
楓さんは席を立ちレジの方へ歩いていく。私は先に外に出て待っている。楓さんは会計をしながらマスターと何か話していた。だけど外からは何も聞こえない。まぁ、顔なじみみたいな感じだったし
「あれ?そういえばなんで楓さんは……。」
ちょっとした
「待たせてしまって申し訳ありません。……雪さん、何かありましたか?」
気にしすぎかな……。
「いや、なんでもないわ」
「そうですか。でしたら次が最後なので行きましょう。」
「次が最後なの?」
「ええ。あなたもよく知るあの場所です。」
ここって…………。
「ここが最後の場所ですよ。雪さんここに来たことは?」
その場所にきて私は驚いた。そして少し震えるような口調で答えた。
「……
―――― ’’家’’ なのだから。
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