その依頼お引き受けいたします

猫NEKO

プロローグ~出会い~

 「雪、お父さん少し出かけてくる。」

 そういって父は家を出て行った。

 「お父さんどこ行ったの?どうして帰ってこないの?」

 返事はない。家で待っていたが父は帰ってこなかった。

 「ねぇ、どこ行っちゃたの?お父さん…………お父さん!」

 


――父が突如とつじょいなくなってから数年――

 私はとある場所に向かっていた。いたはずなのに……。



 ―――ダッ・・・ダッ・・・ダッ・・・ダッ・・・。

 「ハァ・・・・ハァ・・・・ハァ・・・・」


 何で息切らしてるのかって?追われてるからよ。 誰に?かみの長い貞〇みたいな女に。 何で?私が聞きたいわよ。だってさっき道ですれ違って―――


 「ねぇそれ……私の……探してたもの……。」

 「え?」


 なにかを言われた様な気がして、後ろを振り返って声をかけた女性を確認すると


 「それ私の……ヵェㇱ……ゕぇして……」


 独り言?何か言ってる気がするけど全然聞こえない。


 「ゕえして……かえして……返して……返して!」


 そう言いながら女性が追いかけてきた。私は、あわてて


 「なになになに!?なんでいきなり追いかけてくるの!?」


 おどろいてその場から逃げ出しちゃったけど、誰だって逃げ出すでしょ。何なの?情緒不安定じょうちょふあんていなの?返すってなにを?



 そんなことを思いながらかれこれ10分ぐらい走ってる。 

                           

 「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」


 やばい走ったの久しぶりだからそろそろ限界かも……。

 すると近くの森から音が聞こえた。

 ’’ガサガサガサササ’’

 また何か来る。さすがにこれ以上は無理。そう思ったとき森の中から声が聞こえた。


 「あなたの探し物はこれですか」


 そう言って森の中から出てきたのは黒いスーツを着た男だった。

 え?誰?探し物?探してたものって何?そんな疑問に頭を悩ましていると、男が女性に近づいていった。そして女性が、男のすぐそばまで近づくと男がスーツの中からペンダントを取り出した。すると女性は……。


 「……あぁこれ……私の……ペンダント……見つけてくれた……彼から貰った大切な……ありがとう……。」


 そう言って貞〇みたいな女性は、来た道を戻るように去って行った。


 「あの……」


 私がそう言うと男は振り返って。


 「……大丈夫ですか?もし怪我けがをしているようなら近くの病院に連れていきますが。」

 「いえ、怪我は特にしていないんですけどさっきの女性は一体何なんですか。」


 すると男はこう言った。


 「彼女は依頼人いらいにんです。」

 「依頼人?」

 「ええ。失くしたペンダントを探してほしいと依頼を頼まれたんですよ。時間になっても依頼人が待ち合わせ場所にいなかったので少し焦りましたが。」

 「うぐっ……。」


 それについては特に悪いことをしたわけじゃないのに、なんか申し訳ない。


 「まぁなんにせよ無事ぶじ、依頼人に届けられたのでよかっです。あなたにも怪我が無いようですので私はこれで失礼します。」


 そう言って男は去って行こうとしたとき。


 「えぇぇぇ!ちょ、ちょっと待って!」

 「……まだ他になにか?」

 「私、実はここに行きたいんだけど……。」


 そう言うとスマートフォンでマップのアプリを開いて男に見せた。


 「さっきみたいにわけわかんないのに追いかけまわされたくないし。それにあなたは、ああいう事に慣れてそうだし。お願いします!」


 男はマップを見て、、スーツからスマートフォンを取り出し、誰かに電話をした。


 『もしもし私です。ええ。依頼は完了して……。それで……。』

 「あなた名前は?」

 「た、高見雪たかみゆきです。」

 『高見雪さんから……。はいそうです…………。わかりました。』


 ピッと男が電話を切った。


 「雪さん」

 「は、はい!」


 いきなり呼ばれて思わず声が上がった。さすがに図々しいかな。一人でもたどり着けないわけではないと思うが、あんなことがあった後だし一人であるくのはさすがに怖い。

 そして男はこう答えた。


 「 ’’その依頼お引き受けいたします’’。」


 こうして父を探しながら、人とあやかしの様々な依頼を解決していくドタバタな生活が始まる。

 

 




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